窮地の鳩山と小沢、この国はどこへ向かう (日刊ゲンダイ2010/4/30)


この国のこれからは、2つの問題の行方で決まる

---生命を賭けている鳩山首相の普天間移設問題、検察に追われ政治生命の最後を賭けている小沢幹事長の参院選---
鳩山首相が「生命を賭して取り組む」と力を入れる米軍普天間基地の移設問題と、検察に追われる小沢幹事長が政治生命を賭けている参院選。この国の命運は、この2つの結果に委ねられている。
基地問題が5月末までに決着し、参院選も民主党の勝利となれば、日本に民主主義を定着させるという難事業にも本腰が入る。逆に、基地問題が難航して、参院選で負けるようなことがあれば、民主党政権に未来はない。国民の将来も真っ暗だ。それだけに、どう解決するのか、気になるのだ。
まずは大新聞とテレビがうれしそうに「成算ゼロ」と報じる普天間問題である。鳩山首相の腹案は、現行案を修正して辺野古に1800メートルの桟橋滑走路を建設する一方で、徳之島にヘリ部隊2500人のうち1000人を移すか、訓練を移すというもの。
自民党が決めた埋め立て方式よりも環境へのダメージが少なく、2000メートルの滑走路がある徳之島を併用すれば沖縄の負担も軽くなるというプランだ。 政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「鳩山首相は、この案で押せるところまで押すつもりでしょう。徳之島が受け入れるかどうかは不透明ですが、沖縄は手土産を大きくすることで解決の余地がある。米国も沖縄から離れることに難色を示しているが、譲歩の可能性はゼロではない。まずは5月4日の沖縄入りを皮切りに、首相自ら懸命にやっている姿を国内外に示し、5月末の決着を目指すシナリオです。いくら動いても徳之島と米国が反対すれば、現行案に戻す。それでダメなら期限延長という考えでしょう」


◇永田町に流れる「徳之島ダミー」説
永田町では「徳之島ダミー」説も流れている。反対運動が沖縄より激しい島を説得するのは難しい。むしろ、その反発を利用して、別の候補地を浮上させるというアイデアだ。
「徳之島とは別の島か、本土の自衛隊基地がターゲットです。実際に鳩山首相は、全国の自衛隊基地にも米国との合同訓練をお願いしたい、と話しています。その上で4年後のグアム移転時に動く海兵隊の数を上積みさせられるとベスト。埋め立て方式にうごめいている利権は潰せるし、自然を守る姿勢もアピールすれば、米国も反対しないでしょう」(民主党関係者)
安保がイチバンの大マスコミや自民党も攻めづらくなる。米国が渋面をつくってくれなければ、「ダメ民主」の根拠は薄れる。むろん、県外移設を実現できなかった鳩山政権の力不足や手際の悪さは批判されるだろう。ただ、反対一辺倒の論調は急速に勢いを失う。鳩山叩きの嵐は弱まり、ひんやりとした北風に変わる。そのタイミングで国民の関心を引く話題を提供すれば、なんとか乗り切れる。そんな計算もあるようだ。
普天間問題は鳩山が辞めれば解決するわけではない。反民主の大マスコミは落ち目の自民党と一緒になって首相のクビを取りたいらしいが、ハナから続投は決まっている。これ以上迷走の可能性は低いのだ。


◇民主党の改選54議席確保は難しくない
2つ目の問題である参院選は「民主党有利」が揺るがない。鳩山内閣の支持率がどれだけ下がろうが、議席数で民主党を上回りそうな政党は見当たらないのだ。
民主党は、18ある2人区以上で確実に1議席を奪取する。29の1人区が五分五分としても、これだけで33~34議席。比例は20近く取れるだろうから、最低でも50議席以上となる。
3年前の60議席には届かなくても、6年前の50議席は超える見通し。改選の54議席確保も難しくない。少なくとも、連立で過半数を確保できるレベルである。
「政治とカネの問題を抱えた小沢さんは、選挙に勝てば、すべてチャラにできると考えています。政治活動は41年、この17年間は自民党をやっつけるために執念を燃やしてきた。見かけ通りヤワな性格ではありません。外国人参政権や国会改革など、政治的な野心も持っている。それこそ目の色変えてやりますよ。それに、世論調査の数字が悪くても、何とかなるのが選挙です。自民党から引きはがした団体をギュウギュウに締め付けるだろうし、公明党も選挙区では民主党支援に回る公算が大きい。連立で過半数割れする危険性は低いし、小沢さんも続投です」(政治評論家・有馬晴海氏)

ライバルの腑抜けぶりも追い風だ。自民党は離党による“液状化現象"でガタガタだ。頼みの組織も公明党も離れていき、無党派層を呼び込む戦略さえ立てられない。
有権者はソッポを向いたままである。◇次の総選挙までの3年間で日本は変わる
舛添前厚労相は、行き場のない連中を集めて大将気取りになっているが、政党助成金目当ての“衣替え新党"に国民はドッチラケである。大阪特区とか打ち出して橋下府知事に秋波を送るが、元妻の片山さつきに本性を暴露されては立つ瀬がない。
与謝野元財務相や平沼元経産相の「たちあがれ日本」は、立ち上がって1カ月もしないうちに色あせてきた。山田杉並区長や中田前横浜市長の“首長新党"も注目は一場の夢。線香花火のように消えゆく運命だ。
「みんなの党の渡辺喜美代表は、47都道府県で候補者を擁立すると息巻くが、組織のない地方の1人区での議席確保は非現実的。2ケタに届けば大勝利というレベルです」(政界関係者)
なんだか負け比べだが、民主党よりも負けない政党はないのだ。

「基地」と「選挙」が片づけば、官僚と族議員と、それに連なる企業や業界が好き勝手やってきた自民党型政治は本格的に崩れていく。既得権益でがんじがらめになった旧体制の解体は進み、国民の暮らしが最優先される国への脱皮が本格化するのだ。
もちろん、政府と連立与党の面々が寝る間を惜しんで働いても、新たな国づくりには相当な時間がかかるだろう。しかし、2つの問題を乗り越えれば、総選挙まで3年という時間が与えられる。反民主の大マスコミがわめいても、じっくり取り組めるはずだ。日本に民主主義が根付くのはそれからである。