末ズのお話です。
軽くBL含みますので ご注意下さい。










side : N


潤の大きな手が
オレの…髪に触れた。


反射的に 目を閉じる。


…怖かったワケじゃない。

潤が あんまり優しくオレを見るから
どうしたら良いのか分からなくて
目を…伏せたんだ。


閉じた瞳に落ちる影が
その濃さを増すと

その直後、柔らかい感触が
目蓋に 触れた。


それは 昨日、潤がくれた 
息が止まるようなキスより 
ずっと 穏やかで…


唇から 潤の熱が伝わって

ボロっと  涙が一筋零れ落ちた。


気づいた潤が
唇で  その涙を拭う。


「ゴメン…嫌だった?」


オレは 横に頭を振った。


「コレも…忘れる?」

「イジワル言わないでよ…」


…こんな素直じゃないオレを
好きだと 言ってくれる?

男なのに…本当に 良いの?


真っ直ぐ見つめる  潤の瞳は澄んでいて

オレの心の奥まで 
見透しているようだった。


「俺さ。 ニノが、好きだよ」

「………うん」

「…俺が女なら良かったのかな?」

「それは違う!!潤は…潤で良いんだ。
男でも女でも関係ない。潤だから…好きになったんだ」

「うん、だから…
俺も ”ニノ” を好きになった」


そう言って
太陽みたいに微笑んだ 潤に

王子の面影は
もう…重ならなかった。
  


キラキラ…

目が眩むほどの笑顔が  オレを照らす。



なんでだろう。

昨日まで  自分の気持ちが信じられなくて
あんなにも不安だったのに。

今日は潤の言葉が  素直に響いてる。



言葉を失ってまで 
好きな人の側にいたいと願った 過去。



勝手に 好きになって

勝手に 近づいて

勝手に… 絶望して、身を投げた。



二人の距離が 近づくたびに

アナタに触れたい、心を通わせたい  
好きだと…伝えたい。
 

次々と 欲が溢れ出て

その感情に戸惑いを覚えた。



側にいられるだけで
幸せだと  そう思っていたのに

どこで変わってしまったのかな。



自分勝手で  可哀想な 
昔の…オレ。


だけど、嫌いじゃないよ。

アナタはさ、それだけ王子の事が好きだったんだよね。


好きな人に 触れたくて

抱きしめて…キスして欲しい。


オレが持っている感情も 同じだよ。


違うのは、王子じゃなくて
潤  だってこと。



彼女は今も…
確かに  オレの中に感じるけれど

その気配は 微かで


深い 深い 海の底で
静かに 眠りについているような


そんな…気がした。



つづく


miu