参院選投票へ選挙民のジレンマ・もはやここまで鳩山内閣 (日刊ゲンダイ 2010/5/11)

---衆院選の政権交代実現は果たして正しい選択だったのか、鳩山個人の資質が狂っているのが問題なのか、政治や政党などには期待してもムダなのか---

いま、鳩山首相と小沢幹事長は、どういう関係なのだろう。民主党政権を占う上で、ちょっと気になるところだ。
小沢は今月7日、宮崎市での会見で、支持率低迷について「党のトップをはじめ、役員やその他、リーダーシップもあるかと思う」と述べ、初めて、鳩山のリーダーシップを問題にした。大新聞は早速、「小沢氏、首相に苦言」とか騒いでいたが、こう書きたくなる気持ちも分かる。さすがに小沢も鳩山の指導力のなさに呆れているのではないか。いい加減、サジを投げたくなったのではないか。そんな気もしてくるからだ。

小沢の“鳩山見切り説"については、他にも似たようなエピソードがある。毎日新聞が書いていたが、小沢側近の高嶋良充参院幹事長が「(普天間問題で鳩山首相は)幹事長の剛腕に期待しているのだから」と言い、暗に「助けてやりなさいよ」と言ったところ、小沢は「今さら遅い」「首相はまったく相談に来ない」とにべもなかったというのだ。
あまり知られていないが、民主党内でもっとも防衛問題を分かっているのが小沢だ。エキスパートが動けば、少なくとも、今のような迷走はない。しかし、小沢は動かない。毎日によると、「困難な対米交渉に巻き込まれるのを避けている」という。だとしたら、ますます、鳩山窮地である。鳩山、小沢にすきま風ではないか。
小沢はきのう(10日)の会見で、鳩山批判について「私を含め、挙党一致で頑張らなければいけないと言ったつもりだ」と釈明した。毎日の報道についても否定的な見解を示した。
小沢は例によって「マスコミはすぐそうとらえる」と不満を漏らしたが、問題はそう見られてしまうことだ。


◇さしもの小沢もサジ投げた可能性
政治ジャーナリストの上杉隆氏は「もともと、小沢氏は鳩山首相にそんなに期待していない。だから、失望もしていない」とクールに見る。恐らく、そうなのだろうが、それでも2人の亀裂は広がっているように見える。小沢がブン投げたような印象を受ける。それくらい、鳩山のふがいなさ、期待外れ、裏切りが目に付くのだ。


◇鳩山の認識の甘さ、決断力のなさは致命的
2人の亀裂は鳩山の方から小沢を遠ざけ始めたのが起因に見える。反小沢の枝野を行政刷新担当相に起用したころから、微妙に軸足を“脱小沢"に移しているように感じられる。一方の小沢も、ふがいない鳩山に愛想を尽かし、ますますギクシャクしてきたのだろう。そして、小沢が距離を置き始めてからというもの、鳩山の“迷走"が始まるのだ。
目に余るのが普天間移設問題の対応で、「最低でも県外」と公言して沖縄県民をその気にさせながら、今ごろ「党の公約ではなく、党首としての発言だった」なんて言い訳する。沖縄の海兵隊を「学べば学ぶほどパッケージとして抑止力が維持できるという思いに至った」なんて言う。一国の首相がそんなことも知らなかったのか、とア然とするのだ。言葉の軽さ、認識の甘さ、理解力の欠如……と挙げていけばきりがないが、こんな調子だから最近は閣僚にもナメられている。

前原国交相は「参院選は歴史的敗北になる」、仙谷国家戦略相は地元で「遠からず皆さん方が選挙がしやすい環境が必ずやってくる」と言いたい放題。閣僚が鳩山、小沢の辞任をほのめかしているのだから世も末だ。断っておくが、前原は沖縄担当相も兼務する。“当事者"なのに、ブーたれている。それでも首相はクビを切れない。人が良くて、決断力がないからだが、ここが致命的なのである。

◇無為無策の沖縄訪問に周囲も大慌て
こうなると、鳩山内閣がいつまで持つのか心配になってくる。ここにきて、鳩山にマネジメント能力がまったくないことが分かったからだ。大臣を束ねられないだけではない。役人を遠ざけるのはいいが、誰をどう動かすべきか分かっていない。普天間でも側近は官邸に専門家を呼ぶだけで、具体的に動こうとしない。で、「私に任せてください」と言う平野官房長官に丸投げしたら、ウソ八百の言動に沖縄も徳之島もカンカンになってしまった。揚げ句が、首相自らの直談判である。
「あまりに情報管理と人事管理がなっていない」と言うのは政治評論家の浅川博忠氏だ。

「外交・基地問題は秘密裏に交渉を進めるのがセオリーです。それなのに徳之島案などが早々と漏れ伝わり、問題を複雑化させた。岡田外相が嘉手納基地との統合案を強弁するなど、部下のコントロールもできていませんでした。言葉の軽さで自滅しているのも問題です。オバマ大統領に『トラスト・ミー』と言ったり、明言しなくてもいいのに、『5月決着』を宣言し、わざわざ自分を追い込んだ。国の指導者はもっと口が堅く、言葉に重みがなければいけません。タイムスケジュールや展望がなく、すべての行動が場当たり的なのも、リーダーとしての資質に疑問を感じます」
連休中の沖縄訪問も、周囲は止めたのに無視して突っ込んだ。何の策もなく当たって砕けろで、案の定、自沈したのである。それでも鳩山は15日にまた行くというから、周りが慌てて羽交い締めにし、延期が決まった。一事が万事こんな調子なのである。
こりゃあ、この政権はもう持たない。永田町では「ブン投げもあるんじゃないか」「持って次の代表選までだろう」なんて噂が飛び交うのだ。

あまり知られていないが、民主党内でもっとも防衛問題を分かっているのが小沢だ。エキスパートが動けば、少なくとも、今のような迷走はない。しかし、小沢は動かない。毎日によると、「困難な対米交渉に巻き込まれるのを避けている」という。だとしたら、ますます、鳩山窮地である。鳩山、小沢にすきま風ではないか。
小沢はきのう(10日)の会見で、鳩山批判について「私を含め、挙党一致で頑張らなければいけないと言ったつもりだ」と釈明した。毎日の報道についても否定的な見解を示した。
小沢は例によって「マスコミはすぐそうとらえる」と不満を漏らしたが、問題はそう見られてしまうことだ。


◇さしもの小沢もサジ投げた可能性
政治ジャーナリストの上杉隆氏は「もともと、小沢氏は鳩山首相にそんなに期待していない。だから、失望もしていない」とクールに見る。恐らく、そうなのだろうが、それでも2人の亀裂は広がっているように見える。小沢がブン投げたような印象を受ける。それくらい、鳩山のふがいなさ、期待外れ、裏切りが目に付くのだ。
◇鳩山の認識の甘さ、決断力のなさは致命的
2人の亀裂は鳩山の方から小沢を遠ざけ始めたのが起因に見える。反小沢の枝野を行政刷新担当相に起用したころから、微妙に軸足を“脱小沢"に移しているように感じられる。一方の小沢も、ふがいない鳩山に愛想を尽かし、ますますギクシャクしてきたのだろう。そして、小沢が距離を置き始めてからというもの、鳩山の“迷走"が始まるのだ。

目に余るのが普天間移設問題の対応で、「最低でも県外」と公言して沖縄県民をその気にさせながら、今ごろ「党の公約ではなく、党首としての発言だった」なんて言い訳する。
沖縄の海兵隊を「学べば学ぶほどパッケージとして抑止力が維持できるという思いに至った」なんて言う。一国の首相がそんなことも知らなかったのか、とア然とするのだ。言葉の軽さ、認識の甘さ、理解力の欠如……と挙げていけばきりがないが、こんな調子だから最近は閣僚にもナメられている。
前原国交相は「参院選は歴史的敗北になる」、仙谷国家戦略相は地元で「遠からず皆さん方が選挙がしやすい環境が必ずやってくる」と言いたい放題。閣僚が鳩山、小沢の辞任をほのめかしているのだから世も末だ。


断っておくが、前原は沖縄担当相で、「私に任せてください」と言う平野官房長官に丸投げしたら、ウソ八百の言動に沖縄も徳之島もカンカンになってしまった。揚げ句が、首相自らの直談判である。
「あまりに情報管理と人事管理がなっていない」と言うのは政治評論家の浅川博忠氏だ。
「外交・基地問題は秘密裏に交渉を進めるのがセオリーです。それなのに徳之島案などが早々と漏れ伝わり、問題を複雑化させた。岡田外相が嘉手納基地との統合案を強弁するなど、部下のコントロールもできていませんでした。言葉の軽さで自滅しているのも問題です。オバマ大統領に『トラスト・ミー』と言ったり、明言しなくてもいいのに、『5月決着』を宣言し、わざわざ自分を追い込んだ。国の指導者はもっと口が堅く、言葉に重みがなければいけません。タイムスケジュールや展望がなく、すべての行動が場当たり的なのも、リーダーとしての資質に疑問を感じます」
連休中の沖縄訪問も、周囲は止めたのに無視して突っ込んだ。何の策もなく当たって砕けろで、案の定、自沈したのである。それでも鳩山は15日にまた行くというから、周りが慌てて羽交い締めにし、延期が決まった。一事が万事こんな調子なのである。

こりゃあ、この政権はもう持たない。永田町では「ブン投げもあるんじゃないか」「持って次の代表選までだろう」なんて噂が飛び交うのだ。