鳩山・小沢 何があっても2人は辞めない 6月子供手当支給で情勢は激変 (日刊ゲンダイ2010/5/12)

支持率最低の鳩山首相と検察が問題の小沢幹事長 このまま参院選に突入したら民主党は大敗すると予想するマスコミと黙々と選挙準備に徹している小沢一郎の目算の当否

普天間問題で行き詰まった鳩山首相は辞めるのか――。大手メディアが「鳩山5月退陣説」を一斉に報じている。マスコミだけでなく、党内でも退陣説が語られはじめた。代表的なのが前原国交相の発言だ。記者団を前にこう言い放った。
「このままでは参院選は歴史的な敗北になる」「このまま選挙戦に入ることはないだろう。まずは首相が辞めざるを得ない」「小沢さんも幹事長にとどまることができるのか」
首相を支えることが責務の現職大臣が、よくぞ首相に「退陣要求」を突きつけられたものだが、要するに不人気の「鳩山・小沢コンビ」では、参院選に勝てないから、2人とも選挙前に辞めざるを得ないとの言い分だ。
しかし、鳩山首相も小沢幹事長も、辞任などこれっぽっちも考えていないはずだ。
「周囲がどんなに騒ごうが、2人は辞めるつもりなどサラサラないはず。連休中には都内で極秘に会談し、『小鳩体制』で参院選を戦うことを確認しあっている。参院選前の辞任は考えられない。とくに小沢幹事長は、脇目もふらず参院選に突き進んでいる。谷亮子を比例区の候補に担ぎ出し、来週からは全国行脚を再スタートさせる。辞める人の行動じゃないですよ」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

鳩山首相と小沢幹事長の2人が、なにがあっても辞める気がないのは、7月の参院選は負けないと自信を深めているからだ。
たしかに、このまま参院選に突入したら民主党は惨敗する恐れがある。なにしろ鳩山内閣の支持率は20%台に低迷している。
しかし、鳩山首相も小沢幹事長も、6月以降、ムードは一変するはずだ、と確信しているという。実際、民主党に対する国民の視線は激変する可能性が高い。政権発足から8カ月、いよいよ政権交代の“果実"を国民が手にすることになるからだ。

そのひとつが「子ども手当」である。
「月額1万3000円の子ども手当の支給が、6月から一斉に始まります。自治体によって支給日は異なるが、大半の自治体は6月10日前後に支給する予定です。6月には4月、5月の2カ月分計2万6000円が振り込まれる。

現金をもらって喜ばない国民はいない。小渕内閣が地域振興券を配った時でさえ、支持率がアップした。
しかも、単なるバラマキだった地域振興券と違って、子ども手当は『子育てを社会全体で支えたい』『税金を国民にダイレクトに還元したい』という民主党の純粋な理念からスタートした。国民は政権交代を実感するはずです」(民主党関係者)

「民主党嫌い」の大新聞・テレビは、6月に入っても普天間問題をしつこく追及しようとするだろうが、世間の話題は「子ども手当」一色になるのではないか。
さらに、6月には民主党が必死に調べている「特別会計」の調査結果も出てくる。
財源不足に悩む民主党は176兆円の特別会計にメスを入れて財源を確保するつもりだ。20兆円程度の財源を捻出できそうだという。
「子ども手当」の支給がスタートし、20兆円規模の財源を確保できたら、民主党に対する国民の見方が変わることは間違いない。ずっと右肩下がりの鳩山内閣の支持率が初めて回復に向かっておかしくないのだ。
国民が政権交代の果実を実感するようになれば、民主党が参院選で大敗することはあり得ない。

小沢幹事長も黙々と選挙準備を進めている。
全国の労組を回り、自民党から支持団体を引きはがし、次々に候補者を擁立している。すでに候補者は100人を突破した。100人を超える大量擁立は、48年前の自民党以来のことだ。
その選挙で自民党は議席を伸ばしている。
「小沢幹事長の選挙戦術は、文句のつけようがない。早くも効果を発揮している。たとえば、2人区に2人擁立する戦術です。党内からは『共倒れしたらどうするのか』との批判も上がったが、自民党が2人擁立できないのだから共倒れはない。むしろ、いままで無風区をいいことにサボっていた現職の参院議員が『落選の危機だ』と目の色を変えて選挙運動をし、票を掘り起こしている。2人独占はムリでも、比例票は確実に伸びる。さすがは選挙のプロと呼ばれる小沢幹事長です。小沢幹事長のことだから、万が一、共倒れしそうだったら、土壇場で当選しそうな候補者に総力を結集して1議席を確保してくるでしょう」(政治評論家・有馬晴海氏)


民主党に比べ、自民党の選挙準備はまったく進んでいない。
小沢幹事長のような「選挙のプロ」が不在のうえ、カネがない、候補者がいない、業界組織がない、風も吹かない……と、戦う態勢が整わない。これでは選挙にならない。
参院選では「みんなの党」が注目されているが、ミニ政党には限界がある。一大ブームを起こした「日本新党」でさえ、参院選で4議席しか獲得できなかった。
鳩山首相と小沢幹事長が、参院選は負けないと自信を深めるのも当然というものだ。
それだけに、鳩山・小沢の「ツートップ」が、参院選前に辞任することは絶対にない。そもそも「鳩山5月退陣説」は、小沢幹事長を引きずり降ろしたい勢力が意図的に流しているフシがある。

「民主党が参院選で勝利したら、小沢幹事長はみそぎを済ませたことになり、さらに絶大な権力を握ることになるでしょう。反小沢一派は、それだけは避けたい。だから、なにがなんでも参院選前に引きずり降ろしたいのでしょう。小沢幹事長に参院選の指揮を執らせたくない。しかし、小沢幹事長もそうした思惑はお見通し。だいいち『ポスト鳩山』の有力候補もいない反小沢一派に、鳩山・小沢コンビを退陣に追い込む力はありません」(有馬晴海氏=前出)
民主大敗という大マスコミの予測が当たるのか、選挙準備に余念のない小沢幹事長の選挙戦術が奏功するのか、楽しみである。