弁当 | 徒然日和

徒然日和

日常の出来事など、ゆるーくまったりのんびり気の向くまま書いてます。

時々、真面目。

時々、心内。

そんな感じです。

 

 【 弁当 】 : 外出先で食事をするため、器物に入れて携える食品。また、その器物。

           転じて外出先でとる軽食。 (広辞苑 第三版)


━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━



「久し振りに『鶏そぼろ弁当』が喰いてー」


との息子のリクエストに週明けに応えたのだが、それが高校生活最後のお弁当となった。



その日の夜、そろそろ日付が変わろうとしていた頃。



ぼちぼち寝ようかと、読みかけの本を閉じようとした時、息子がダイニングに降りてきた。


「まだ寝ねーの?」


そう言いながら、食器洗いカゴから自分のマグカップを取り出し、ペットボトルの緑茶を注いだ。


「そろそろ寝ようと思っていたところ。」


そう答えると、つまらなそうな顔をして


「ふーん。」


と言いながら、シンクの縁に寄りかかり、マグカップのお茶を飲んだ。



「あー、mofuちゃん。」


息子が膝掛をたたんでいる私に呼びかけた。


「んー?」


たたんだ膝掛を定位置に置きながら、息子を見ると


「三年間、弁当作ってくれてありがとうございました。」


ペコリと軽く頭を下げ、面倒くさそうにぶっきら棒な口調でそう言ったあと、


クルリと背を向け、使ったマグカップをジャブジャブと洗い始めた。



食器洗いが終わった息子に


「どう致しまして。お粗末様でした。」


と、私がそう言うと、息子はチラリと私を見て


「おやすみなさい」


と、そそくさと自室に戻っていった。




息子が高校に入学してから、平日ほぼ毎日のお弁当作りが始まった。


朝、5時ちょっと過ぎに起床し、余程の都合の悪い日以外は作ったお弁当。


食物アレルギーで制限がある中、出来るだけ彩と栄養のバランスを考えて作ったお弁当。


一度も「美味しかった」とは言ってもらえなかったけれど、毎回残さずに完食してくれたお弁当。



「きれいに食べてくれて、ちゃんと育ってくれてありがとう。」


今はそんな気持ちでいっぱいだ。



                                                            ~終~