生命の交歓 岡本太郎の食 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

今さらですが、皆さま、今年のGWはいかがお過ごしでしたでしょうか?

自分は、川崎市岡本太郎美術館を訪れました。

そしたら、岡本太郎がデザインした宇宙人、

映画『宇宙人東京に現わる』に登場するパイラ人がいました。

 

 

 

その奥には、母の塔。

さらには、こどもの日にちなんで、

大量のTARO鯉が吊り下げられていました。

さすがはGW。

世界観も大渋滞していました(笑)。

 

さてさて、そんな川崎市岡本太郎美術館では、

現在、“生命の交歓 岡本太郎の食”が開催されています。

 

 

 

こちらは、「食」という切り口で、

岡本太郎という人間に迫る展覧会です。

例えば、《森の掟》のように、食べるという行為が直接描かれた絵画があったり。

 

 

 

また例えば、食堂や市場、食材など、

食に関する岡本太郎の写真の数々が紹介されていたり。

 

 

 

あるいは、太郎がデザインを手掛けた食器といったものも紹介されていました。

 

 

 

それらの中には、 「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」のCMで知られる、

キリンのウイスキー、ロバートブラウンのノベルティ『顔のグラス』ももちろん含まれています。

 

 

 

また、珍しい展示物としては、

これまでまとめて展示される機会がなかったという、

茶碗も含めた陶芸作品が一挙公開されていました。

 

 

 

きっと、岡本太郎のことなので、

茶碗も原色を多用しているのだろう、

と思っていたら、いい意味で裏切られました。

茶碗はちゃんとシブい感じで仕上げられています。

 

 

 

ただ、絵付けのセンスは、やっぱり岡本太郎。

中には、「猿」の一字が書かれた茶碗なんかもありました。

 

 

 

ちなみに。

1955年には、裏千家の機関紙の企画として、

青山の自宅にて、茶会を開催したこともあるようです。

 

 

 

その際に客人に振舞った懐石料理のメインは、

刻んだ生肉の上に生卵を乗せたタルタルステーキだったとか。

茶会の長い歴史の中で、タルタルステーキを振舞った亭主はきっと岡本太郎だけでしょう。

なお、この日の客の一人だった丹下健三が献立を記録していたようで。

「ありきたりのスープ、カリフラワー、

俗に言う腐った豆腐、生肉の目玉あえ、おでん、筍めし」とあったそう。

ありきたりのスープと、俗に言う腐った豆腐という表現が気になって仕方がありません。

 

茶会での懐石料理こそ、不発に終わりましたが(?)。

美食家の両親のもとに育っただけに、

岡本太郎自身も、食へのこだわりが強く、料理も得意にしていたのだとか。

その証拠に、一度や二度どころでなく幾度も、

雑誌や新聞に、料理のレシピが取り上げられていたようです。

 

 

 

展覧会ではその一部が紹介されていましたが、

何よりも驚いたのは、レパートリーが豊富だったこと。

くわえて、ニヨツキ・ア・ラ・オカモトとか、

タローステーキなど、料理名に自分の名前を付けていたことです。

 

 

 

なお、紹介されていた記事の中には、

文章でレシピを紹介しているだけでなく、

太郎自身が、実際に調理しているものもありました。

 

 

 

冷静に考えて、誰に何をさせているのでしょう??

よくぞこんな企画が通ったものです。

令和では考えられない気がします(笑)。

 

 

岡本太郎と食。

正直なところ、あまり結びつかないイメージでしたが、

いやいや、これほどまでに食にこだわった芸術家だったとは!

20世紀の鬼才、ダリも料理好きで知られていますが、

本展を観れば、岡本太郎はそれを上回っているのは明らか。

岡本太郎の新たな一面に気づかされる展覧会でした。

星星

 

 

ちなみに。

本展の出展作品の中で、

個人的にもっとも「食」を感じたのが、こちら↓

 

 

 

うっかり近づくと、食べられてしまいそうな予感。

粘液のようなもので、長い時間をかけ、

獲物を溶かして食べるタイプの怪獣です(←?)。

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ