最近Youtubeやニコニコ動画でよく落語を見ているというか聞いています。新作でよく見る(聞く)のが春風亭柳昇師匠(春風亭昇太師匠の師匠)で、古典落語では桂歌丸師匠。なんで今ごろ落語をチェックするようになったかと言うと、「ドラえもんの元ネタを一回ちゃんと聞いてみようかな」という気になったからです。

 

もう知っている人は知っている事実だと思いますが、ドラえもんを含む藤子F先生の作品は古典落語が元ネタになっているものが非常に多いです。F先生は子供の頃から落語が好きで、漫画家になった後も落語の本を読んだり寄席に行ったり、落語のテープやCDを聴きながら原稿を描いていたそうです。落語ネタで一番分かりやすい例だと、ドラえもんの定番シチュエーション「ジャイアンリサイタル」でしょう。これの元ネタは古典落語の「寝床」です。

 

 

あとドラえもん屈指の狂気エピソード「人間切断機」も実は落語の「胴切り」が元ネタです。

 

滑稽話を基にそこはかとない猟奇臭を漂わせるF先生の手腕の見事さ。

 

他にも「壺算」→「世の中うそだらけ」、「お化け長屋」→「ゆうれいの干物」、「嫁の下駄」→「いやなお客の帰し方」、「長短」→「のろのろじたばた」など、ストーリーが丸ごと古典落語のパロディのものも多く、さらにタイトルや演出の一部、セリフのやりとりなども数えればキリがありません。考えてみれば、のび太が与太郎キャラだとすれば、ドラえもんやジャイアン、スネ夫、しずか、パパ、ママといったメインキャラが長屋のおかみさんや物知りなご隠居といった落語の定番キャラに当てはまり、世界観そのものが落語的と言えます。

 

そんな落語に影響を受けたドラえもんを、さらに落語として演じる活動を林家たい平師匠が行っています。その名も「ドラ落語」。

 

 

 

この「ドラ落語」は、ドラえもんを落語の”噺”として林家たい平師匠が何から何まで全て一人で演じるというもの。もともと2004年にBIGLOBEにてドラえもんの誕生日企画の一環として無料配信されましたが、2010年12月に「ライター芝居」「この絵600万円」「いたわりロボット」が録りおろされDVD化されました。ちなみにたい平師匠は「ドラ落語」を演じる際に出囃子を「ドラえもんのうた」に、定紋も「ドラえもんの黄色い鈴」に替えるという凝りっぷりで、ご本人もドラえもんが大好きとのこと。

興味深いのは、DVDがリリースされたのは2010年の暮れですが(収録は同年8月)、たい平師匠が演じているキャラクターが完全に2005年3月までの「リブート前」の声優陣だということ。ドラえもんがまるっきり大山ドラ。つまりDVDリリース時現在の「ドラえもん」に合わせるのではなく、たい平師匠がリアルタイムに見ていたであろう時代の「ドラえもん」で演じているのです。そういえばたい平師匠、「笑点」で大山のぶ代の声真似をやっていたような…。ということで、DVD自体は一応子供向けに作られていますが、落語そのものは子供の親世代が楽しめる內容になっています。ダイジェスト映像は以下↓

 

 

なお、たい平師匠は普段は古典落語を得意とする噺家さんなので、古典以外の落語を演じているたい平師匠自体がかなりレアです。