BLの嵐´・∀・)`・3・) *'◇').゚ー゚)`∀´)妄想小説@櫻葉 -2ページ目

BLの嵐´・∀・)`・3・) *'◇').゚ー゚)`∀´)妄想小説@櫻葉

嵐さんが好き、ただただあいばさんと櫻葉を愛でる小市民。腐ってるので閲覧注意((`・3・´人 ‘◇‘*))
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右にあるのは星のシャワー


左にあるのは月明かり









***








「や、別にこれといって用事はないんだけど」

「そうなの?」

……やっぱ嘘、ホントは会いたかったから電話した。ちょっとだけ飲まない?」



まるで安い口説き文句だな──

と、放たれた言葉を自分の耳で拾った瞬間、我に返りスマホを握りつぶしかけた。



「いや! ただ! 顔みたいなと思って?」

「ふふっ、昼間にさんざん見てたのに」



ごもっともだし、今の弁明もアラフォーの発していい類の台詞じゃなかった気がする。

予防線も張らずこれといった説明もなく、素直な心を丸ごと投げ渡そうとした己に内心ひどく動揺した。


声を聞いたら口が勝手にとか、言うつもりのなかった言葉までついうっかり、とか。


そんな無計画さとは縁遠いはずの自分にだって、電話口の相葉くんは「わかった」と屈託なく笑ってくれる。

邪推したり裏を探ろうとはしてこない。

ピュアでおおらかで、相変わらず心配になるほど良い人だ。



「ちょうどお風呂出たとこだったから頭乾かしたらそっち行くね。あ、そうだ翔ちゃん」

「な、なに?



南の島マジックは冬でも有効なのだろうか。


気が弛んでるというか浮き足立ってる自覚がある。人肌恋しいような気持ちもあるし…

こんなときに俺、相葉くんと二人っきりで飲んでなにかあったらどうしよう。


いや二人っきりって。男同士のなにかって何?



「あのねぇ、」



言い淀む彼にドキリとする。もしや相葉くん、俺とのサシ飲みは気分じゃない?


ロケ隊のみんなも呼びたいとか言われたらなんて言って断ろう。なにかしらそれらしい理由をつけてやめさせたいけど、

それは別に変じゃないよな? 普通だよな??


だって当然、部屋飲みするなら相葉くんと二人っきりの方がいいに決まってるし。

別になんにもしないけどせっかくの機会…


いやだから二人っきりて! なんにもって何!?



「んふふ。今オレらおそろいだよ」

「おそろい?」

「うんおそろい。あ、たぶんうちの親父も」



電話の向こうでひとりくふくふ笑っている。

今日はツーシャンしてみましたと鼻歌交じりに付け足されてあまりの長閑さに脱力した。



「そんじゃあ後でそっち行くね。あ、ルームサービスに泡盛ってあるかなぁ?」



「うん」とも「どうだろう」とも返事をしないうちに、おつまみはオレが持ってくねと軽やかな調子で通話は切れた。

明日は朝からフライトなのに、寝るタイミングを見失いそうで恐ろしい。







分厚い雲がすべるように明るい空を浮遊する。


ご時世につき、観光客こそ少ないものの南国の夜は賑やかだ。

酔い醒ましに細く開けた窓からは潮騒を運ぶ風の音が途切れることなく聞こえてくる。



「今日はホントにお疲れ様。移動もあったし慣れないことしたから疲れたでしょ?」


「いやぁ、ガチで貴重な経験だった」

「くふふ、顔がもう眠そうだもんね」

「俺はまだ全然。相葉くんの方こそ俺の数倍体動かしてるし眠いんじゃない?」



湿った匂いを連れた風が、火照った頬を優しくなでて熱を冷ます。


海辺のリゾートホテルはバブル期に建てられたままリノベーションされていないのか、蛍光灯の白い光が目に刺さって少し眩しい。

眩しいけれど、変に雰囲気を出すのも憚られて照明はあかあかとつけたまま。

間接照明だけにする勇気は俺にはない。



「相葉くんのフィールドでさ、相葉くんが培ってきたものを見せてもらって初めての体験もいろいろさせてもらってさ、

いやぁマジでよかった。贅沢な時間だった」



本当に尊敬すると重ねて言えば面映ゆそうに目を伏せる。



「そんな、オレなんか全然だよ。みんなに比べたらやっぱり技術も足りないし…」

「いや、技術的なことじゃなくてさ。本職でもないのにあれだけ出来るのもすごいと思うけど、そもそも続けてきたのがすごいんだから」



言い募る俺に背中を丸めて俯いてしまう。そんな、申し訳なさそうな顔しないでほしいのに。

ただ喜んでもらいたいだけなのに伝わらなくて、困らせてしまうのが歯がゆくて、溜め息を誤魔化すためにウイスキーに口をつける。



「優しいもんな相葉くんは。すごいよ」

「…翔ちゃん?」



洗いざらしの髪がさらりと耳から滑り落ち、日に焼けた肌に長いまつ毛が影を落とす。


いつも元気な、花のような、太陽のような人だからそのギャップのせいなのだろうか。

物静かで控えめな彼の本質に触れるたび昔からどうにも落ち着かない気分になった。



「すごいのはオレじゃなくて翔ちゃんだよ…

翔ちゃんが分かりやすく言葉にしてくれたおかげでオレの言いたかったことがたくさんの人に伝わったと思う。ありがとね」


「いやマジで、すごいのは相葉くんの姿勢だし、積み重ねてきた努力なんだって」



自分に自信がないわけではないだろうが、この人の自己評価は俺に言わせりゃ低すぎる。


もどかしさのあまり相葉くんの手首を掴んで力をこめる。

小さな擦り傷だらけの腕に切なくなったが、これを可哀想がられるのはきっと彼の本意でないだろうからじっと目を見て。


「……すごいよ、いつも頑張ってると思う」


酔いも手伝っていつになく力説する俺に驚いたのか、相葉くんはぱちくり目を瞬いてこそばゆそうにくすくす笑う。



「翔ちゃんていつもオレのことすごい褒めてくれるじゃん? オレさぁあれホント嬉しいの」



ありがとうと、まばゆい笑顔を向けられて思わずその場で仰け反りかけた。


いやいや俺の方こそ逆に、こんな機会もらえて感謝だよ。南の島だし二人乗りできたし、しっかり番宣もさせてもらったし。

そんなふうなことを口の中で唱える俺を相葉くんはにこにこしながら眺めている。



「翔ちゃんとゆっくり話せてよかったよ。年末忙しいし遠方でロケでもない限りわざわざ時間とれないもんねぇ」

「まぁ、そうだな」



なんとなく気恥ずかしくなって杯をあおる。氷が前歯にごちんと当たって地味に痛い。



「どうしよっか、そろそろお開きにする?」

「あー……だよな」



夜も深い。が、解散して眠るには少し惜しい。

少しというか多大にというか、惜しいというかもったいないと云うべきか。


これで最後ねと取り決めて交わしたグラスはお互いすでにからっぽだったが、

まだもう少しだけ手を伸ばせば触れられる距離に居たいのもきっと片方だけではないはずで。


自分から言い出すつもりは無かったけれど、叶うのならばあと少し。



「でもせっかくだしさ、あと一杯くらいのんじゃおうよ。ダメかな?」

「ダメかなって氷入れながら何言ってんだよ」



こつんと額を小突いてやれば、確信犯は笑いながらベッドの上に退避する。

俺の返事を待たずに新しい酒を作りはじめた相葉くんに自室に戻る気はなさそうで、自然と目尻が下がってしまうのは許してほしい。



「まだまだ飲む気マンマンじゃん。ははっ、部屋まで自力で帰れんの?」

「んー? ここで寝かせてもらうからいいの」


……ダメだろそれは」

「えぇぇ、なんで?」

「なんでもです」



「ん、サンキュ」手際よく作られたおかわりを受け取ってちびりと唇をしめらせる。

ハイボールのお礼に髪をクシャッと混ぜてやれば、嬉しそうに瞳を細めた相葉くんは俺の肩にこてんと頭を乗せてきた。



「もっと撫でて。んふふ、犬っておなかとか撫でてあげたらよろこぶんだよ」

「お前なぁ…犬と同じなの? どこ、ここ?」



首というか頬をむにっと保定して、脇腹の辺りをわしゃわしゃ撫でて可愛がる。


くすぐると言った方が正しいかもしれない。

現に相葉くんは涙目になりながら手足をじたばたさせて、笑いころげながらシーツの上に倒れ込んだ。



「あーふふっ、楽しいねぇしょおちゃん」

「こぉら、寝るなら自分の部屋戻れよ」

「なんで? いっしょに寝よ?」



見上げられてグサリと心臓に矢が刺さる。

矢尻の形、ハート型だったらどうしよう。



「やだよ酔っ払い。ほら行くぞ。立てるか?」

「ううっ、つめたい。オレの櫻井くんなのに」


「そうだよ。お前の櫻井くんだよ。だから少しくらい言うこと聞いてくださいね」



我ながら酔っ払い相手に何を言ってるんだと苦笑する。もしかしたら自分も、自覚がないままかなり酔っているんじゃないか?



「ズルいよな…たとえ俺がお前のものになってもお前は俺のにならないんだろ?」

「え?」



心臓がうるさいくらい早鐘を打つ。


日中慣れないことをして疲れたせいか普段よりアルコールの回りが早くなって、

ただでさえ胸が苦しいのに相葉くんが──



「しょうちゃんが欲しいなら、オレのことしょうちゃんのものにしていいよ?」

「ばか、なに言って…こら待てっ!」



幻聴を疑うより先に、くちびるに柔らかいものが重ねられてベッドに沈んだ。


硬直したままの俺を見下ろして、相葉くんは淋しげに首を傾げて「待って」いる。

犬みたいでかわいいな……なんて眺めているとぺろりと鼻先をなめられて瞠目した。



「マジで待て、いきなりなに考えてんだ」

「マテばっかりはもう嫌だよ…翔ちゃん、もしかして玉なしなの?」

「とんでもないあおりだな……あるわっ!」



誰だよ、こいつのことピュアで良い人すぎて心配になるとか言ったやつは。俺か!

南の島マジックは冬でも有効だったらしい。



「今さらこんなこと、どのタイミングなんだ」

「今だからってこともあるんじゃない? ほら、景色とかも超キレイだし」



景色とこの状況になんの因果があるんだと、振り仰いだ絶景に息を飲む。


月明かりで光る波。

天を埋め尽くす星の群れ。


美しい島の夜明けを予感させる空だった。

こんな満天の輝きを見せられたら、なかったことにしたくても忘れられるはずがない。



「相葉くん、実はあんま酔ってないだろ?」

「…うん。二人きりで緊張してたからかな」



朝日が水平線から顔を出したらあっという間に、砂浜も海も燻ったままの想いだって燃えるような赤に染めてしまうだろう。


なかったことにしたくないなら…

あと数時間で朝が来る、その前に。



「あのさ、もしよかったらなんだけど」



星と月と、やわらかな間接照明の照らす中。

シャンプーの芳るちいさな頭を抱き寄せて「俺のになって」と囁いた。















おわり