機密費:評論家にも 野中元長官、講演で証言 (琉球新報 2010年4月28日)

http://bit.ly/b50gzh

 
野中広務元官房長官は、23日に那覇市内で開かれたフォーラムの基調講演の中で、自身が長官在任中(1998年7月~99年10月)、先例に従い、複数の評論家に内閣官房報償費(機密費)から数百万円を届けていたことを明らかにした。

 野中氏は講演で「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と言って受け取られる」と述べ、機密費からの提供が定期的にあったことを明かした。

 野中氏は自民党政権時代に、歴代の官房長官に慣例として引き継がれる帳簿があったことにも触れ「引き継いでいただいた帳簿によって配った」と明言。その上で「テレビで立派なことをおっしゃりながら盆と暮れに官邸からのあいさつを受けている評論家には亡くなった方もいる」と指摘した。一方で機密費の提供を拒否した評論家として田原総一朗氏を挙げた。

 官房長官の政治的判断で国庫から支出される機密費は、鳩山内閣が昨年11月に内閣として初めて2004年4月以降の小泉内閣から現在までの月別支出額を公表したが、使途については明かしていない。

<用語>内閣官房報償費(機密費)

 「国の事業を円滑に遂行するために状況に応じて機動的に使う経費」とされる。国庫からの支出は年間約12億円で、使途の不透明さが問題視されており、民主党は2001年に一定期間後の使途公表を義務付ける法案を国会に提出した。



官房機密費 使途と支出先の公開を (琉球新報・社説 2010年4月29日 )

http://bit.ly/brh6CU


官房機密費 使途と支出先の公開を
 歴代政権が使途や支出先を明らかにしていない内閣官房報償費(機密費)の実態の一端が、当事者の口から語られた。
 那覇市内で開かれた日本青年会議所沖縄地区協議会主催のフォーラムで、野中広務元官房長官が長官在任中(1998年7月~99年10月)に複数の評論家に機密費から「盆暮れ500万円ずつ」届けていたことを明らかにした。
 鳩山由紀夫首相は、参院予算委員会で「一層の透明化を図っていきたい」と述べ、情報公開を進める意向を示している。当事者が口を開いた今、政府は早期に機密費の使途や支出先を公表し、国民に説明すべきだ。
 機密費は「国の事務または事業を円滑に遂行するため機動的に使用する経費」とされる。取扱責任者の官房長官が政治的判断で国費から支払う。
 2010年度予算案では内閣情報調査室の経費を含め、09年度と同じ約14億6千万円が計上された。将来にわたって使途を明らかにできない。そんな国家予算があること自体不可解だ。
 野中氏は官房長官時代に評論家だけではなく、総理大臣の活動費、国会対策費、参議院幹事長室などに官房機密費を配ったという。
 世間の常識から懸け離れた額にも驚くが、評論家に配ることと官房機密は一体どうつながるのか。理解に苦しむ。評論家に高額の現金を配ることで、政権に有利な発言を期待したのだろうか。
 もし現金を受け取った評論家が、そのことで政府に有利な発言をしていたり、それまでの論調を変えたとしたら由々しき事態だ。民主主義を否定、破壊する行為であると言わざるを得ない。
 野中氏は評論家に官房機密費を配ったことについて「日本の政治のむなしさを思う」と心情を吐露している。「私にすべての責任がある」と認めた上で「新しい政権の下でも続けていくことがないように」求めた。この発言は重く受け止めたい。
 民主党は01年、一定期間後に使途公開を義務付ける法案を提出した。そして今政権の座にいる。
 鳩山首相は機密費を将来的に全面公開する方針を示したが、機密費を扱う当事者の平野博文官房長官は公開に慎重で腰が定まらない。
 時の政権の都合のいいタイミングで、いかようにも使え、第三者機関のチェックすら働かない事態は解消すべきだ。