それでも鳩山失脚はない 6月政変を煽るマスコミの嘘 (日刊ゲンダイ2010/5/13)

民主党はこのままの体制で参院選に突入が有力な見方 それは邪悪な意図を持った政治謀略の類である

参院選前の鳩山・小沢辞任などないこれだけの理由。参院300議席の民主党は何も動かない。
「鳩山政権いよいよアウト」――。大マスコミは「6月政局」を煽り立ててきたが、大嘘もいいところである。
「12日、官邸で政府民主首脳会議が開かれました。その席上、谷亮子擁立が話題になり、鳩山は“参議院の候補者、見事で"と、菅は“一本背負い"と小沢を持ち上げた。支持率低下で、大マスコミは小鳩が辞めることを期待しているが、この日の様子では、とてもそんな雰囲気ではなかった。夜には英国のキャメロン新首相と電話会談し、早期来日を招請した。
やる気マンマンですよ」(民主党関係者)
東京地検の小沢任意聴取の方針、普天間問題決着のズレ込み、内閣支持率低下を受け、新聞・TVはここぞとばかり騒ぎ立てている。「支持離れ歴代内閣で最悪」「許されぬ首相の逃げ切り」と強調、有権者の民主離れを加速させようと躍起だ。
だが、鳩山も小沢も参院選前に辞める可能性はゼロである。それは最近の民主党内の動きからも明らかだ。
「反小沢派3人組の仙谷国家戦略担当相、前原国交相、枝野行政刷新担当相がここへきて“5月末までに100%の賛成を得るのは難しい"などと、鳩山体制継続を容認する発言をしているのです。大マスコミは支持率低下を騒ぎ立て、民主党内が分裂状況に陥るかのような報道をしてきましたが、危機に直面して政権続投で固まったのだから皮肉です」(前出の関係者) 小沢が辞めたら学芸会政権は完全崩壊
旧体制がことのほか追放したがっている小沢は、絶対に辞めない。
「検察が再び動き始めました。ここで中途半端な形で辞めたら、脱税で逮捕された金丸信・元副総理の二の舞いになりかねません。最終決着がつくまでは辞めませんよ。もうひとつ理由があります。小沢からすれば、民主党政権は学芸会のようなもの。“自分がニラミを利かせていなければ立ち行かなくなる"という思いがあるからです」(政治評論家・小林吉弥氏)
劣勢が伝えられる参院選も、谷亮子の擁立で状況は変わり始めた。これも小沢を後押ししている。小林吉弥氏がこう続ける。

「谷の出馬が与えるインパクトは大きいですよ。流れが変わりました。棄権に回るとみられていた無党派層を再び引きつけることになる。しかも、日本医師会の政治団体である日本医師連盟を、民主新人推薦、自民現職支援と分裂状態に追い込むなど、自民党の支持基盤を切り崩した。参院選の勝敗は分からなくなってきました。私の分析では、民主単独での過半数確保は無理ですが、国民新、社民を加えた与党で56議席程度は取れる。そうなれば、民主の非改選62と合わせ与党3党で参院の過半数を確保できる。衆院は300議席を上回っている。この状況では、ダブル選もあり得ないし小沢辞任もありません」
この国の民主主義成熟を悲願とする小沢は、そう簡単には辞めない。それが政治のプロたちの見立てである。

有権者に選ばれた自負

鳩山も辞めない。その理由は何か。政治評論家・浅川博忠氏はこうみる。
「鳩山さんにしてみれば、ここで自分が辞めたりしたら、小沢さんを道連れにすることになる。そんなことになれば、ポスト鳩山に誰がなろうが、政権は持たない。せっかくの政権交代が台無しになってしまう。そういう思いがあるから、どんなに批判されようが辞めませんよ」
宇宙人といわれる鳩山である。支持率が下がろうが、大マスコミが何を言おうが、その程度では動じない。さらに、「自分は安倍や福田とは違う」という思いがある。
「最近、鳩山が“安倍さんだって1年はやったんだから"と意欲を示したという話が流れています。鳩山にしてみれば、“首のすげ替え、たらい回しで政権についた安倍や福田とは違う。自分は有権者の意思で首相になったんだ"という意識が強い。ここで辞めたら安倍や福田以下になってしまう。政権放り出しはありませんよ」(ベテラン政治ジャーナリスト)かくして、鳩山・小沢体制のまま参院選に突入することになる。


大マスコミの謀略にダマされるな

そんな見方が日増しに有力になっているのに、どうしてもこの政権を壊したい大マスコミは、「6月政変が胎動を始めた」などと、いまだに政変をたきつけるのだからヒド過ぎる。
「このまま小鳩体制で参院選に突入し、選挙後も民主党政権が続くことになれば、旧体制が恐れる改革が本格的に進むことになる。そんなことになったら、自民党政権下で得てきた既得権益がパーになってしまう。それで、自民党をはじめとする保守勢力、霞が関の官僚などの旧体制を代表して大マスコミが邪悪なネガティブ報道を続けているのです」(前出のジャーナリスト)
有権者は今こそ冷静になるべきだ。普天間問題への対応を理由に、鳩山の指導力がないという指摘は、あまりに短絡的である。沖縄、米国、移転先の合意を取り付けなければならない“3次方程式"を解くのは至難の業。鳩山の代わりに誰がやってもできっこない。しかも、鳩山は従来の隷属的な関係から対等な関係へと日米関係の在り方を根本から見直そうとしている。
時間をかけるのは当然なのだ。
大マスコミの誘導に踊らされて民主党政権を見放したら、この国の民主主義は暗転する。有権者はそれを肝に銘じるべきだ。