つづきです







卒業式が終わり
教室を出ようとしたオレに松潤が声を掛けてきた。


「ニノ、お前も行くだろ?」

「なに?」

「何って…皆んなでカラオケ行こうって言ったじゃん」

「あー悪い。パス」

「は?!今日くらい良いだろ。付き合えよ」

「…ごめん。大事なことがあるんだ」


松潤はじっとオレを見つめていたが、やがて諦めたように肩をすくめた。


「…ちぇっ、しょうがねえな」

「次は絶対行くから」

「その言葉忘れんなよ?!」


松潤は、笑ってオレの背中をポンと叩いた。

…ごめんね。
でも、今日だけは ダメなの。

松潤は、多分…初めての友達。
あれ、相葉さんが先だっけ?まぁ…相葉さんは年上だし、バイト仲間だからちょっと違うか。

打算とか駆け引きとか…全然関係ない。
そういうの、一切ないんだもん。
だからさ、卒業したくらいで手放すつもりないからね。松潤も大事。
次はオレから連絡するから、覚悟しろ。笑

じゃあまたな、と 手をひらひらさせて背中を向けた松潤を見送ると、オレは駐輪場に急いだ。


自転車に手をかけ振り返る。

3年間通った校舎に…一礼した。





アパートに残した荷物を積んで、自転車を走らせる。
先生のマンションに到着すると、ずっと…キーホルダーに付いたままだった鍵で部屋へと入った。

持ってきたほんの少しの荷物を片付けると、あっという間にオレの引っ越しは終わった。


先生が帰ってきたら

晩ご飯一緒に食べて
お風呂入って
その後は…//////

って、新婚さんみたい///
でも、そういうの…先生、嫌いじゃないよね。

風呂の掃除をして、冷蔵庫の中を確認して。見れば、食材が色々と入っていたから、買い物に行かなくても夕食は作れそうだった。
でも、晩ご飯の準備をするには まだちょっと早いよね。

……ここは、夜に備えて寝ておくべき?
///だって、ほら。
実際、昨日は興奮してあんま寝れなかったし。
この間みたいに、さぁこれからって時に寝落ちしたら、今度こそ先生泣くよね。笑
完璧な状態で夜を迎えるために、ちょっとだけ昼寝をしておこう。そうしよう。

ベッドにごろんと横になり、1時間後に鳴るようにアラームをセットして目を閉じた。

はず…だったのだが。


目が覚めれば、部屋の中は真っ暗で
慌てて電気をつければ、時間は既に6時前。
え、なんで?!アラーム鳴らなかったの?!!
湯張りのスイッチを押して、冷蔵庫のドアを開けたところで…
無情にも、ガチャっと鍵を開ける音がした。


「ただいま、和也」

「おかえりなさい。あの…先生」

「どうした?」

「ごめん…オレ寝てて。すぐご飯の支度するから」

「なんだ、そんなこと」

「でも、せっかく…」


あぁ、何のために準備したんだろう…
先生に喜んで欲しかったのに。
項垂れているオレの顔を覗き込むと、先生は真面目な顔して言った。


「おれ、飯より和也が食いたい」


えええええ!?





つづく





miu