カズヒコ&翔ちゃん(磁石)の つづきです。
お引越しのみで ゴメンなさい…







翔ちゃんは オレの髪に顔を埋めて…
一頻り 抱きしめた後

そっと 身体を離した。


包まれていた熱が 不意に消え
急に…不安になる。


え?
どうして…


「…カズヒコ、ゴメン…。
抱きたくなっちゃうから、その…下から見上げないで貰える?///

ちゃんと…カズヒコの中で 結論が出るまで 待つから。
…だから、今日は 帰るよ」


優しく微笑む  翔ちゃんの 言葉に
何と 返して良いか分からない。


でも…

離れたくないんだ。


「翔ちゃん  一緒に…いて?」

袖口を掴んだ。


「……そんな事言われたら…期待しちゃうよ?」

「……良いよ…」

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「? …カズヒコ?」



かずが言ってた通り

オレは…もう、ずっと前から
翔ちゃんの事が 好きだったんだ。



翔ちゃんと かず。

かずが 翔ちゃんを好きな事は、すぐに気付いた。
…翔ちゃんの気持ちも。

オレは、かず から引き離す事を目的に 
翔ちゃんに近づいたんだ。


だから、翔ちゃんにとって オレは ただの 代用品。
オレにとっても…ね。


そう思っていた筈なのに、いつしか翔ちゃんはオレの中に入り込み、どうしようもなく  その 存在が大きくなっていた。


…苦しかった。



”  かずの代用品  ”  でいる事に 耐えられなくなって

”  かず 自身  ”   に  なろうとした。


オレは、かず。

オレと躰を重ねる翔ちゃんに 自身を投影して…かず を 犯 す 。


そうすることで、翔ちゃんを  オレの中から排除した。


オレが好きなのは かずだけ。


元々、オレたちは  一つの細胞だったんだ。

繋がって…混ざって   
溶け合ってしまえば 良い。


自分に…そう言い聞かせた。


だけど。 
だけどね?


躰を重ねる度に  心が 悲鳴をあげる。



オレを見て

オレを…愛して

オレは…かず じゃない


って。



…結局 何もかも
最初から間違っていたんだ。


ゴメン…翔ちゃん、かず。



涙が、頬を伝い

離れたくなくて…掴んだままの
翔ちゃんの 袖口を濡らす。


「…オレ 翔ちゃんが 好き…」

「カズヒコ…」


翔ちゃんを 下から見上げ
唇を そっと…重ねた。


静寂が 二人を包んでいた。

…翔ちゃんの瞳が 熱を持つ。


「…本当に? 俺で良いのか?」

「うん…翔ちゃんじゃなくちゃ ダメなんだ。かずの事は もちろん大好きだけど。

…翔ちゃん…抱いて… 」



かずのフリをしたオレじゃなく

オレを…

オレ自身を。


潤んだ瞳を 隠す事なく
オレに向ける。

…翔ちゃんから零れた 一筋の涙。


堰を切ったように

翔ちゃんからの 愛が 
なだれ込んできた。


深い口付けを交わし
互いが 互いを…どこまでも求める。

翔ちゃんに抱かれた オレは…



初めて 

心が満たされる 歓びを知った。



つづく


2015.10.20    miu