検察は今さら小沢に何を聞くのか (日刊ゲンダイ2010/5/13)

“形だけの再聴取"は恥の上塗り

民主党の小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部がきのう(12日)、小沢や衆院議員石川知裕被告ら元秘書3人に再聴取を要請した。小沢の不起訴処分の当否を判断する東京第5検察審査会が「起訴相当」と議決したことを受けた対応だが、検察が小沢を聴取するのは1月以来、実に3度目だ。今さら一体、何を聴くのか。
神戸学院大法科大学院教授の上脇博之氏(憲法)はこう言う。
「再捜査で起訴になるケースは『新たな証拠』が出てくる以外あり得ないでしょう。その場合、すでに一連の捜査で関係者の逮捕や家宅捜索をしているから、再び家宅捜索に入るのは考えにくい。客観的証拠が残っているかも疑問です。そうすると、誰かが新たな証言をするか、(小沢)本人の自白以外はありません」

小沢が特捜部の聴取に応じるか不明だが、再聴取したところで、小沢が前言を翻さない限り、不起訴が覆る見込みはないのだ。特捜部もそんなことは100%分かっているハズなのに、なぜ再聴取に踏み切るのか。
「検察も再捜査したくないが、『起訴相当』が出た以上、再捜査せざるを得ないというのが本音でしょう。ただし、起訴に転じる可能性は極めて低い。一度、有罪はムリと判断したのに、改めて起訴すれば『最初の証拠判断は何だったのか』との批判が出るだろうし、『政治判断があったのか』とヘタに勘繰られることにもなる。メンツにかけても不起訴にするしかない。そもそも今回、極秘のハズの小沢再聴取要請が漏れること自体がおかしい。
再捜査を検審にアピールする検察の思惑がチラつきます」(司法担当記者)

忘れてならないのが、検審が「起訴相当」と判断した被疑事実だ。テレビ・新聞が大騒ぎした「水谷建設からの裏金5000万円疑惑」や、石川議員の起訴理由となった「4億円未記載疑惑」は含まれていない。収支報告書に記載された「土地の購入時期と代金の支払時期がズレていた」のが「おかしい」というだけだ。
「検察が小沢氏への再々聴取で聴くことといえば、この被疑事実にある『期ズレ』のことしかない。これが国会会期中の議員を呼んで改めて話を聴くほどの内容でしょうか。マスコミは検察が小沢氏聴取で何を聴こうとしているのか、きちんと報道するべきです」(名城大教授・郷原信郎氏)


小沢をめぐる一連の事件で、特捜部の信頼は地に落ちた。
西松事件の大久保隆規被告の公判では、検察側証人が証言を翻した途端、訴因変更を裁判所に請求した。公判前整理手続きを終えた公判の訴因変更は判例で認められていないから、明らかに禁じ手だ。しかも、訴因変更の起訴状には当初、事件と何ら関係のない石川議員らの名前もあった。強引に「共謀」に仕立てようとしていたフシがあるのだ。
検察はいい加減にするべきだ。