つづきです












外に出ると、雪が舞っていた。


ふわり、ふわり…と

空から落ちてくる。


手を伸ばせば

触れては溶ける雪が、儚いものなのに…


祝福のフラワーシャワーように思えてしまうのは、なぜだろう。


大野さんの手をきゅっと握り返し

白い息を吐き出しながら、ふふと笑った。





電車を乗り継ぎ、歩きながら

色々なことを話した。



実は、出会うずっと前から…

大福と散歩をしている大野さんの姿を毎日見ていたこと。大野さんを勝手に"さすらいのポストマン"って呼んでいたこと。

きっと一目惚れだったんだよねって言ったら、声かけてくれれば良かったのにって。

…そんな簡単じゃないのよ。

恋愛なんてもう懲り懲りだと思っていたから。

それでも…

予想もしないカタチでアナタと出会って、しかもそれがSATOさんだったなんてね。

良い人決定じゃない。それでいて外見がドストライクとか。

もう、好きにならないはずがないよね。

そう言って大野さんを見上げたら、照れながらも「おれの方が好きだからな」って。だからオレもイヤイヤ負けないからって言い返したら…

何を言い争っているのかとバカらしくなって、ふたりで笑った。



ふ、と ふたりの間に静寂が訪れる。



「あ…もしかして」


「ん?」


「じいちゃんがニノのことを佐藤って呼んでたのは、その…」


「…え、あ…それは、えっと…」



相葉さんには、ちゃんと名前とか

ここに来た経緯なんかを話したけど。


"ニノ"って呼ばれたくなくて。

二宮和也は…大切な場所に置いておきたくて。


相葉さんにはかずって呼んでもらうようお願いし、本名を語る必要のない場所では佐藤と名乗った。


…そう。

アナタの SATO から…借りて。


離れていても、名前を呼ばれるたび

ほんの少しだけ…一緒にいるような気持ちになれたから。

って、我ながら女々しいよね。



「…ごめんね、引いた?」



恐る恐る 隣をみると

暗い中でも分かるくらいに顔が赤く染まっている。



「やべぇ…嬉しい」



なんて言いながら

ぎゅうぎゅうと抱きしめるから


オレも 人目も気にせず


大野さんの唇に

自分の唇を、そっと…重ねた。






つづく



miu