メディアが勝手に「5月決着断念」を打つメチャクチャ [普天間報道を疑え]  (日刊ゲンダイ2010/5/21)

基地はなくならない

◇これぞ、悪意のマッチポンプ
今月14日、新聞各紙にはデカデカと「普天間5月末決着断念」の活字が躍った。「首相、月内断念を表明」と打ったのは読売新聞。多くの読者は鳩山の敗北宣言と見たはずだ。ところが、鳩山はこの時、「断念」の「だ」の字も言っていないのである。
「5月末までに決着するという考え方を変えたわけではない。ただ『5月ですべてのことができあがった』ということには、なかなか難しいかもしれない」「6月以降も詰める必要があるところがあれば、努力する」
この発言が「断念表明」になってしまったのである。鳩山はこの日、舌足らずな説明が「断念報道」につながることを警戒し、夕方のぶらさがり会見で「私の考え方は5月末決着というものを断念したわけでもありません」と念押しした。それでも、「断念」と書かれ、大新聞は末尾に「首相の責任問題に発展する」と付け加えた。
もちろん、5月末決着を言い出したのは鳩山自身だ。しかし、今まさに対米交渉が大詰めのときに、大マスコミは首相の発言の“揚げ足"を取り、追い込もうとする。
地元の説得に乗り出しているときに、首相の責任問題をことさら煽る。

これではまとまるものもまとまらない。まとまらなければ、またなじる。悪意のマッチポンプ報道が繰り返されているのである。
大メディアの鳩山バッシングは他にもある。鳩山が4月13日にワシントンでオバマ大統領と非公式会談したときのことだ。中国の胡錦濤国家主席が1時間も会談したのに鳩山がたった10分間だったことをあげつらい、ワシントン・ポスト紙が書いた「最大の敗者」なんて言葉を喜々として引用していたが、この会談についての報道には政府高官も首をかしげている。
「オバマ大統領が鳩山首相に対し『キャン・ユー・フォロー・スルー』(最後までやりとおせるのか)と迫ったと書かれましたが、大統領は断じて、こんなセリフを吐いていない」と言うのである。
この発言をもって「鳩山、オバマに怒られた」と報じたメディアもあったから意図的だ。


鳩山の窮地の象徴となった4月の沖縄の大規模県民集会も怪しい。テレビは鳩山批判のコメントばかりを集めて流したし、主催者は9万人が集まったと発表、メディアもそう書いたが、警察や消防が確認したわけでもなく、「写真を見てもスカスカ。どう考えても9万人は大げさだ」(官邸筋)と言う。一事が万事、こういう積み重ねなのである。
これじゃあ、支持率も落ちるし、鳩山だってやってられない。内からの鉄砲に気をつけなければならないのだから、つらいところだ。