つづきです…









「こんな場所、よく知ってたな」

「ここ、俺のとっておきの場所なんだ」

「オレも…先輩に教えてもらって、驚いた!
だってさ、こんなに見晴らしが良いのに、人がいないんだもん」

「確かに、不思議だよね。今日みたいな日は、さすがに人がいるかと思った」

「ああ、それは…」


得意げな顔をした櫻井が、クッとアゴを上げた。

「もう少し上に、ここよりも大きな公園があるんだよ。
そっちはトイレも綺麗だし…
街灯もたくさんあって、明るいから」


…なるほど、そういう理由か。
でも、こんな綺麗な景色を 自分たちだけで楽しめるなんて、思ってもみなかった。


バーーン!!パラパラ…


次々と打ち上がる花火。

一瞬で 花開いては、目の前で消えていく
その儚さに

どうしてだろう…
胸が苦しくなった。


「…カズ兄」

オレの手を、雅紀の大きな手が包み込む。


「花火ってさ?
パッと咲いて、散っちゃうように見えるけど…」


遠くを見つめる雅紀の瞳に
キレイな花が映り込んでいた。


「…でもさ、違うよね。
消えちゃうんじゃなくて、空で弾けた 幸せのタネが 風で舞うんだよ」

「幸せの…種?」

「うん、タンポポの綿毛みたいに…あちこちに飛んで、そこからまた 幸せの芽が出るんだ。だから…」


「雅紀…」

(そんな悲しそうな顔をしないで?)


…そう、言っているように思えた。


実らなかった彼の恋は
きっと…次に芽吹く時の糧になる。

自分の残したものが、傷跡だけでないことを信じて…


雅紀の頭を肩に乗せ、体重を預けると
目の前に影が落ち 重なった。


チュ…


深くはない、触れるだけのキス

でも、それは オレの心に触れ
澄んだ音色を鳴らした。





終わり




そして 翔潤につづく…



miu