センプレのインプレ 1


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走り出して見ると、センプレは期待通り高い剛性を持ったフレームである。硬いと言うよりは盤石と言う言葉が適当だろう。ペダルに力を込めてもフレームはビクともせずに軽く前へ進む。逆に強固なフレームに乗ることで今までのフレームがしなっていたことに気づかされる。

しかし、センプレはただ硬いだけでなくビアンキらしい当たりの柔らかさも持っている。当たりはしなやかだが固い“芯”があると言うのが第一印象である。

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発進、登り坂など、高トルクを掛ける場面で、明らかにペダルが軽い。車体が軽いとかホイールが軽いとか言う感覚と違い、駆動ロスが非常に少ない感じである。これがフレームの剛性のお陰かクランクのセラミックベアリングのお陰か分からないが、シフトダウンせずに足を着いてしまった時など重いギアでもスーッと発進出来てしまう所が今までのアルミフレームのクロスバイクの相違点であり、ヤワなフレームとの差異なのだろう。

たまに以前のクロスバイクに乗ると、同じギア比のMAXローなのにペダルが重くてうっかりシフトダウンの操作をしてしまう事があり、こんな時に改めてフレームの違いを実感する。



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しかし、センプレは反応のいいフレームかと聞かれたら、多分そうではない。当たりが和らかいと言うか、アルミフレームのような反応の良さは無い。

アルミフレームでは、いわゆる汚いペダリング、ガシガシ蹴り込む様なペダリングをしても、反応が良くダイレクト感があるので気持ちいい。反応がいいからついついオーバーペースになってしまったり、汚いペダリングに甘んじてしまうのだが、センプレは少し鈍感。

しっかり踏みこむとスーっと前に進むが、打撃の様な急激なトルク変動はフレームに吸収されてしまう。キレイなペダリングをしている方が楽なので、ペースを守ったり、心拍数を上げないように走るのが容易で疲れない。

結果的に長距離が楽で速い。足を使わず長い時間ハイペースが維持できるのでいつまででも乗っていたくなるような、ちょっとクールなフレームなのだ。

ただ、小生は反応のいいフレームをガシガシ踏んで足はパンパン、クタクタになるのも嫌いでは無い。次に買うとしたらそんなフレームかも知れない。


フルブレーキでフォークがしなるような感じも無いし、コーナーでも強固な印象は変わらない。ただ、前述の当たりの柔らかさが少々クセのあるクイックな挙動に繋がっているきらいはある。下りなどの安定性はオルトレに一歩譲ると言うインプレを読んだ事があるが、クセが強いフレームである事は確かである。数台を乗り分ける人にはいつまでも違和感が残るかも知れないが、このフレームといつも共に過ごしていれば全く気にならないレベルとも言える。こんな性格からも「センプレ」と言う名前には奥深いモノを感じる。

ちなみに、いままで軽量化に効果的なチタンとカーボンのクイックリリース43gを愛用していたが、ホイールに付属していたシマノのクイック124gに交換し、限界まで強く締め上げてみると、コーナリングが見違えるように安定した。フレームは当然クイックの締め込みまで含めてデザインされているだろうし、大手ホイールメーカーが高級ホイールにゴツいクイックを付属させるのにはちゃんと意味があるようだ。


乗り心地に感しては正直固い。微振動はカーボンらしく減衰してくれているように感じるが、突き上げなどは容赦ない。クリンチャーで乗るならインフィニートの方が遥かに疲労が少ないだろう。

ただ、しなやかなチューブラーと組み合わせると明らかにアルミフレームより乗り心地がいい。タイヤによって大きく印象が変わる不思議なフレームである。


結論から言うと小生はこのフレームを相当気に入っている。普段使いからレースまで文字通りいつでも使えるオールラウンダーだが、一癖あって乗り手を選ぶフレームでもある。


楽に、速く、遠くへ。レース志向の剛性を持ったフレームなのにその名の通りどこへ行くにも乗って行きたくなるいいフレームである。これが105モデルで20万程と言う価格は間違い無くお買い得である。11速にこだわらないならブラックが選べる電動アルテもいい。ただ、機械式アルテモデルを希望なら6800アルテが搭載される2014年モデルを待つことを勧める。




iPhoneからの投稿




センプレのインプレ 1