まだあどけなさの残る横顔に大人びた赤いルージュ。一言で言えば、そんなワインだった。

この先何年もかけて、美しさにはきっと磨きがかけられ、鋭さはやがて多くのものを内包する柔らかさと優しさへと移ろい行く。

「時間」というものの本質を僕はワインではじめて実感した。2003年ヴィンテージのこのワインの本当の飲み頃は、おそらく2012年あたりだろう。5年先のこのワインを想う時、僕は5年後の僕自身をも想わずにはいられない。そこに、ワインの持つ深遠な世界があるのだ。

結局、人生のもっとも大きなテーマは「どれくらい自分を知り、どれくらい自分を愛し、自分を愛する誰かを愛することが出来るか」ということだ。

ワインは僕にたくさんの大切な何かを教えてくれる。そのお陰で、僕は自分にとって何が大切なのかということを実感する。


ワインの名は「ブリッコ・デル・ウッチェローネ バルベラ・ダスティ03」 ピエモンテ/イタリア