小沢氏再不起訴 焦点は次の市民判断
(東京新聞・社説 2010年5月22日)http://bit.ly/b3fozs


 政治資金疑惑がかかる小沢一郎民主党幹事長を東京地検は再び不起訴とした。検察審査会の一回目の議決は「起訴相当」だった。これから始まる市民による二回目の審査の行方が最大の焦点となる。

 疑惑の核心は、資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書の虚偽記入事件に対する小沢氏の関与である。

 小沢氏は東京地検の三度目の事情聴取で、あらためて否定した。元秘書ら三人も小沢氏の明確な指示を否定した-。

 検察審査会の「起訴相当」議決を受けた再捜査で、検察が不起訴の結論を出したのは、そうした理由からだ。

 今後は改正検察審査会法に基づき、自動的に二回目の審査に入ることになる。十一人の審査員のうち、八人が「起訴相当」と議決をすれば、裁判所が指定した弁護士により「強制起訴」する運びとなる。八人に満たなければ、不起訴が確定する。

 問題は一回目の議決に加わった市民のうち、五人の任期が七月末まであり、審査会に残る点だ。二回目の議論は別のメンバーで行われるべきではないだろうか。新しく入った審査員との“情報格差”が生まれる問題点もある。

 法的見地からの助言を行う審査補助員の弁護士も、一回目とは異なる人を充てた方がよい。会議が非公開なため、助言が適切かどうか、チェックできないからだ。

 「民意の反映」が検察審査会の役目であり、むろん検察官とは異なる視点があってよい。だが、同じ証拠なのに、その評価が検察官と市民とで分かれたことに違和感を覚える人もいる。より公正を図る意味で、審査会は市民も弁護士も一新して、民間人の良識を示す結論に導いてほしい。

 検察の再捜査が、審査会の議決から一カ月程度で終結したことは、拙速との批判が出る恐れもある。結論を急いだのは、審査会に下駄(げた)を預けたのかという憶測さえ生みかねない。ゼネコンマネー疑惑はどうなったのか。検察も説得力ある説明がいる。

 小沢氏は一貫して「潔白」と主張している。不起訴といえど、検察審査会の二回目の議決を受ける身でもある。自ら政治倫理審査会に出席する意向を示しているが、「陸山会」の土地取引や原資の四億円について、進んで資料などを示し、詳細に語った方が、国民の納得を得られるのではないか。あえて証人喚問に応じ、潔白を証明する道もあろう。