末ズのお話です。
軽くBL含みますので、ご注意下さい。








side: N


過去の記憶に翻弄されて
自分の気持ちが 信じられない。


…潤の胸を そっと  押し返した。


「ゴメン…本当に、忘れて…」


ポロポロと 溢れ落ちる涙。


「…何で? 」

「昔、潤と…よく似た人を好きだったんだ。
だから…」

「…それは、俺…じゃない ってこと?」

「分からない…」


オレは頭を振った。

…沈黙が 部屋の中を支配する。



「…今日は 俺…帰るよ」


潤は ギュッと 握りしめていた手を 開き
優しく オレの頬を撫で  微笑んだ。


「雨は…?」

「もう、小降りだから大丈夫。
ニノ…また、明日な」

「…うん。 気を付けて」


背を向けて出て行く後ろ姿を見送る。


パタン…とドアが閉まると

潤の 悲しそうな瞳の残像が
いつまでも  部屋の中に漂っていた。


「ぅっ、く…」


溢れる涙を拭ってくれる
温もりは…もう ない。


泣いて

泣いて、泣いて…

体の中が カラッポになるくらい
泣き疲れて。


オレは 何時しか 眠りに落ちていた。







side: J


外へ出ると

少し前まで 降っていた雨は
すっかり止んでいた。



濡れた道路には 所々に水溜りができていて

自転車の車輪が その水を弾くたび

見えない何かに 絡め取られるように
心が …重くなっていくのを感じた。




俺に似た、誰か。


だけど、そう聞いて
全てが 腑に落ちたんだ。



出会った時の
俺を見て 悲しげに揺れた瞳。


少し  近づいたと思ったら
すぐにまた 離れていく。

惹かれ合う視線は 沈んで…

…ニノを包む空気は
いつも 悲しい色を纏っていた。


お前が 怖がっていたのは
もう一人の俺?


…恋人 だったんだろうか。


それとも…?


そんな思いが グルグルと頭を駆け巡り…

ハッと気付いた時には
目の前に 電柱が 迫っていた。

!!!

慌ててハンドルを切る。


「痛って…」


接触は免れたものの、バランスを崩し…
俺は 地面に投げ出された。



” 忘れて ”   と 泣いた ニノ。



…忘れられるワケねーだろ。


あの時の キスは

俺の胸に 熱い光を灯して
まだ…燻っている。


「 諦めないよ 」


俺は 立ち上がって

星の見えない 夜空を見上げた。


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つづく


miu