にのあいのお話です。
軽くBL含みますので 苦手な方はご注意を。













「まーくん、本当にこの部屋で良いの?」

「うん! オレ、ここが良い」


この家には、今…父と母しか住んでおらず
泊まれる部屋は他にもある。

…それなのに、雅紀は仏壇の置かれた部屋で寝ると言って聞かなかった。


「しょうがないなぁ…母さん、ここに布団を二組敷いてくれる?」

「二人とも…昔は 怖がっていたのにね」

「…オレは怖くなんか無かったけどね」

「あ、伯母さん オレが運ぶよ」」

「そう?  まーくん  ありがとう」


クフフっと笑いながら

母と二人
布団を取りに行ってしまった。





客間でもある この部屋。

昔から、泊まりに来るたびに
オレ達はここで寝ていた。

久しぶりに実家に集まった大人たちは 
酒も入り 夜遅くまで騒ぐから

騒がしい 居間から 一番遠いという理由で 
子供に割り振られた部屋だった。

そして、まだ小さかった雅紀を寝かしつけるのも、お兄ちゃんだった オレの役割り。


並んだ布団に横になり
雅紀と二人、天井を見上げる。


明かりの消えた 部屋の中

天井の木目が 目に見える とか
どこかで ギシッと音が鳴ったよね とか

…布団に入った後も なかなか寝付けないでいた。


そんな中、仏壇に背を向けて
消えそうなほどの小さな声で 
雅紀が言った。


「…カズ兄は、この部屋 怖くないの?」

「オレは…大きいから怖くないよ」


ビクビクしながら、布団からそっと顔を覗かせている 雅紀は、明らかに怖がっている。

だけど…
そう答えたオレも、まだ 子供で

雅紀の手前、強がってはみたけれど
本当はドキドキして…凄く怖かったんだ。


「ねぇ、カズ兄…触ってても良い?」

布団の中に潜り込んできた可愛い手が
オレのパジャマの裾を握る。

「…雅紀は怖がりだなぁ」

なんて  そう言いながら 

パジャマを掴んでいたその手を外し
指を絡ませ ギュッと…握り返した。


「これなら、怖くないだろ?」

「うん…カズ兄、大好き…」


程なくして
スゥスゥと  静かな寝息を立て始める。

しっかりと繋がった…

雅紀の手の温もりを感じながら

いつの間にか
オレも眠ってしまったんだろう。


…その後の記憶といえば


白い光の中

朝ごはんが出来たわよ、と
肩を揺らす 母の顔だったから。





つづく




miu