ポスト冷戦構造
イデオロギーからアイデンティティへ
民主主義VS共産主義から民族間対立の時代

『文明の衝突』

ポスト冷戦の世界においては、イデオロギーに代わり異なる文明間の衝突が主たる紛争要因になるという主張で、アメリカの政治学者S.ハンチントン(Samuel P.Huntington)が唱えた。世界の文明圏を中華、日本、ヒンズー、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、アフリカの八つに分類し、西欧対非西欧の対立、とりわけ西欧文明とイスラム文明の対立は激化し、和解はないとする。アイデンティティーや宗教などを国際社会の分析の主な要素とする新たな理論的可能性を示す一方で、自由主義対社会主義という冷戦型の二項対立が解決した後も、さらに世界を二項対立の原理でとらえようとするアメリカの政治思潮の危うさも示している。