ハードヒットな人々 ❹(be water, my friend.) | まつすぐな道でさみしい (改)

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平成12年5月1日 東京ドーム
平成14年6月23日 埼玉スーパーアリーナ
平成14年11月24日  東京ドーム



  諸行無常 是正滅法…

  形あるものはいつか壊れる。

  部屋も、団体も、肉体もまた然り。

  形あるものは時節到来すれば必ず滅する運命にあり、どうしたところで抗う術は無い。

  しかし、形を持たず、時代やその時々の状況に応じながら引き継がれて行く物もある。

  帰るべき家を失い散り散りになってしまった子供達が、それぞれに自分の立ち位置を見つけ活躍する姿を見るたび、消滅してしまったはずのあの3文字を心の中に思い浮かべていた…  



  あの時代のように。






「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず、相撲道に精進してまいります」平成31年 3月27日 大阪










令和元年 5月26日 東京 両国国技館

  令和元年五月 大相撲夏場所 Reiwa One Sumo Grand Championshipは西前頭八枚目三役経験の無い平幕力士がその栄冠に輝くという、誰もが予想だにしなかった波乱の展開で新時代の幕は切って落とされる。



『いや、頭から思いっきり行く力士はね、今は良いんだけど…現役引退した後で、ほんとうに苦労するんですよ』

  泥沼の権力闘争に敗れ平成の大横綱が去ったその土俵は、皮肉にも彼の追い求めた理想の形に近づきつつあるのだが、実際に年間6場所15日間興行をすべてガチンコで取り組んで行ったと考えたとき、やはり懸念されるのは力士の怪我の問題だろう。


  2ヶ月に一度の本場所といえば十分に間隔が開いてるようにも感じるが、相撲の立会いのインパクトは軽トラックが正面衝突したくらいの衝撃だと言われ、生身の人間がそのような衝撃を15日間もまともに受け続けて無傷で乗り切れるずは無く、場所間の僅か6週間で地方巡業をこなしながら怪我を癒やし、次の本場所に向けて体調を備えて行くと考えれば、とても十分な時間とは言えまい。


  平成31年 大相撲春場所 時代の終わりを優勝で飾った横綱 白鵬右上腕二頭筋断裂で初日から欠場と発表され、これを機に令和の新大関が一気に時代を手繰り寄せてしまうのかと注目されたが、新時代の土俵はそんな予定調和を寄せ付けない戦国絵巻の様相を呈していた。


  令和元年 夏場所  4日目の小結 御嶽海戦で右膝関節内側側副靱帯を損傷し5日目から欠場していたものの、8日目の碧山戦で強行復帰に踏み切るが、その右膝をテーピングでガチガチに固めた姿はあの日の武蔵丸戦を思い起こさせ、思わず目を背けてしまう。

  幸いにもあの日の本割同様、碧山が立会いの変化でスカしてくれたことと、翌日から再休場に踏み切ったことから、大事に至っていないことを願いたい。

*あの日の本割、まともに四つに組んでしまっては貴乃花の膝が壊れてしまうと懸念した武蔵丸は、立会いの変化で体を躱し勝利を収めるのだが、結果的にその甘さが決定戦での貴乃花逆転優勝に繋がり、横綱として、勝負師としての厳しさに欠けると大バッシングを浴び、武蔵丸自身も長期のスランプに陥ってしまうのだが、最後にもう一度貴乃花と対戦するまでは引退する訳にはいかないと、現役横綱としてライバルの復帰を待ち続けた。
  
  当然、どのような状況であれガチンコで勝負に徹するべきだという前提は分かるのだが、短い取り組みの中にこういった忖度や、感傷的な人間臭さが滲み出してしまう相撲を私は否定する気にはなれない。
  



『まだ上が有りますから…』

  弱冠22歳の若さで大関にまで上り詰め、昇進会見の席では『これから、どのような大関像を目指しますか?』との記者の質問に対して『まだ上が有りますから』と、なんの飾りも無い武骨な一言に綱取りに向けた意欲を滲ませ、ファンの期待を駆り立てるそのセンスたるや眼を見張るものがあるのだが、しかし、人間が努力して上り詰めることの出来るはここまで…


  これより先は神に選ばれし者のみが足を踏み入れることが許される領域であり、ときにそれは命までをも差し出すことを要求される。


  明治以降の横綱在位経験者の寿命を平均すると58.6歳。これを昭和以降に絞ったとしても61.2歳と、日本人の平均寿命と比較して20年近くも短命で、この物語にも登場した第55代横綱 北の湖は62歳、第58代 千代の富士も61歳、先日荼毘に付された第60代 双羽黒も55歳という若さで亡くなっていることからも分かるように、どうやら元横綱と呼ばれる人々は、一般的に老後と言われる時間を迎える前にその生涯の幕を閉じてしまう傾向にあるようだ。

  職業柄、現役時代からの食生活や特異な体型をしていることの影響も否定出来ないが、大関以上の番付になると常に上位陣との厳しい取り組みが組まれることに加え、横綱という地位は負けたからといって大関に陥落することは無く、勝てなくなれば即引退という崖っぷちに立たされ続けながらも、いちいちその勝ち方にさえも注文が付くという過酷な立ち位置にあり、そのプレッシャーとストレスたるや想像を絶するものがある。



長く地位を務めるには、押し相撲一本じゃね。それなりに四つ相撲も覚えないといけないなと思います

  これは平成から令和へと時代の移り変わりと共に、いよいよ現役生活の幕引きに向けて秒読みが始まった感のある現役最強横綱 白鵬から大関昇進時に発せられたコメントたが、確かに今の突き押し相撲一辺倒では安定性に欠け、このスタイルで横綱にまで上り詰めるイメージが私には湧かないのだが、それ以前の問題として、決して恵まれてるとは言い難いあの体格で毎回頭から思いっきり突っ込んでいく立会いでは、ダメージの蓄積の方が気になってしまう。


  この先、彼が時間を掛けて四つ相撲を取り入れたスタイルにチェンジして行くのか、それとも突き押し一辺倒のスタイルを極め、新しい横綱像を目指して一気に突き進んで行くのかは分からない。ましてや彼の望む最高位にまで手が届くのかさえも定かでは無いのだが…


  いずれにせよ、ひとつだけ私の願いが聞き届けられるとするならば、志半ばで彼の現役生活を終わらせてしまうような、致命的な怪我だけは負ってしまうことの無いようにと、ただそれだけを切に願うばかりだ。






  出来ることなら、あのような哀しい光景はもう二度と見たくは無い。



  そう、あのような悲しみはもう…



  哀しい光景?



  悲しみ?



  こんな長い時間を掛けて、私はいったい誰の話をしていたのだろうか?

  








  




  
平成29年4月9日 東京 両国国技館

別にチャンピオンで待ってるなんて言うつもりはない。また、会いましょうという約束をここで…






平成31年 3月24日 新潟 アオーレ長岡

ひとつ俺から言うとすれば、オレは生きてるから安心しろと。大丈夫だ、泣くな!





『怪我して良かったってのは絶対に無いですけど、後悔したく無い』

  あれから2年という歳月が流れ、運命に引き寄せられるように海を渡った男は、異国の地で指導者となり弟子を抱える立場になっているようだが、まだ現役を引退したわけでは無い。



  男には、まだやり残したことが多過ぎる。



  若き王者との約束。



  そして何よりも、22年前から延々と続く終わらない夏の物語


  今はまったく別々の道を歩んでいる2人だが、過去ずっとそうだったように、その流れは必ず、いつかまた交差する時が来る。


  いつになるのかは分からないが、そのとき男はどのような物語を、どのようなプロレスを見せてくれるのだろうか?




   たとえ肉体に致命的とも思えるダメージを負ったとしても、その魂は衰えることを知らず、常に男はプロレスラーとして、その時点で、その器で出来る最大限のことを魅せ続けてくれている。


   

   そしておそらくこの先も、彼がプロレスラーであり続けることに変わりは無いだろう。




  








be water, my friend.











以上