アドベンチャーゲーム研究処アワード2010 | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
2010年にリリースされた私がプレイした作品を独断と偏見で優秀作品を選出。
対象となる作品は、2010年発売の“新作”ADVであること。

【関連リンク】

アドベンチャーゲーム研究処アワード2008
アドベンチャーゲーム研究処アワード2009

【Best DS Adventure Game】

ゴースト トリック
DS『GHOST TRICK』
販売・開発 CAPCOM

アドベンチャーブームもいよいよ終焉を迎えたのか、
今年のDS向け作品のリリース数は『逆転裁判』『レイトン教授』がそろい踏みした
07年以降では最低の数字を記録し、市場規模もかなりの落ち込みを見せたため、
粗悪ゲームは減ったが、同時に昨年の『有罪×無罪』的なポテンヒット作品も減退し、
少なくなった大作タイトル以外にピックアップするレベルのタイトルは見あたらない。

そんな状況下でデキや新鮮味という面で他を圧倒していたのは、やはりこの『GHOST TRICK』。
やらんとしていることは脱出アドベンチャーの様な「パズル」ゲームだが、
どこまでも細かい所にまで拘ったグラフィックやギミックに裏打ちされた
世界観とパズルのインタラクティブ性が融合したゲームデザインに、
ノンストップなストーリーやキャラクターの展開はアドベンチャーゲーム的に突出して面白い。
アプローチは玄人受けしかしないだろうし、ゲームの狙いも新しいようでいてそうでもないが、
『逆転裁判』の巧舟氏が手がけた00年代総決算という意味で見て、
アドベンチャーファンはワンプレイは必須のタイトルなのは間違いないだろう。

DS『GHOST TRICK』(レビュー)

ラストウィンドウ 真夜中の約束
(候補 『ラストウィンドウ 真夜中の約束』)

【Best PSP Adventure Game】

ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
PSP『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』
販売・開発 SPIKE

今年のアドベンチャーを語る上で欠かせないのは、
ハード発売時からこれまで突出した作品が今ひとつなかったPSP市場で、
フリーソフトのリメイク移植という形でハイスペック路線を逆走した『コープスパーティBR』や、
特殊な販売方法とそれに伴ったゲームデザインが採用された『TRICK×LOGIC』など、
セールス的にもゲーム的にも取りあげるに足るタイトルが一定数登場したことだ。
言うまでもないかも知れないが昨年までPSPのアドベンチャー市場と言えば、
恋愛もの、つまり言えば美少女ものはそれなりのシェアがあった反面、
ミステリーやホラーものでのオリジナルタイトルは苦戦続きだったため、
少数ではあるがヒット作や、既存のアプローチ外の挑戦的な作品が出たことは大きな変化だった。

そんなPSP市場の中でもゲーム面、セールス面で突出したものを持っていたのが、
この『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』だ。
本作のゲーム的な起承転結としては良くある『逆転裁判』タイプなのは間違いないのだが、
全事件の犯人と被害者を冒頭に登場させるストーリーのシチュエーション、
そしてそれに伴ったコミュニケーション重視の日常パートのゲーム性と、
表現に拘ったグラフィックスと不条理な世界観は、今までにない疑心暗鬼の快楽を与える。
推理パートにおけるアクションとの融合については問題が山積みだったため、
賛否両論を巻き起こしたものの、これも迷いなくで今年のPSPではベストタイトル。

PSP『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(レビュー)

TRICK×LOGIC Season1コープスパーティー ブラッドカバーリピーティッドフィアー(通常版)
(候補 『TRICK×LOGIC』『コープスパーティBR』)

【Best Video Adventure Game】

該当作なし。
今年も据置機ではアドベンチャーゲームの数が少なかった上に、
PS3を所持していなかったので『HEAVY RAIN』『うみねこのなく頃に』の様な、
候補とすべき作品をプレイしていないのが、該当作なしの最大の要因。
まあいわゆる、自分の不徳の致すところ(信仰心不足)と言うやつだ。

HOSPITAL. 6人の医師(特典なし)
(候補作 『HOSPITAL. 6人の医師』)

【Good Graphics Game】

該当作なし。
ここも圧倒的な予算をつぎ込んだCGグラフィックスが売りの
『HEAVY RAIN』をプレイしていなかったので、評価し難かった。という感は拭えず。

HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき-

【Good Sales Game】

AKB1/48 アイドルと恋したら… 通常版
PSP『AKB1/48 アイドルと恋したら…』
販売 BANDAINAMCO GAMES

これについては誰も異論はないはず。
固定客向けにやたらバリエーションに富んだ限定版やキャンペーンを行い、
シェア以上の数字を叩きだしているアイドルグループ『AKB48』がテーマの作品で、
メディアミックス発表時点で「あざとい」という趣旨の意見が続出したが、
セールスとしては予約時点で25万本オーバーという圧倒的な数字を記録。
売り方としては多数の限定版やあざとい煽り文句などどうかと思う点は多いが、
実写ゲームで10万本の壁を越えた作品となると、恐らくこれが初のはず。
そう言う意味では、歴史的なゲームであることもまた確かだ。

ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生怪談レストラン 裏メニュー100選
(候補作 『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』『怪談レストラン 裏メニュー100選』)

【新人賞】

TRICK×LOGIC Season1
PSP『TRICK×LOGIC Season1/2』
販売 SCE 開発 CHUNSOFT

ソフトハウス的にはむしろベストにあるべきメーカーなのだが、
完成度は低くても革新性が高く、シリーズ化の素養もありなゲーム内容は間違いなくこちら。
ミステリーゲームというジャンルは長らく選択肢やクイズ形式で推理を表現するため、
多かれ少なかれ「推理のストーリー的な誘導」が行われ、
純粋な推理力を求められないというゲーム上の問題を抱えていたのだが、
本作は小説中のキーワードを組み合わせることによって「推理」を表現する、
ストーリーの誘導から解き放たれたゲームシステムが採用され、
このシステムでオムニバス長編をここまで本格的にやった作品はなく、
中古やネタバレ対策という意味を持ったキャンペーンを含め、革新性に満ちていた。

ただしゲームとして粗が大量にあったのも確かで
例えば推理不能になった場合や、表現したい組み合わせが解らない場合、
キーワードの当たりをつけ総当たりを強要されるゲームデザイン的な欠陥、
ストーリーと犯人当て小説の分離など、気になる点も多かったのも確か。
ゲームシナリオとしてではなく、犯人当て小説として小説家が参加できるため、
今までのゲームと比べ参加する作家も多様性が期待できるだけに、
何年かに一度のお祭りとしてブラッシュアップしつつのシリーズ化に期待したいタイトルだ。

PSP『TRICK×LOGIC』(レビュー)

関係ないがチュンソフトのゲームが2年連続というのは、どうなのだ。
美少女・乙女をカバー範囲外にしている上に、
受賞傾向を固めすぎるとアワードやってる意味がなくなるぞ。

セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~密室のサクリファイス
(候補 『セカンドノベル 彼女の夏、15分の記憶』『密室のサクリファイス』)

【ADVENTURE KENKYUDOKORO Award 2010】

ゴースト トリック
DS『GHOST TRICK』
販売・開発 CAPCOM

今年はデキ的に『GHOST TRICK』と『ダンガンロンパ』の一騎打ちと言って問題ないだろう。
部分的に切り取れば凡作にも傑作にもなるその荒削りさこそキモの『ダンガンロンパ』に、
どこを取っても安定した完成度を誇る『GHOST TRICK』と言った感じで、
立ち位置では相反するタイトルだが、どちらも高いレベルの作品なため、
2010年を語る上でこの2作は後年欠かせない存在になるのは間違いない。

ただ、『ダンガンロンパ』は全体の粗さ『GHOST TRICK』はゲームとしての地味さという点で、
短所がハッキリしているだけに今年の代表作として語るのには決め手に欠く印象が強い。
あえて今年の顔となる作品を決めれば…と選考した場合は『ダンガンロンパ』がそれだが、
実験的なシステムに尖りすぎた世界観はプレイヤーにえり好みが生まれてしまうため、
『GHOST TRICK』は完成度が高さから、万人がプレイして平均して評価されると判断してこちらに。
いや別にダブル受賞でも良かったのだんだけどな…。

【総括】

ここで取りあげていないタイトルを含め、全体的な質ではここ5年で一番充実していた印象。
状況的には1999年のPSからPS2へハード移行直前に、良作が続出した時期と似ているが、
ハードとして円熟したDSよりも、PSP市場で注目すべき作品が多く登場した点で興味深い。
逆に言ってしまえば、DSは既にスペック的にも市場規模的にも
ユーザーが望むものの限界を迎えていた…と言っても良いのかもしれない。
そういう意味では『GHOST TRICK』は最後の打ち上げ花火だったというのが個人的な解釈。
(勿論、来年にもDSでは大作や小品が発売予定だが、
本格的なオリジナル作品は、今後3DSへ舵取りがなされるかと思われるため。)

市況全体は昨年と同じく据置機に元気がなく、携帯機がメインに替わりがなかったが、
ライト層に訴求できるアドベンチャーが殆ど見かけなくなってしまったため
パイが大きなヒット作は登場せず、メインのはずの携帯機でも影が刺すこととなった。
来年はDSが『逆転検事2』『ミステリールーム』の2作で最後の輝きを見せるだろうが、
それ以降はほぼ間違いなく減退傾向に歯止めは効かないはず。
肝心の3DSについてもキラーコンテンツが揃うであろうハード発売2年目辺りまで、
商業的に期待できないため、ライト向けのアドベンチャーは厳しい日々が続きそうだ。
期待したいのは今年少しずつではあるが成長しているPSP市場で、
『コープスパーティBS』『Black Robinia』の様な注目タイトルが昨年のヒットに続けれるか、
そして『ダンガンロンパ』の追従になれるタイトルが現れるかなど、コア向けのタイトルに期待。
据え置き機ではXBOX360向けに『CODE_18』『Phantom -Phantom of inferno-』など、
科学シリーズ、はっきり言えば『Steins;Gate』の文脈上にあるゲームが既に発表済みで、
その本流である5pb.自身からも新作『Robotics:Notes』も発売されるため、
これらのセールスが、単なるギャルか、あるいはストーリー系か、この路線は勝負年になりそう。

【コメント】
上位グループのはっきりしていたので、全体的にビタッと決定できた年でした。
ついでにプレイ自体は今年だったが、去年のアド研アワードは『Steins;Gate』で問題ないです。
後出しじゃんけんみたいなアワードだな。おい。