末ズのお話です。
軽くBL含みますので、ご注意下さい。








side : N




頭上で鳴り響く 雷鳴と

バシャバシャと 窓を叩く 雨の音が
どこか…遠く聞こえる。



暗闇の中
抱き寄せられ…


甘い…潤の香りと

半乾きの髪から微かに香る
塩素の匂いが

オレの中の  
夢と現実世界との境目を 
曖昧にしていた。



オレが  泣いてるって?

…そう、だね。泣いてるよ。


『怖いんだろ?  雷…』


慈しむように…
耳元で囁かれた  優しい 声。


確かに震えてるよ。
でも、そうじゃ無い。

過去の…
気が遠くなるほど昔の 記憶は
震えるほどに  胸を締め付ける。


王子の未来には  オレがいない
今も …昔も。

ただ、それだけ。


悲しくて
切なくて…

諦めて。



でも  気付いたんだ。


…何一つ変わっていない。


あの時の未来にも
オレは居なかったよね。

アナタの隣には  妃になるべき
別の…女が居たんだから。

それに絶望して、泡となり消えた。



なんだよ… 300年経っても
同じ事を 繰り返してる。


おかしくて

だけど、苦しくて
…溢れる涙が 止まらなかった。


やがて それは嗚咽に変わる。


「…違っ!」


もう、何もかもを  否定したかった。

何も出来ない自分自身と…
変えられぬ 未来とを。


足掻いてみようか?
王子の心に 爪痕を残してみようか?


残された 少しの時間。

あと、一年足らずで オレは消える。


オレがいた事も
記憶の片隅にすら残らない。

過去の…
王子との思い出も

今、この瞬間の記憶さえ


全てが  無に還って…

オレが消えれば  
誰も傷つくことなんて無い。




「 違う?
じゃあ、泣いてるのは…?」

「…………」

フルフルと首を振る。


「雷が怖いんじゃないなら…
お前は  何で 泣いてんの?

何に…怯えてるの?」

「泣いて…無いしっ」


目尻から 伝う涙を
柔らかな感触が、拭った。




つづく


中々進まない…
エロくない…(TωT)


miu