御歩射の八咫烏 | ◆笑門来福/夢の円座◆

御歩射の八咫烏

地元の民俗行事「おびしゃ」美崎大洋より


千葉県我孫子市には「おびしゃ」と呼ばれる正月の民俗行事がある。

市内に20ほどある町(部落)毎に1月の中旬頃まで行われる。
「おびしゃ」は、奉射、奉謝、奉社、備射、備社、鬼射などの
漢字が当てられているが、

もともとは、「御歩射(おぶしゃ)」が訛ったもの。
馬に乗って行われる「流鏑馬(やぶさめ)」に対し、
立って、あるいは座って弓を射て、的への命中度で吉凶や
豊作凶作などを占うとされている農村の神事とされていたそうだが ...

弓神事で使用する的は一対の的で、
片方に「カラス」
もう片方には「鬼」や「ウサギ」

射る者は当たるまで続ける。

「三本足の烏と太陽」
的に描かれている三本足の烏は実は太陽を表わす。

玉虫厨子・台座絵背後の須弥山図の
右上に月(中に兎と蛙)、
左上に真っ赤な太陽が描かれ、中に三本足の烏が羽を広げている。

8世紀の釣篝(つりかがり・・・篝火を盛って吊るす容器)にも
日月を表わす三本足の烏と兎が描かれている。

10世紀の『延喜式』巻21治部省に
「三足烏 日之精也 白兎 月之精也」とある。

熊野信仰では八咫烏が「おからすさま」と言って
今でも尊ばれているが、神武天皇が熊野で道に迷われた時に
天照大神が遣わした烏が八咫烏であると言われている。

「三本足の烏と兎」は天皇の即位の時の礼服にも使われ、
即位とか正月の儀式の際の幟にも縫いとられている。

今まで民俗学者柳田国男などが唱え、
約100年間に亘り定説とされていた「年占説」に替わって
最新の『日本民俗大辞典』にも載るようになったという。