日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書


2004年10月14日 http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html

(仮訳)

 ブッシュ大統領と小泉総理大臣は、規制改革・競争政策に関する分野別および分野横断的な問題に焦点を当て、経済成長や市場開放を促進するため「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)を2001年に設置した。今年で4年目を迎えたこのイニシアティブは、日米間の貿易と経済関係をさらに強化する役割を引き続き果たしている。

 米国は、小泉総理大臣の思い切った経済改革の課題を強く支持しており、その 課題への取り組みにより促された最近の日本経済成長を歓迎する。また、米国は2004年10月12日に小泉総理大臣が国会における所信表明の中で、「構造改革なくして日本の再生と発展はない」ことを再確認し、日本が意義ある経済改革を達成する努力を継続していることを歓迎する。さらに米国は、広範にわたり規制と構造改革を強く主張してきた規制改革・民間開放推進会議の任務を更新し強化した日本の決定を称賛する。

 本要望書に盛り込まれた提言は、主要分野や分野横断的課題に関わる改革措置を重視しており、現在の日本の経済成長支援および日本市場の開放促進を目的としている。さらに、米国は、通信、情報技術(IT)、医療、エネルギー、競争政策など、小泉内閣が改革に重要であると位置付けた分野の問題に焦点を当てる努力をした。

 本年の要望書において米国は、日本郵政公社の民営化計画が進んでいることを受け、勢いを増している日本における民営化の動きに特段の関心を寄せた。これに関して、日本経済に最大限の経済効果をもたらすためには、日本郵政公社の民営化は意欲的且つ市場原理に基づくべきだという原則が米国の提言の柱となっている。

 米国は、地方レベルで構造改革および規制緩和を通じ成長を促進する画期的な取り組みとして、日本の構造改革特別区域制度を引き続き支援する。また米国は最近の日本の独占禁止法強化に向けた努力を歓迎するとともに、そのためには現在検討されている措置の早期施行をこの提言の中で要望し、日本が着実に独占禁止執行制度を改善することを支援する。さらに米国は、増加する農業分野における規制障壁への対応に向けた提案措置を初めて含めた。

 提言の概要と詳論に盛り込まれた要望事項は、規制改革イニシアティブの下に設置された上級会合および作業部会における今後1年間の議論のたたき台となるべく日本政府に提出された。これらの会合により、大統領と総理大臣へ提出する第4回年次報告が作成され、両国政府が講じる改革措置も含め、本イニシアティブの下で達成された進展が明記される。

 改革イニシアティブの最初の3年間では、民間部門の代表が作業部会に参加し、広範にわたる問題に関して貴重な専門知識を提供し、所見を述べ、提言を行った。米国は今後とも引き続き積極的に同イニシアティブへの民間部門の参加を促すため日本と協力する。

 米国政府は、日本国政府に対し本要望書を提出できることを喜ばしく思うと同時に、日本からの米国に対する改革要望を歓迎する。


提言の概要

電気通信

 この数年の間、日本政府が政策及び規制改革の促進に尽力したことで具体的な成果がもたらされ、電気通信の重要分野において競争が大幅に促進された。DSL、FTTH、VoIPを含めた、数々の革新的な技術や安価な先進的サービスが実施された事からこれは明らかである。2004年4月より実施された電気通信事業法の改正もまた、この分野の競争的な環境を改善した。

 競合する事業者への要求が著しく緩和された一方で、米国は、総務省が支配的な事業者の規制及び競争のセーフガードを一層強化するよう提言する。このような措置なくして、競合する事業者(国内及び外資系事業者)が、NTT東西及び携帯電話事業者に比べて、魅力的な代替サービスを提供する事は依然として難しいままだろう。さらに、既存の事業者の利益となるような規制が不公平に決断されないよう、更なる透明性と説明責任の強化が必要である。総務省は、先進的な無線サービスの中でも特に周波数に関連した分野について、免許が必要か否かに関らず、より透明性が高く競争を促進する方策を実施することで、競争的な環境を大幅に改善出来るだろう。

 昨年の進展を受け、電気通信作業部会が引き続き政府及び民間部門から専門家を招いて、新規の、又、双方にとって重要な課題に対し所見を述べる事を米国は提案する。更に米国は、2005年に日本が以下の改革を実行するよう提言する。

提言の概要

· 独立した規制:規制機能を省庁の管轄から独立した機関へ移行し、NTTの経営意思決定への総務省の介入を廃止する。

· 透明性の促進と説明責任:総務省の規制及び政策判断への民間の参画を増やし、規制判断の見直し及び司法上の再審理が促進されるよう取り組む。

· 競争セーフガードの強化:市場力を持つ事業者による弊害を避けるための支配的事業者に対するセーフガードを強化する。

· 固定系相互接続:2003~2004年の相互接続料算定方法の構造的欠陥を解決することで、コストに基づき妥当な相互接続料金の実現を促進し、その結果効率的な競争を促進する。

· 携帯着信料金:NTTドコモのネットワークへの着信料金が、妥当で競争的な水準であるか否かを検証し、小売料金設定における差別を排除する。

· 電波政策:日本の電波管理政策及び業務(免許付与、周波数割当て、試験及び利用料に関するもの等)がより透明性を持って運営され、技術の革新と事業間の競争そして(免許が必要か否かに関らず)有効な電波利用を促進し、技術的中立性の原則が確実に順守されるよう保証する。

· 端末機器の認証:通信機器分野に於いて貿易の円滑化を促進するため、相互承認協定を日米間で締結する。


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情報技術

 e-Japan戦略に掲げられた「2005年に世界最先端のIT国家となる」という目標を達成するため、日本はここ数年間に数々の規制障壁を除去し重要な進展を図った。この結果、ブロードバンドが広く普及し、世界においても最も安価で最速のブロードバンド利用を可能にするなどめざましい変貌を遂げた。また、民間、政府ともに、ITの利活用を拡大させ手続のオンライン化を推進したため、日本の電子商取引市場は世界でも最も大きな市場のひとつにまで成長した。e-Japan重点計画 2004 (重点計画 2004)は、日本の目標を再確認すると同時に、安全で安心なネットワークの確保、IT利活用の促進、知的財産の保護、コンテンツ開発の奨励、電子政府の利用の促進といった目標の早期達成を目指し、戦略的に優先すべき措置を明確にしている。同計画はまたIT利活用の促進に向けた民間部門の主導的役割や電子商取引のグローバルな性質を認識している。重点計画 2004の中で、日本政府はまた、IT利活用のより急速な拡大を阻む法的およびその他の障壁が引き続き存在することを認識した。米国は、これらの障壁の除去に向けた日本の取組みを支持するが、日本が最大限の柔軟性を民間に与えイノベーションを奨励するには、重点計画 2004の実施に向けて策定する新たな戦略、法律、政省令、ガイドラインが、特定の技術を過度に推進、或は、強制しないことを確保することが大変重要である。(技術的中立性)

 本年の提言は、上記の目標を支援するため、次の事項に焦点を当てた。1)電子商取引を引き続き阻害する法的およびその他の障壁を除去する、2)民間部門の柔軟性、イノベーション、自主規制、リーダーシップを最大限に発揮させる、3)IT関連政策や規制の策定過程および調達改革への民間の参加を拡大させる、4)経済のあらゆる分野でオンライン取引を促進し効率性と安全性を向上させる法制度を構築する、5)国際的慣行に整合する協調的政策を策定する、6)知的財産を振興し保護する。

提言の概要

· 規制その他の障壁:電子商取引を妨げる既存の法律や規制を排除する。新たな法律や政策が国際的規範に沿い、民間部門のイノベーションや自主規制を奨励することを確保する。あらゆる分野での電子的保存やデータ交換に関する柔軟な法的枠組みを構築する。民間部門の要請に対応する、効果的かつ協調的IT政策を策定する。

· 知的財産権の保護:音声録音およびその他の作品の著作権保護期間を延長し、知的財産権の保護を強化する。オンライン上のデジタル・コンテンツの著作権侵害を阻止するためのより強力な施策を実行する。世界、特に、アジアにおける知的財産権の一層の保護を促すため、二国間、地域間、多国間協議の場において米国と連携する。

· ITと電子商取引の促進:個人情報保護法が、国際的規範に沿い、透明性が高く、一貫性のある形で施行されることを確保する。国際的電子商取引を支援するオンライン紛争処理体制を推進する。公的部門のネットワーク・セキュリティ基準や指針が民間部門の十分なインプットとともに、統一的かつ技術的中立に策定されることを確保する。自主規制の原則を奨励し、スパム対策に向けた技術革新を推奨する。

· 政府IT調達:開かれた競争、技術的中立性、透明性および革新的オンライン・サービス・ソリューションの市場アクセスを拡大することに焦点を当て、電子政府に係る情報システムの調達に関して、具体的成果に基づく改革を実施する。


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エネルギー

 日本は、電力小売市場においては2005年までに約63%(2003年の水準の2.4倍)、ガス小売市場においては2007年までに約50%(2003年の水準の1.25倍)まで自由化範囲を拡大するという明確な道筋を作った。これらの改革は、日本が国際的競争力を持つ水準までエネルギー産業コストを削減し、消費者や業務用ユーザーにより経済的な電力・天然ガスの利用を促進する過程において重要な一歩であり、米国政府は歓迎する。

 自由化の数多くのメリットを実現するために必要な前提条件は、透明で信頼性があり、公平で新規市場参入に有意義な機会を提供する真に競争的なエネルギー市場である。競争的な市場を維持するために必要な他の必須要素としては、効果的な監視と当局による規制の実施、また状況を常に査定し、必要に応じて改善を行なう仕組みの開発が挙げられる。

 米国政府は日本政府の改革のプロセスを支持し、また真に競争的なエネルギー市場の確保を支援する意図をもって提言を作成した。これらの提言はまた、家庭需要家までを含むより大きなエネルギー市場の自由化への道筋をつけることを意図している。米国政府はまた、新規のビジネスチャンスを開く鍵であり、転じて競争の促進と革新を通して効率性を高めることになるエネルギー分野における第三者アクセス(天然ガス源へのアクセスを含む)を改善するための新規の追加的手段をとるよう日本に求めている。

提言の概要

· 天然ガス設備への第三者アクセスの拡大:LNGターミナルと導管に対し、非差別的で透明で信頼性のある第三者アクセスを提供する料金構造を含む規制の枠組みを整備する。これは、エネルギー市場の真に効果的な競争に不可欠な前提条件である。

· 新しい電源の機会:コジェネレションや他の小規模電源の余剰電力を市場で販売するための有意義な機会を提供する規制環境を整備する事により、競争とエネルギー効率を押し上げる。

· 市場自由化改革の効果の監視:電力とガスの自由化が市場に有意義で競争促進的な影響を与えることを確保するため、独立した市場監視などの査定および監視の仕組みを整備する。また、市場において不都合が起こった場合にそれを確認し改善する。

· 新規供給者の機会:送電や導管の運営者と関連のある事業者が、関連の無い事業者よりも有利にならないよう、情報共有に関する厳しい行動規範を導入する。

· 送電・配電設備への公平なアクセス:提案されている中立機関(NSO)において、規則と公平性を監督し執行するための手順を整備し、送電網への信頼性のある第三者アクセスを確保するための方策をとり、運営上の分離の導入を検討する。

· ガス分野における公平性と透明性:料金認可の査定や監査の一層厳格な実施のための仕組みを整備、強化する。また、中立・公平な事後監視を行なう。

· 効果的な規制のための資源の増強:効果的な規制機能と監視制度の開発、導入を行なうために十分な資源が提供される事を確保する。規制者と監視者の独立性を確保するための方法を開発する。


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医療機器・医薬品

 日本は、ひっ迫する財政と急速な高齢化に対応するため、医療制度の改革を引き続き推し進めている。注目すべきは、日本における平均的高齢者の医療費は65歳以下のそれに比べて5倍以上で、それが過去10年間に渡り高齢者医療費を年率8パーセント押し上げている。医療機器・医薬品の薬事規制と償還価格制度を改善する事が、日本の医療制度改革の鍵となる要素である。例えば、日本は新たな製品の審査を迅速に行なうために薬事法の改正を行なっている。そして、その目的を推進するため、2004年4月に“医薬品医療機器総合機構”(以下、総合機構)という新たな独立行政法人を設けた。総合機構の予算は、医薬品・医療機器製造業者からの増加した手数料で補完されており、同機構は薬事承認を迅速化するという重要な目標を設けた。それに加え、厚生労働省は日本の医療機器・医薬品産業の国際競争力の強化を目的とする計画の概要“産業ビジョン”を公表した。厚生労働省は、その中で、革新の価値と償還価格が革新的な研究開発投資に与える影響について認識している。

 しかしながら、米国政府は日本政府に対し、その医療政策を達成するためには、医療機器・医薬品に関する薬事規制と償還価格に問題を引き続き解決する努力を活発に行うことを求める。例えば、薬事承認の継続した遅れは、日本でビジネスを行う際のコスト増につながり、患者の革新的な製品への早期アクセスを否定する。それらの革新的製品は、医療の質を高め長期的に医療費削減に貢献するものである。また、日本の償還価格制度は革新性を適切に評価していない。その結果、業界の日本における研究開発を抑制し、国際競争力を改善するという日本の意欲をも妨げている。米国政府は、薬事および保険償還の政策が、日本での革新的製品の導入を促進するよう措置を講じるよう求める。

提言の概要

· 価格算定改革:医薬品研究や医療技術の進歩に報酬を与え、促進するためにより適切に加算を適応する。革新的製品の価値を十分に認める医療機器・医薬品の価格算定ルールを確立し、革新的で安全な製品をより早く必要とする患者ニーズを考慮する。

· 薬事制度改革:総合機構の立てた重要な目標を順守し、審査と承認を迅速に行なう。総合機構が製品審査の迅速化に成功したかどうかを評価する効果的方法を、業界との対話を通じ確立する。海外監査や工場査察が新製品の承認を遅らせないことを確保する。第三者認証機関による医療機器製造所の監査結果を受け入れる。審査官の専門性を強化する。審査及び安全対策に関連する不服申し立ての過程を確認し明確にする。

· 血液製品:需給計画が海外製品を差別しない事を保証する。血液関連製品に関する事項に取り組むにあたり業界と作業を行う。

· 栄養補助食品の自由化:栄養補助食品の販売規制を緩和する。


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金融サービス

 米国政府はここ数年、日本の金融システムを国内外からの競争に開放する上で進展が見られてきたことを歓迎する。わずか6年前に設立された金融庁は、日本の金融に関する規制の専門性と透明性を着実に高めた。監督、会計基準、規則の透明性の改善や、競争への障壁となっていた数々の規制排除に伴い、日本の金融部門で際立った変化が見られるようになった。外国企業のプレゼンスの高まりをうけ、日本金融市場は基準と参加企業の多様化という面でさらにグローバル化された。

 国際的な基準とベストプラクティスに沿った形で、金融機関に対するわかりやすく整合性のある規制と監督の確立に向けて、日本がさらに前進することは肝要である。また日本は、消費者保護と同様に安全性と健全性を確保する目的に合致するよう、競争への障壁となる不必要な規制を排除する努力を継続することが大切である。金融部門がより効率的になり競争力を持つことは、日本の長期にわたる潜在成長力の強化に向け極めて重要な役割を果たすことになる。

提言の概要

· 金融規制の透明性:より広範で明解なガイドラインの公表やインターネット上に質疑応答のページを創設するなどの方法を通じて、金融法の一連の書面での解釈拡充により、ノーアクションレター制度の設置に始まった進展を継続する。規制制定やガイドライン作成にあたり、金融機関および協会の意見や懸念を慎重に検討し、公開ヒアリングや意見提出の機会を引き続き拡大する。

· 個人情報保護:金融庁の個人情報保護に関するガイドラインが、日本の消費者への斬新な商品やサービスの提供を妨げることなく、プライバシー保護システムの確立に合致することを確保する。ガイドライン作成にあたり、金融機関および協会を含む関係者の意見を慎重に検討する。

· 信託法:兼営法に従って、国内銀行と対等の立場で、外国銀行の支店が信託と銀行業務を同時に従事することを認める。

· 投資信託:投資顧問や投資信託の活動を規定する規制の枠組みを一本化する。投資信託契約の統合を許可し、早期償還の障害を削減する。

· 電子通知:貸金業法が定めるディスクロージャーの要件を電子的通知により具備することを貸金業者に認めることにより、また、貸金業者や借金取りの悪用から消費者を守るために規則を強力に順守させることで、有意なディスクロージャーを確保しつつ、消費者のプライバシーと安全を保護する。

· 確定拠出年金:拠出限度額のさらなる引き上げや事業主の拠出に相応する被雇用者拠出を認めることにより確定拠出年金プランの発展と採用を奨励する。


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競争政策

 積極的な競争の促進は、新規参入および発明を奨励し、効率的で競争力のある会社を育てる経済環境を創造することにより、日本経済の回復を強化する。競争政策の成功は、日本の市場において反競争的慣習を暴き、それに挑戦するための正しい装備が施された強力な独占禁止法(独禁法)および公正取引委員会(公取委)に掛かっている。それはまた、公的財源を絞り取り、日本経済改革の基礎を危うくする談合慣習を排除するための、およびそれらの民営化ならびに規制改革の試みにおいて市場に基づいた競争原理を取り入れるための他の日本の諸官庁からの支援にも掛かっている。最近日本では、独禁法を強化する新たな処置が激しい議論の焦点になっている。一組の処置が、今秋の国会に提出されるものと期待されている。米合衆国は、これらの処置の早い制定を期待していており、日本が同国の独占禁止施行制度をしっかりと改善し続けることを望む。

 よって米国は、日本に以下の処置を講じることを要望する。

提言の概要

· 独占禁止の施行:(課徴金を)実質的に引き上げ、くり返す違反者に対して通常よりも高い行政的罰金(課徴金)を科すために独禁法を改正する。一番目の内部告発者を課徴金および刑事告発から免除する法人措置減免制度を導入し、公取委に犯則調査権限を与え、捜査妨害に対する刑罰を強化する。日本における競争過程を明らかに損なう行為に対し、公取委の捜査に優先権を与える。独禁法違反に対する刑事上の量刑の改善を目指した検討に着手する。独禁法の適用除外の更なる範囲の制限や削除を検討する。公取委の資源、特に経済学の高等学位を持った公取委の職員の数を増やす。独禁法の指針の発布または拡大および経済界に効果的な法人順守制度を奨励することにより、独禁法の順守を促進する。

· 公取委の施行手続きの公平性:審判官を勤める裁判官および弁護士の数を増やす。何故公開警告が行われるべきでないかについて議論する機会を会社に与える。

· 談合の防止:談合の扇動を試みる政府職員に対するより厳しい制裁を含む官製談合に対する処置を強化する。談合を一番目に報告した会社への指名停止を免除し、内部告発者の身元を保護する行政措置減免制度を導入する価値を検討する。総務省による追加的処置と通して地方政府段階で談合に対応する。談合に従事したと確定した会社に対する行政制裁の透明性を改善する。談合を更に困難にするよう設計された新たな入札手続きの採用を検討する。

· 競争の促進:最も競争的な方法で民営化を進める方法について公取委の意見を強く求め、それらが反競争的行為に従事しないことを保証するために、公取委が民営化の過程にある機関を監視することを保証する。分野の改革を検討している検討委員会における公取委の積極的参加を求め、公取委に規制改革・民間開放推進会議の活動を援助させる。


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透明性およびその他の政府慣行

 米国はここ数年、「透明性およびその他の政府慣行」の下、広範にわたる問題を取り上げ、そのねらいとして、公平性、予見可能性、説明責任を確保したより透明性の高い規制制度を日本が確立するよう提案してきた。例えば、過去の要望書の中で、パブリックコメント手続き改善のための提案、ならびに規制緩和の特区設置を通じた地方経済活性化に向けた構造改革特区推進本部の革新的な努力を支持する提言を大きく取り上げた。米国がこの分野における進展を重視していることを示すべく、パブリックコメント手続きと特区に関する改革案を今年の要望書に再び表記する。

 また、この章にいくつか新しく追加した点があり、その一つとして、アジア太平洋地域諸国の法体制においてAPEC透明性基準完全実施に向けて、どのように日米で協力できるかを規制改革イニシアティブのもと考える提案をしている。また、日本が保険商品の銀行窓口チャンネルにおける販売を3年以内に一律に自由化し、顧客に対する保険のダイレクト マーケティングを妨げる規制の緩和を米国は提言する。さらに、米国は日本の農産品輸入の妨げとなっている技術的障害を除去する手段をいくつか提案する。

提言の概要

· パブリックコメント手続き: 意見募集期間は60日間を標準とするか最低30日間の設定を義務付ける。法の拘束力を与えるためパブリックコメント手続きを行政手続法に取り入れる。

· APEC透明性基準 : 米国と共にアジア太平洋地域においてAPEC透明性基準の完全実施に向け努力する。

· 構造改革特別区域(特区): 今後とも透明性が特区制度の中核とされること。市場参入の促進に引き続き焦点を当て、成功した特例措置の迅速な全国適用を優先する。

· 市民参加による法案策定 政府が法案を国会に提出する前の法案作成段階において、一般市民が法案に対してコメントできるよう更なる措置を講ずる。

· 保険の窓販:保険商品の銀行窓口チャネルにおける販売は、3年以内に一律に自由化する。顧客に対する保険のダイレクトマーケティングを妨げる規制の緩和を行なう。

· 共済:保険を提供するすべての共済と民間会社の間の競争条件の同一化を確保する。競争条件の同一化の改革を行なうため、根拠法を有する共済の見直しを始める。

· 農業分野における政府慣行:農産品の輸入を妨げる技術障害を除去する。


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民営化

 米国は、小泉首相の公社・公団の再編と民営化の取組みに関心を持ち続けてきた。この改革イニシアティブは、競争を刺激し、資源のより有効的な利用につながるなど、日本経済に大きな影響を及ぼす可能性がある。米国政府は、日本郵政公社の民営化という小泉首相の意欲的な取組みに特に関心を持っている。日本の郵便生命保険事業と郵便貯金事業が世界最大の生命保険事業者と預金制度にまで成長しているため、これらの事業の民営化は、それぞれの分野で営業をしている会社に巨大な影響を与えると考えられる。2007年に開始予定の日本郵政公社の民営化は、民間の宅配便業者にも大きな影響を与える可能性がある。

 本年の米国の提言の柱は、日本郵政公社の民営化が日本経済に最大限の経済的利益をもたらすためには、意欲的かつ市場原理に基づいて行われるべきであるという原則である。真に市場原理に基づいたアプローチというものは、日本の保険、銀行、宅配便市場において歪められていない競争を確保することを含まなければならない。日本郵政公社に付与されている民間競合社と比べた優遇面の全面的な撤廃は必要不可欠である。これらの優遇面は、米国系企業および日本企業の双方にとって同様に、長年の懸念となっている。経済財政諮問会議は、9月10日に発表した「郵政民営化の基本方針」において、日本郵政公社と民間企業との間の「競争条件」の均等化の重要性を確認することにより、重要な一歩を踏み出した。

 米国は、日本郵政公社と成田国際空港、日本道路公団等の他の組織の民営化が成功することを期待している。これは、複雑で挑戦的な取組みではあるが、効果的に実行できれば日本経済と日本の企業、消費者に大きな利益をもたらすことになる。本年の民営化にかかわる提言の重要項目は下記のとおりである。

提言の概要

· 競争条件の均等化:保険、銀行、宅配便分野において、日本郵政公社に付与されている民間競合社と比べた優遇面を全面的に撤廃する。民営化の結果、歪められていない競争を市場にもたらすと保証する。

· 保険と銀行の公正な競争:日本郵政公社の保険および貯金事業においては、真に同一の競争条件が整うまで、新規または変更された商品およびサービスの導入を停止する。これらの事業に、民間企業と同一の納税条件、法律、規制、責任準備金条件、基準、および規制監督を適用するよう確保する。

· 宅配便サービスの公正な競争:郵便業務の規制当局は日本郵政公社から独立しかつ完全に切り離された機関であることを確実にし、民間部門と競合するビジネス分野における競争を歪曲するような政府の特別な恩恵を日本郵政公社の郵便事業が受けることを禁止する。

· 相互補助の防止:日本郵政公社の保険および銀行事業と公社の非金融事業の間で相互補助が行われないよう十分な方策を取る。競争的なサービス(すなわち、宅配便サービス)が、日本郵政公社が全国共通の郵便事業で得た利益から相互補助を受けるのを防止するため、管理を導入する。

· 完全な透明性:民間の利害関係者が、関係する日本政府の職員と民営化について意見交換を行い、政府が召集する関連の委員会の審議に貢献する有意義な機会が提供されるよう確保する。パブリックコメント手続きの十分な利用を保証する。


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法務制度改革

 日本において必要とされる効率的な国際的法務サービス並びに法的係争を迅速かつ廉価で解決できるメカニズムに答えうる法務環境を創造することは、日本経済の健全性、特に日本市場において安全で効果的な商取引活動を確保する上で重要である。米国は、2003年に日本がいわゆる「外弁法」を改正し、日本の消費者の利益のために、外国弁護士が日本弁護士と自由に提携を結ぶことを可能にしたことを賞賛する。米国は、これらの改正事項が、自由化に向けた改正法の精神とその文言に則って実施されることを期待する。米国は、また、日本国民が紛争を迅速かつ廉価で解決することを助ける裁判外紛争処理手続(ADR)を整備するとする日本のコミットメントを歓迎する。

 これらの理由で、米国は、日本が以下の措置を講じることを要望する:

提言の概要

· 提携の自由:日本弁護士と外国弁護士間の提携の自由を認めた2003年の改正「外弁法」を、2005年4月1日までに完全に実施する;日本弁護士連合会が、その会則・規則を改正法の自由化精神に則って実施することを確保する、特に(i)外国弁護士パートナーは、彼らのいかなる外国弁護士アソシエイトの権限内である外国法事件を受諾できることを妨げない、(ii)日本弁護士と外国弁護士に対して、倫理規則を平等に適用する、(iii)弁護士と依頼人間のコミュニケーションに関する義務を、近代的かつ国際的慣行に沿ったものに限定し、過度に負担となるものとしない。

· 専門職法人とその支所の設立:外国弁護士が、日本弁護士と同等に、また、同等の利益を享受できる形で、専門職法人を設立することを認める;日本で活動する外国法律事務所及び外国弁護士が、日本の専門職法人の設立を要求されることなく、支所を設立することを認める;

· 裁判外紛争処理(ADR)手続:国際基準・慣行に合致するADRの基本的枠組みを採用する、ADRを使用しようとする関係者が、その規則、課程、適用される基準について、彼ら自身で合意することを認める、そして国際的要素を含む全てのADR課程において、外国弁護士が関係人を代表することを認める;非弁護士が、弁護士法違反の危惧や、日本弁護士の監督の必要無しに、ADRプロセスにおいて中立者(すなわち仲裁者、調停者、仲介者)として活動することを認める;いかなるADR免許制度も、完全に自主的なものであり、非免許人ありいは組織によって提供されるADRサービスが適法であることを妨げる効力を有するものではなく、外国人、日本人そして組織に平等に開かれたものであり、さらに、不合理に負担とならない免許及び報告手続・基準を設定することを確保する。

· 外国弁護士の資格基準:日本において行なった原資格国法に関する全ての実務期間を、外国法事務弁護士資格に必要な三年の職務経験要件に算入することを認める。


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商法

 効果的な企業再構築やより良い企業業績は、21世紀の世界経済の中で求められているように、日本がその地位を復権し、経済を再活性化することを助ける。例えば、日本の商法に近代的な合併手法を導入することは、企業再構築や投資を促進することを通じて、経済を強化することに大いに役立つ。さらに、より良い企業統治メカニズムの導入は、生産性の向上や経済的に健全な経営判断を通じて、経営者が株主利益の最大化のために働くことを担保し、企業業績の改善をもたらす。企業統治改善のための鍵は、株主、特に年金基金や信託基金などの大規模な機関投資家による積極的な参加である。米国は、公的年金や投資信託による委任投票の促進など日本がこれまで講じてきた施策を歓迎するが、さらに多くの行動が必要である。また、増大する外国人投資家による日本企業の株式保有を考えれば、外国人株主が委任投票権を円滑に行使できるようにすることも重要である。

 これらの理由で、米国は日本に対して以下の措置を講じることを要請する:

提言の概要

· 近代的合併手法:三角合併、キャッシュマージャー、株式交換、また、ショート フォーム(スクイーズアウト)・マージャーを認めるために必要な合併対価の柔軟化を含め、日本の商法に近代的合併手法を導入するための法案を次期通常国会に提出する;近代的合併手法に対して適切な税制上の措置を提供し、同時に、新しい合併手段の有効性を不当に制限しかねない特異な条件を排除することを含め、日本におけるM&Aを促進するためのその他の必要な措置を講じる。

· 積極的な委任投票を通じた株主価値の増大:厚生労働省の支持のもとで公的年金の運用責任者の委任投票政策を公開すること、また、民間年金基金運用責任者に対して、受益者を代表して委任投票を行使する受託者義務を制定するかについての検討を行なうことを通じて、公的及び民間年金基金の運用責任者による健全な委任投票政策を促進する;信託基金運用責任者が、実際の委任投票に関する記録を公開することを奨励する;代理保管人及び国際的保管人による委任投票行使に関する法律並びに規則に必要な変更を加えることを検討することにより、海外の株主による委任投票権行使を円滑化する。


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流通

 米国政府は日本の新規制改革・民間開放推進3か年計画に流通関係の項目が入ったことを歓迎し、流通分野で規制改革を推進させる日本国政府の今後の努力に期待を寄せる。商品を迅速かつ安価に通関させ、消費者の手に渡るように動かすための有効な手続きは、経済効率向上への肝要な手段である。米国政府は通関手続きの改善や全国におよぶ通関手数料の削減により、日本の国際港の競争力を高めるために日本国政府が取った方策を歓迎する。しかし、経済および消費者益のために、商品の流れを促進するようさらになすべきことがある。それゆえに、米国は日本に対し、国際空港における着陸料を引き下げ、航空券価格および運賃届出制に関する政府規則を削減し、また通関の過程および手続きを改善することを求める。同様にクレジットカード、デビットカード、ATMカードの利用拡大は消費者に対する恩恵とより円滑な経済運営をもたらし、このようなカードによってもたらされた効率はさらにクレジット・カード、デビット・カード、ATMカードの世界的な利用拡大につながった。それにもかかわらず、日本の昔からの店舗やATMでのカードの受け入れが低い率であることは、日本に居住する人々にとって不都合であり、また海外から日本を訪問する人たちの共通の不満である。米国政府は、公立病院のいくつかでカードの受け入れが伸びているという最近の動きを歓迎するとともに、ビジネスによる、また政府サービスの支払いに利用するクレジットカードおよびデビットカードのセキュリティーを向上させ、利用をさらに促進することを要望する。

提言の概要

· 空港着陸料の改革:日本における国際空港の着陸料およびその他の航空会社の空港使用料を直ちに引き下げ、これら料金設定に使用されている計算方法を公表し、パブリック・コメントを募集する。

· 航空会社による航空券の販売:消費者に恩恵をもたらし、日本への旅行客を増加させるため、航空会社の航空券に対するIATA運賃の70%割引下限の実施を取りやめる。

· 30日前の運賃届出制:航空会社による運賃価格設定に関し、市場状況への対応をより柔軟に行えるよう30日前の運賃届出制を廃止し、またダブルアプルーバル(両当事国承認)制度も廃止する。

· 課税計算に関するFOB価格(本船積み込み渡し価格):税関職員の作業を軽減し、日本への輸入コストを低減するために、小額商品の課税計算に関してCIF(運賃保険料込み価格)からFOB価格方式へ移行する。

· 免税輸入限度額:関税定率法による免税輸入限度額を1万円から3万円へ引き上げる。

· 税関手数料の削減:国際物流特区における一定の通関手数料をさらに低減し、ゼロにする。そしてその適応をやがては全国へ拡大する。

· 通関情報処理システム(NACCS):NACCS料金体系の将来のいかなる更改に関しても、通関情報処理センターが利用者のコメントを考慮に入れることを確実にする。

· クレジット/デビットカード:観光を促進し、経済の効率を向上させることにより経済に恩恵をもたらすべく、商品とサービスへの支払手段としてのクレジット/デビットカードの受け入れとセキュリテイを改善させる。


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