大新聞が垂れ流してきた「日米同盟の危機」は全くのデタラメだ [普天間報道を疑え]
(日刊ゲンダイ2010/5/20)

普天間基地の移設問題がクローズアップされ始めた頃から現在に至るまで、大新聞の論調は「現行案でなければ、日米同盟が破綻する」「米国を怒らせてはいけない」の一色。しかし、本当にそうなのか。外交・安全保障の分野で政策立案にかかわり、15年近く普天間問題を見てきた軍事アナリスト・小川和久氏は、「米国の上層部はもっと柔軟です」と断言する。
「一口に米国側と言っても、上層部と実務者とでは全く違います。『怒っている』のは、ジャパンデスクや課長クラス。実務者協議の担当者レベルです。自分たちのこれまでの努力が水泡に帰してしまうからです。しかし、国務省や国防総省の次官補以上の上層部は柔軟。米国の軍事的プレゼンスが維持されるためには、日米同盟の安定があってこそ、と考えている。むしろ、日本が日米安保を解消することを恐れていて、『我々は鳩山首相を助けたい』と言っています」
「日米同盟の危機」を煽るのに、大新聞は元米国高官や知日派のコメントを得意げに引用するが、こうしたやり方は現状を見誤らせるだけだ。

オバマ民主党政権になった今、共和党時代の人物に話を聞いても仕方ない。
「元ホワイトハウス国家安全保障会議上級アジア部長のマイケル・グリーン氏や、元国務副長官のアーミテージ氏などがそうですが、メディアは、彼らに権威がありそうだからと、もったいつけて記事にする。しかし、彼らは『日本の立場を代弁し、擁護してきたのに、顔が潰された』と思って反発しているだけなのです」
普天間問題で米国は怒ってなどいないし、日米同盟は危機でも何でもない。本当の危機は、日本の政治家や官僚に「交渉能力」がないことだ。「日米同盟を傷つけてはいけない」と、米国の顔色うかがいに終始してきた。
「交渉は、国益の激しいぶつかり合い。しかし、日本側は一度でも米国からNOと言われるとそれで引き下がってしまう。日本政府は、日本の要求を米国側にぶつけることすらしていない。
テニスの試合に例えれば、ボールは日本側のコートにとどまっている。打ち返せば、米国はボールを拾いに行く。ラリーが続くようになって初めて、対等な国家と言えるのではないでしょうか」

鳩山内閣が日本の国益や沖縄の民意を盾に、真正面から米国とぶつかり合えば、事態は大きく好転する可能性が残されている。
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