ラストです。
書き上がっていたので
本当は先週UPするはずだったのですが…
遅くなりましたが、良かったら♪
ニノが「んーっ」と背中を丸め、力を込めると、ピリピリと背中の亀裂が大きく広がっていく。
慌てて両手で止めようとするおれに、大丈夫だから と、その皮を自分で左右に引っ張った。
するりと皮の下から新しい皮膚が現れる。
「えええ、脱皮した?!ヘビ?!」
「いや、脱皮って。笑
そこはせめて蝶って言ってよ。一応、ワタシ精霊なんだから」
バサッ
ニノの背中を見れば、羽化したてのような薄いブルーの羽根が生えている。
手袋や靴下でも脱ぐように、残りの皮も脱いでいくニノ。それをくるくると丸めると、ゴミ箱にポイっと投げ入れた。
え、それ燃えるゴミでいいのか?なんて思ったことはナイショにしておこう。
「んーと、全部脱げたかな?」
今まで以上に 白く透き通る肌。
背中の羽根が、窓から差し込む光を纏い
キラキラと輝いている。
「キレイ…だな」
「ふふ。必要ないから、普段はしまってあるんだけどね♪」
ちょっと照れながら、その羽根を広げると
それは溶けるように すっと消えた。
念のために確認してみたが、背中の傷は跡形も無く消えている。
…良かった。ニノがケガしたんじゃなくて。
ホッと胸を撫で下ろしたのだが、今度は別の暗雲が胸の中に広がった。
おれ、あの時…夢中で
"一つ目のお願いだ。ニノを助けて"
"なぁ。一つじゃ足りない?
それなら、二つ目のお願いも三つ目のお願いも…全部使って良いから、ニノの傷を治してくれ"
と、確かにそう口にした。
「…どうかしたの?ご主人さま」
心配そうに覗き込むニノに、おれは三つの願い事全てを使い果たしてしまったかもしれないと告げた。
「急須にお願いしたんだ。ニノを治してくださいって」
三つの願い事を叶えたら、ニノはおれの前から消えてしまう。元々がそう言う契約だ。
だからこそ…
ニノとずっと一緒にいる事を望み、願い事なんてするつもりは無かったのだが。
だが、あの時ばかりは…ニノの無事を願わずにいられなかった。
ニノが消えてしまうかもしれない不安に、身体が震える。離れてしまわないように、ニノの手をぎゅっと握った。
「……ご主人さま、ありがとう」
ふわり と
柔らかな手がおれを包み込み
大丈夫よ、と 耳元で囁いた。
「魔法は、まだ三つとも残ってるから」
「そっか…良かった」
緊張が解け、腰が抜けたように床にへたり込んだ。
そんなおれの様子に、ニノはイタズラな笑みを浮かべている。
「ね、ご主人さま。何か…気づかない?」
「え?」
何かって…何が?
そう言おうとして、おれは気づいてしまった。
一皮剥けたニノの肌艶は、薄っすらと光沢を纏っていて、なんていうか…超絶にエロい。
濡れた唇も。
誘うような色香は、見るもの全てを虜にするだろう。
元々可愛いかったニノだが
例えるなら、モンシロチョウ が アゲハチョウ になったかのような。
「えーっと…」
「ふふ。精霊は脱皮するとね、少し…大人になるの」
「///あ、ちょっと、ニノ?!」
「ね。脱ぎ忘れた皮が残ってないか確認して?」
やっぱり脱皮なんじゃないか なんて
野暮なツッコミはやめておこう。
だって…
そんなことどうでもいい。
今、目の前には ニノがいて
おれに向けて手を伸ばしている。
「んふふ。来いよ。ちんこの皮を剥いてやる」
「失礼な!そこは最初からムけてるもん。
っ///あ…」
全身に唇を滑らせれば、ニノの躰からは
ほんのりとミルクの味がして
後で、漬けっぱなしの急須を
牛乳から引き上げてやらなきゃな と
そんな事を考えていた。
終わり♪
miu