つづきです( ・∇・)
「大野さん飲む?」
「あ、うん」
「オレも飲みたいから…駅の近くの居酒屋でいい?車置いて行きたいんだよね」
ラジオ局の前で待ち合わせをし、ニノと二人で歩き出す。
ずっとソワソワしながら待ち続け…
連絡が来たのは9時少し前で。
やっぱりラジオ局での仕事って忙しくて大変なんだなぁ、と実感した。
「カンパーイ♪」
通された席は個室になっており、意外と静かだった。
平日ということもあるのかもしれないが、元々客の年齢層が高めなのかもしれない。
落ち着いた雰囲気の店内は隠れ家のようで、とてもお洒落だった。
「わ、美味い!」
「でしょ?ここ美味しいのよ」
初めて会った時は、人見知りしていたニノだったが、今ではすっかり打ち解けた様子。
酒が入ったせいもあるのか、今夜はかなり饒舌だ。
きっと、これが普段のニノなんだろう。
他愛無い会話にコロコロとよく笑い、急に黙ったかと思うと、独り言のように何か言っては自己完結していく。
見ていて飽きない…
っていうか、ずっと見ていたい。
「なんか…オレばっか喋ってごめんね?」
おれの視線に気づいたニノが、申し訳なさそうに謝るから、慌てて首を振った。
「ううん、全然。楽しいよ」
「…ほんと?良かった」
ふたりだけの空間に
ニノの声が、甘く…響く。
そのあまりの心地よさに
おれは目を閉じて、聞き惚れていた。
「……」
ん?
急に静かになり
顔を上げて見れば、水分の多い瞳は潤んでいて、少しトロンとしていた。仕事で疲れた身体に、酔いが回ってしまったのかもしれない。
自由業のおれはともかく、ニノは明日も生放送がある。そろそろ帰った方がいいかもしれない。
トイレに立ったついでに会計を済ませ、戻ると
テーブルの上に頭をのせたニノが気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「え?!ニノ、起きて?」
「ん…」
「もう帰ろう?」
「…もうちょっと飲む…」
「いや、もうだめだよ。明日も仕事でしょ?」
「……うん。そう…」
"仕事"のワードを聞いて、酔いが冷めたのか
急に立ち上がり、店を出るニノ。
しかしその足取りはふらついていて、このままタクシーでひとり帰らせるのは心配だった。
「ニノ、うちに泊まってけば?」
「…え…///」
別に深い意味はなくて
きっと、仕事で疲れてただろうに…
おれとの約束を守って、食事に付き合ってくれたことを申し訳なく思ったのと
何より、うちからならラジオ局まで歩いて行ける。明日、仕事に行くにも近い。
ただ…それだけのつもりの発言だったのに
みるみる真っ赤になって
おれを見つめるニノがあまりに可愛くて
急に"深い意味"の方を想像してしまい
「違う、あの…大福に会いたいって言ってたから!!」と 変な言い訳をするハメになった。
つづく
miu