政権交代8ヶ月正念場の選挙民 (日刊ゲンダイ2010/5/14)

窮地の鳩山と小沢のこれから

---そして 民主党政権で この国と国民生活は良くなるのか、劣化するのか---
---最終局面に来た自民党デタラメ政治の清算と腐敗堕落の官僚組織破壊の戦い---
今頃、平野官房長官が慌てて鹿児島入りするマヌケぶりを見ていると、鳩山内閣は本当にドン詰まりの感じだ。「普天間公約問題で首相は持たないんじゃないか」と、民主党支持者までヤキモキする現状も分からないではない。
これで、政権を支える小沢幹事長が万全なら、5月末危機なんて簡単にハネつけられるのだが、「検察再聴取」でまた大マスコミに騒がれ、小沢幹事長自身も窮地だ。2トップが身動きとれず、叩かれ続ける。この状況では、民主党政権は本当に苦しい。

だから党内でも、「参院選に大敗すれば誰かが責任をとらざるを得ない。それなら選挙前に辞めても同じ。ムードが変わればプラスになる」なんて声が増えているらしい。それが「6月の首相交代」や「参院選前のダブル辞任」の根拠にされているが、それは自殺行為だ。参院選大敗を前提に党内で“政変"を起こしたら、民主党政権はおしまいだ。瓦解が止まらなくなる。それは末期の自民党政権が繰り返したことだ。
ここは正念場だ。民主党議員だけじゃない。昨年8月、期待をもって政権交代を後押しした選挙民にとっても、じっくり考えないといけない局面である。
大マスコミの悪意に満ちた報道に乗せられ、鳩山政権を見限るのは簡単。自分たちの手でつくった政権を、自分たちで潰すのも勝手である。だが、国民は本当にそれでいいのか。

◇自民党時代に逆戻りでいいのか
「いま国民は、歴史的な瞬間にいるんだという自覚が必要です。それは、戦後初めて60年ぶりに成し遂げた政権交代を軌道に乗せられるのか。それともマスコミや自民党と一緒になって政権交代をここで潰して、また古い悪政の時代にUターンするのか。その歴史的な分かれ目なのです。7月の参院選で民主党がそこそこの勝利を収めたら、政権はようやく安定し、政治主導が急ピッチで進むでしょう。この国の古い支配システムが次々に壊され、新しいものが生まれます。しかし、逆に民主党が参院選で大敗することになれば、政権は求心力を失い、再び自民党的なものや官僚支配が息を吹き返してしまう。せっかくの政権交代は台無しです。二度と日本で、民主的な政権交代を実現するのは無理になる。ぜひ国民一人一人がそこに気づいてほしいものです」(筑波大名誉教授・小林弥六氏)
鳩山首相の頼りなさを見て、国民が戸惑うのも分かるが、大事なことは首相の“揺れ"ではない。時計の針を前に進め続けるのか、それとも針を逆戻りさせるのか。その歴史的転換を担わされているという覚悟なのだ。


◇小沢事件も普天間問題も死に物狂いの旧支配勢力が仕掛けた最後の権力闘争
この視点さえあれば、いま起きていることのウラも、全部見えてくる。デタラメが分かってくる。たとえば、小沢幹事長はなぜ執拗なまでに検察に狙われるのか。
「戦後の日本は、アメリカを中心にして、自民・財界・霞が関・大手メディア・検察の五角形が支配してきた。それを根底から壊そうとしているのが小沢氏です。小沢氏なら本当にやりかねない。それで古い支配体制の総反撃を食らっている。政治家引退にまで追い込まれようとしているのです」(日本金融財政研究所所長・菊池英博氏)
だが、先兵の地検特捜部が小沢周辺をいくら洗ってもスキャンダルが見つからない。政治資金報告書の「不記載」という立ちション程度のものだった。それで、一般人の検察審を操って、また捜査継続に持ち込むファッショ手法だから悪質だ。

普天間問題はどうか。

政権交代を機に、米国従属安保を見直そうとしたのが、鳩山政権のスタート。普天間はその一歩だった。間違いではないのだが、ここにも旧勢力の猛烈な妨害が入った。
「日米安保システムというのは、戦後60年で、何層もの利権構造ができている。政治家、外交・防衛官僚、軍需産業などが日米でそれぞれ儲かる相互関係があるのです。彼らは、沖縄の基地縮小、海外移転、ひいては同盟関係見直しとなれば生活が脅かされる。それで入り口の普天間移転を潰し、鳩山政権に安保問題に手をつけさせまいとしているのです」(軍事問題評論家・前田哲男氏)
外国軍隊の基地をなぜ戦後60年も日本は抱え込む必要があるのか――鳩山首相はそこを問いたかったはずなのに、巧みに迷路に引きずり込まれ、アリ地獄に突き落とされた。それが真相だろう。 ◇大マスコミの洗脳作戦に乗るな

一時が万事。そんな仕掛けと謀略で鳩山政権潰しが進められている。旧勢力の一員である大マスコミの報道が偏っているのも、グルなのだから仕方ない。大事なことは、まともな有権者、民主政治を願う国民くらいは鳩山政権を後押ししてやるしかないということだ。
「今度の参院選で民主党が勝ったら、衆参の数と世論をバックに、この国の支配構造は大きく変わります。民主党がめざす“民益"政治が定着し、“官益"がなくなる分、国民生活は確実に豊かになっていく。もちろん支配体制から完全に追放される自民党や霞が関、大マスコミは死ぬか生きるかの問題だから、5月政局、6月政変を実現しようと必死になる。最後のあがきを見せる。テレビや新聞が、民主党政治の改革やいいことは何も報じず、悪い部分だけ拾い出して強調しているのも、ここが最後の決戦だと分かっているからです。参院選後は司法改革にさらされる検察だって最後の最後まで何を仕掛けるか分かりません。だからこそ、いい政治を願う国民だけは民主党を応援してやらないといけないのです。参院選を投げてしまってはいけません。邪悪な大手メディアに洗脳されたままでいたら、自分で自分の暮らしを苦しくさせるだけなのです」(小林弥六氏=前出)

テレビだけ見ていると、鳩山首相や小沢幹事長が一方的に追い詰められているように見えるが、旧勢力だって苦しい。自民党は組織が壊れ、支持率はピクリとも上向かない。霞が関はサイフの特別会計や天下り団体を壊されようとしている。小沢民主党が進める自民党デタラメ政治の清算、腐臭の官僚組織破壊は確実に進んでいる。だから連中は死に物狂いだ。謀略や怪死事件が起きたっておかしくない。天下分け目の権力闘争前夜とは、そういうものだ。
その意味で、選挙民だってここは、肝を据えて向き合うしかない場面なのである。