共鳴の その後のお話です。

この先は 磁石のお話になりますので
お好みで読んで下さいね。









「ね、かず…聞いてくれる?」


家に帰るなり 
目の前に ひーくんが 迫ってきた。



あ、”ひーくん”ってのは
カズヒコの 小さい頃の呼び方で

距離を置くようになってからは
カズヒコ、と 呼び方を変えていたんだけど



あれ以来…

オレ達は 小さい頃のように
極めて 仲の良い兄弟に戻っていた。


今なら  あの頃みたいに キスだって出来るし、風呂にだって一緒に入れると思う。

まぁ、風呂に関しては  ”情事の痕”  が 躰中に付いてますから…
一緒には入りませんけどね。笑 

そこは、いくらなんでも 恥ずかしい。

…でもさ、多分
ひーくんも同じなんだと思うワケよ。

だって、ほら…
首筋に赤い花が咲いてる。


/////


目の前のひーくんを避けながら
キッチンへと向かう。


「何よ?騒々しい。
…どうせ、翔さんが どうしたとか…そんな事だろ?」


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し
口を付けた。


「どうせって 言うなよ!…オレにとっては 大問題なんだから!
ね、大野さんは エッチの前に 必ずトイレに行く?」



ぶーーーーっ!!
ゴホッ!!ゴホッ!


「ちょっ!?…キタナイなぁ。
それ、自分で拭きなさいよ?

だってさ、変じゃない!?
必ずなんだよね。それも、ここ最近!

…単に 生理現象なら しょうがないかな?と思ってたんだけど。

ハダカで抱き合ってて、じゃあ もう一回♡って時まで、慌てた様子で…スマホに手を伸ばすのよ。ゴムじゃなくて!
それ持ってトイレに行くのって…どう考えても不自然だよね?

トイレが目的じゃなくて…スマホが必要なんだと思うんだよね。まさか 浮気とか?」



…はい、ひーくん正解。
それは  不自然です。

確かに毎回…翔さんから 、誤字脱字タップリのおかしなメールが来てました。


昨日は『これから初めて』でしたよ?

大野さんは 「初めてって…何するんだろうな?」って 大笑いしてるし。


それにしても 翔さん、もう少し…
上手く出来なかったかな?





あれから。


オレは 何度か 翔さんに『行為前の連絡は要らない』って言おうとしたんだけど。

大野さんが
『そのままで良いから』
と言って…首をタテに振らなかった。

何故だか  翔さんに対して
変に 妬いてるようなんだけど

オレにはその理由が分からなくて。


「あー、いや…大丈夫じゃない?
…だってさ、翔さん お前にベタ惚れだし。浮気なんて あり得ないから」


チョット…気まずくて
ひーくんから スッと視線を逸らした。


「それは…まぁ。うん ////  分かってる。ちゃんと 愛されてるなぁって…感じるから。

………けどさ、かず?
その目の逸らし方。何か 隠してるね?オレに隠し事 出来ると思ってるの?」


!!?

あ、ヤバイ。

こういう時の ひーくん は
ものすごく勘が 鋭い。


「えーっと…
大野さんの所に 忘れ物しちゃった…」


振り返り、部屋を出ようとした所で
右手を掴まれた。


「かずが翔ちゃんにさせるとは…思えないんだよな。
…もしかして、大野さんが絡んでる?」

「!? …いや、それはさ…」

「チョットさ、スマホ…貸して?」
 
「…スマホ、大野さんのトコに忘れて来ちゃったんだよ…。だから、取りに…」


♪~~♪~~♪~~♪~


シン、とした部屋に
着信音が 響き渡る。


「…オレが出ようか?」


意地悪く ひーくんが笑った。

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あぁ   大野さん…ゴメン。

ポケットに突っ込んだ 
スマホを手に取り
画面を確認したオレは

それを そーっと…
差し出すしかなかった。


通話ボタンをタップして
スマホを耳に当てる。

「…もしもし、大野さん?」

話し始めて

カズヒコの眉が ピクっと
少しだけ…上がった。


「…うん。
え?…そう…ふふっ…お休みなさい」

通話の終わったスマホを
オレに寄越す。


「あの、ひーさん?」

「明日…大野さんと会ってみようかな。…良いよね?」

「や、それは…」


有無を言わさず、にっこりと笑って
自分の部屋へと戻っていった。



つづく



2015.11.30    miu