隔週連載…?( ・∇・)
(もはや自己満足の世界)
つづきです
リビングのドアを開け、ソファに腰掛ける。
おれの帰りを待っていた大福が、尻尾を振りながら足元に寄ってきた。
きゅんきゅんと甘える大福を膝の上にのせ、スマホをじっと見つめる。
翔ちゃんと家族しか登録されていなかったLINEの画面。
ずっと絵を描いてきたおれは、親しい友人なんて翔ちゃんしかいなかった。仕事の関係の連絡は翔ちゃんを通してがほとんどだったし、数少ない直接の連絡もパソコンのメールを使っていたから、必要なかったんだ。
そこに追加された、ニノの名前…
「なぁ、大福。
今日はありがとうございましたって送って…いいと思う?」
大福は不思議そうにおれを見上げ、わん と返事する。
うん。別におかしくない…よな。
この後まだ仕事みたいだったけど、メッセージなら邪魔にならないはず。
トーク画面のニノの名前に触れた。
"よろしくお願いします"と送信された画面。
…なんて書こう。
慣れないキーボードに四苦八苦しながら"今日はありがとうございました!お会いできて楽しかったです"と入力して…
何か違うよな、と文字を消す。
おれは嬉しいし楽しかったけど、ニノからしたら間違いなく仕事な訳で。
忙しい中、せっかく時間を作ってくれたのに、何も話が纏まらないまま終わってしまったとか、本当に申し訳ない。
“今日はありがとうございました" の後、何を書いたら良いのか分からず悩んでいると…
「…で、ニノはどんな人だった?一緒に写真とか撮らなかったの?」
「ひぃっ!?」
急に声をかけられ、身体がビクッと跳ねた。その弾みで大福が膝から転がり落ちそうになり、慌てて両手で抱き止める。
「…何をそんなに驚いてんの」
「いや、翔ちゃん帰ったんじゃ…」
「さっきからずっと、ここに居ましたけど?」
「あの、えっと…」
どうやら、メッセージを入力するのに夢中になっていて、気づかなかったらしい。
リスナーからツチノコ扱いされていたニノに、翔ちゃんも興味があるらしい。
「写真とか…全然思いつかなかった」
「ふーん。じゃ、顔とか雰囲気はどんな感じ?おじさんだった?」
「身長はおれと同じくらいで、顔は…」
…何でだろう。
これ以上、興味を持たれたくなくて
思わず「普通の人、だったよ」と言ってしまった。
今度こそ玄関まで翔ちゃんを見送り、リビングに戻る。
…そういえば、スマホどうしたっけ?
メッセージの入力が途中だったことを思い出し、スマホを探す。
「ああ、こんなところに…」
気持ちよさそうに寝そべっている大福の腹の下からスマホを救出すると
その画面には
“今日はありがとうございました“
に文字に続いて
と
ハートマークが連打されていた。
つづく
miu