どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、東京ステーションギャラリーで開催されているのは、

“どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより”という展覧会。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております)

 

 

こちらは、2022年にフランスのパリ日本文化会館で開催され、

好評を博した“いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし”展のパワーアップver.で、

江戸・東京に暮らした人々と、動物の関わりにフォーカスしたものです。

なお、出展作品は250点以上!(前後期入替あり)

その大多数が、江戸東京博物館のコレクションで構成されています。

 

一口に、人々と動物の関わりといっても、

紹介されているアイテムは、実に多種多彩。

動物が登場する浮世絵もあれば、

 

歌川広重《名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣》

1857(安政4)年、東京都江戸東京博物館蔵 (注:展示は5/28~)

 

 

動物がデザインされた着物、

 

 

 

動物型のお菓子道具もあれば、

 

 

 

動物をモチーフにしたおもちゃも数多くありました。

 

 

 

動物が身近な存在であるのは、

おそらく今も昔も変わらないわけで。

動物に関するさまざまなアイテムがあることに、何ら違和感を覚えませんが。

実は、幕末から明治に関して言えば、

日本人が動物を当たり前に過ごしている日常は、

海外の人々からすれば、特異なものに映っていたそうで。

展覧会の冒頭では、大森貝塚を発見した動物学者、

エドワード・S・モースの次のような言葉が紹介されていました。

 

「何度となく人力車に乗っている間に、

 私は車夫が如何に注意深く道路にいる猫や犬や鶏を避けるかに気がついた。

 また今迄の所、動物に対して癇癪を起したり、虐待するのは見たことが無い。」

 

そういえば、ちょっと前に、ハトをひき逃げして逮捕されたタクシー運転手はいましたっけ。

今まで意識したことはなかったですが、

それに憤りを感じられるのは、日本人だからなのでしょう。

パリから凱旋帰国したこの展覧会を通じて、

日本人と動物の深い関係に、改めて気づかされました。

思わぬ形で、日本人で良かったと実感させられた展覧会です。

星星

 

 

さてさて、本展ではいろいろなトピックが紹介されていましたが、

中でも個人的に印象的だったのは、明治の初頭に起きたウサギ飼育ブームでしょうか。

交配による品種改良も進み、

人気が高い毛並みのウサギは、高値で取引されていたそう。

会場では、明治6年に発行されたウサギの番付表が展示されていました。

 

 

 

それほどブームになったのであれば、

さぞかし、可愛いウサギだったのだろうと思いきや。

 

 

 

当時の浮世絵に描かれたウサギは、皆一様に目つきが悪かったです。

悪魔に操られているかのような表情を浮かべていました。

ブームが長続きしなかったのも、妙に納得です。

 

また、飼育と言えば、時代をさかのぼって、

江戸時代後期のある催しを描いた屏風も紹介されていました。

 

《鶉会之図屛風》 江戸後期、東京都江戸東京博物館蔵

(注:展示は5/26まで)

 

武士や僧侶、町人といった、

さまざまな身分の人々が一堂に集まって、

自慢のペットのウズラの姿や声の美しさで競う、

「鶉合(鶉会とも)」というイベントの様子が描かれています。

そう、江戸時代には、ウズラ飼育ブームがあったのだとか。

もっと見栄えがする鳥は、他にもっといるような気もしますが。

こんなにもフィーチャーされていた時代があっただなんて。

きっとウズラの人気のピークは、江戸時代だったのでしょう(←?)。

 

また、飼育といえば、動物園に関する作品も紹介されていました。

こちらは、東京における動物園の走りともいうべき、

浅草に店を構えていた「しか茶屋」を描いた浮世絵です。

 

歌川豊国《しか茶屋》 1792-93(寛政4-5)年頃、東京都江戸東京博物館蔵

(注:展示は5/26まで)

 

 

巨大な檻で飼われていたのは、鶴や孔雀といった鳥たち。

客はお茶を飲みながら、その様子を見て楽しんでいたのだそうです。

猫カフェの発想が、すでに江戸時代には存在していたことに衝撃を受けました。

 

そうそう、衝撃と言えば、1860年に横浜に舶来し、

その後、江戸で見世物になった虎を描いた浮世絵も。

 

 

 

野生がすぎるって!

ただでさえ、当時の江戸の人々にとって、

生きている虎を観るのは初めてだったでしょうに。

その初見がこれだと、刺激が強すぎたことでしょう。

というか、よくよく観たら、虎と言いつつ、描かれているのは豹です。

実はこの当時、「虎の雌ver.=豹」と信じられていたのだとか。

それもまた衝撃的な事実です。

 

 

ちなみに。

本展は、東京ステーションギャラリー以外にも、

山梨、愛知、富山の3会場を巡回する予定だそうで。

それぞれの館ならではの番外編が設けられているようです。

東京ステーションギャラリーでは、東京の鉄道馬車について紹介されていました。

明治になって、鉄道が開通したのは周知の事実ですが。

実は、明治15年から約20年間だけ、

東京の市内には、鉄道馬車なるものが走っていたそうで、

東京市街の主要地を結ぶ重要な交通インフラだったようです。

番外編会場では、そんな今はすっかり忘れ去られてしまった、

鉄道馬車をモチーフにした浮世絵や絵葉書の数々が紹介されていました。

 

 

 

それらの中には、こんな作品も。

 

 

 

こちらは、実際に運用が始まる前に、

想像ベースで、鉄道馬車の様子を描いたもの。

2頭の馬が、3両以上の車両を引いています。

冷静に考えて、そんなわけあるかい!

 

 

 ┃会期:2024年4月27日(土)~6月23日(日)

 ┃会場:東京ステーションギャラリー
 ┃https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202404_dobutsu.html

 

~読者の皆様へのプレゼント~  
“どうぶつ百景展”の無料鑑賞券を5組10名様にプレゼントいたします。  
展覧会名・住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。  
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/ 
なお、〆切は5月20日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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