小沢・鳩山 霞ヶ関と最終決戦 役人支配との最後の決戦が始まっている
(日刊ゲンダイ2010/5/19)

小沢を失脚させる検察の陰謀を愚かな世論は容認する結果が恐ろしい

また簡単に操作されている国民
戦争中から戦後もずっと権力にだまされ続け、せっかく目覚めて政権交代を実現し変革の矢先に検察と大マスコミの共謀の罠にはまり鳩山内閣を見限り始めた大量の悪宣伝を信じ今ここで鳩山政権をつぶしたら、もう再びこの国と国民生活のための政治は出現しないだろう
大マスコミの小沢叩きには慣れっこだが、きのう(18日)の朝日新聞の社説には、目をむいた。

東京地検からの再聴取を受け、政治倫理審査会にも応じる意向を示した小沢に対し、〈やましいことがないというなら、堂々と証人喚問に応じてもいいはずだ〉〈(政倫審出席は)参院選前に「みそぎ」を済ませておこうとの意図とみられても仕方ない〉とカミついているのだ。
どうかしているのではないか、この新聞は。
改めて言うまでもないが、東京地検特捜部が総力を挙げて捜査した結果、小沢は法的に“シロ"と判断された。それでも、検察審査会が「起訴相当」としたので小沢の再聴取となり、小沢サイドもすんなり応じた。再聴取は形式的なもので、東京地検は近く、再び「不起訴」の方針を示すとされる。小沢は逃げも隠れもせず、再聴取の翌々日(17日)には定例記者会見に臨み、政倫審にも出る意向を表明。それも、「公開でもいい」と言い切った。
それなのに、朝日は「政倫審でみそぎのつもりか」「証人喚問でなければ許さない」とコブシを振り上げるのである。元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏は、こう言った。
「朝日をはじめ、大手メディアの論調は一事が万事、この調子です。大前提としてあるのは『小沢=極悪人』という決め付けです。だから、検察が不起訴にしても納得しない。
いくら小沢氏が説明しても『まだダメだ』『もっと説明しろ』と批判する。本来なら、検察捜査や検察審査会の問題にも言及すべきなのに、それには目もくれず、盲目的に小沢攻撃の材料に使うのです。大手メディアの小沢報道の大半は批判のための批判、難癖のたぐいです」
まさしく「ペンの暴力」なのだが、こうしたメディアの小沢攻撃のウラには、とてつもない大きな謀略が見え隠れする。


最終ラウンドを制するのは小沢か旧体制か
それはズバリ、民主党政権潰しだ。小沢がいなければ、民主党は選挙で勝てる――なんて報道もあるが、全く違う。小沢がいなければ民主党はガタガタになるし、裏を返せば、小沢がいない民主党は屁でもない。だから小沢を潰す。そうすれば、民主党政権は自然に倒れる。こういう理屈だ。
彼らはなぜ、かくも民主党政権が憎いのか。戦前から戦後まで脈々と続いてきた役人支配の歴史の中で、官僚、政治家、財界とメディアは本当においしい思いをしてきた。立法業務という政治家本来の仕事は役人に丸投げし、政治家は予算の個所付け、利権漁りに明け暮れ、財界とタッグを組んで、甘い汁を吸ってきたのだ。ここにメディアも入っている。これらをバッサリと断ち切ろうとしたのが、民主党の鳩山・小沢体制だからだ。
これまでいい思いをしてきた霞が関や大マスコミ、自民党などの旧体制にとって、民主党政権は何が何でも潰すしかないのである。この戦いは、政権交代が現実になった昨年あたりから激化する。西松事件や小沢の代表辞任が第1ラウンドとすれば、昨年の総選挙が第2ラウンド。政権交代直後の混乱が第3ラウンド。今は最終ラウンドともいうべきだ。最後の攻防が繰り広げられているのである。
旧体制勢力による謀略の仕掛けは周到だ。
昨年末の予算編成では、マニフェスト違反と財政難を追及、藤井前財務相を辞任に追い込んだ。年が明けると、鳩山首相の“故人"献金問題を攻め立て、小沢元秘書の石川知裕衆院議員の逮捕、小沢の「政治とカネ」追及とエスカレートしていく。
4月は外務、防衛がナーンにもしない普天間移設をめぐる迷走を批判し、法務官僚“主導"がチラつく検察審査会の小沢「起訴相当」決議が畳みかけた。

整いすぎる政権潰しスケジュール
こうして見ると、キレイにスケジュールが整っていることが分かるだろう。節目ごとにメディアは民主党政権を叩きまくり、ついに鳩山・小沢コンビは崖っぷちまで追い込まれてしままった。イケイケのメディアはカサにかかって2人を攻め立て、葬り去ろうとしている。
参院選まであと2カ月。2人はもつのか。もったとして選挙結果は?それによって小沢はどうなる? これが見えない。だから、最終攻防なのである。
しかし、こうしたメディアと役人の謀略に乗せられ、国民がこの政権を潰してしまったら、大変な事態が待っていることを知るべきだ。
「このまま、民主党が参院選で敗れて鳩山首相と小沢幹事長が退陣したら、民主党内のパワーバランスは一気に崩れます。党内は混乱に陥り、政権の足を引っ張る側にとって願ってもない展開となる。そうなれば、無責任な役人支配が息を吹き返す。税金のムダは放置され、一部の業者との癒着政治が復活する。時計の針が逆戻りしかねません」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)
恐らく、そんなことは誰も願っちゃいないだろう。しかし、今の内閣支持率の低下はどうだ。すっかり、大マスコミにダマされている。それだけに心配になるのである。

何のための政権交代か思い出せ
この国の有権者はずっと為政者とその一味、大マスコミにダマされてきた。戦争中は言うに及ばず、戦後も自民党政権が仕掛けた巧妙なメディア操作に踊らされ、一党独裁の腐敗堕落政治を許してしまった。そんな国民を目覚めさせ、改革に切り込もうとしているのが、鳩山・小沢体制である。この構図を有権者は改めて思い出すべきだ。
「有権者側も、もっと長い目で政権交代の行方を見守る覚悟が必要です。焦って成果を求めるあまり、わずか11カ月の短命に終わった細川・羽田内閣の失敗を繰り返したら、政治が一時的に混乱しただけで、何のための政権交代だったのかということになります。夏の参院選に向け、5月下旬から6月いっぱいの政治状況が重要な意味を持ってきます。今こそ国民には、冷静に政権交代のメリットを分析する目が求められています」(五十嵐仁氏=前出)
ここで世論が鳩山政権を潰したら、未来永劫、この国と国民生活のための政治は出現しない。逆に旧体制を駆逐すれば、劇的に政治は変わっていく。有権者は決して惑わされないことだ。