【 弁当 】 : 外出先で食事をするため、器物に入れて携える食品。また、その器物。
転じて外出先でとる軽食。 (広辞苑 第三版)
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「久し振りに『鶏そぼろ弁当』が喰いてー」
との息子のリクエストに週明けに応えたのだが、それが高校生活最後のお弁当となった。
その日の夜、そろそろ日付が変わろうとしていた頃。
ぼちぼち寝ようかと、読みかけの本を閉じようとした時、息子がダイニングに降りてきた。
「まだ寝ねーの?」
そう言いながら、食器洗いカゴから自分のマグカップを取り出し、ペットボトルの緑茶を注いだ。
「そろそろ寝ようと思っていたところ。」
そう答えると、つまらなそうな顔をして
「ふーん。」
と言いながら、シンクの縁に寄りかかり、マグカップのお茶を飲んだ。
「あー、mofuちゃん。」
息子が膝掛をたたんでいる私に呼びかけた。
「んー?」
たたんだ膝掛を定位置に置きながら、息子を見ると
「三年間、弁当作ってくれてありがとうございました。」
ペコリと軽く頭を下げ、面倒くさそうにぶっきら棒な口調でそう言ったあと、
クルリと背を向け、使ったマグカップをジャブジャブと洗い始めた。
食器洗いが終わった息子に
「どう致しまして。お粗末様でした。」
と、私がそう言うと、息子はチラリと私を見て
「おやすみなさい」
と、そそくさと自室に戻っていった。
息子が高校に入学してから、平日ほぼ毎日のお弁当作りが始まった。
朝、5時ちょっと過ぎに起床し、余程の都合の悪い日以外は作ったお弁当。
食物アレルギーで制限がある中、出来るだけ彩と栄養のバランスを考えて作ったお弁当。
一度も「美味しかった」とは言ってもらえなかったけれど、毎回残さずに完食してくれたお弁当。
「きれいに食べてくれて、ちゃんと育ってくれてありがとう。」
今はそんな気持ちでいっぱいだ。
~終~