■(補論)本件政治資金問題に関連する法解釈および事実関係についての検討結果

1.「寄付をした者」についての有識者見解の検討

第1章の2-1.(1)で述べたように、政治資金規正法の解釈としては、「寄付をした者」とは、基本的に、「寄付者として金銭の交付や振込など外形的な行為を行った者」と解するべきだと考えられるが、法務省は、「寄付をした者」の判断を、個別の事案ごとに実態に基づいて行うべきとの見解を示している。その前提として、政治資金規正法4 条3 項の「寄付」の定義規定との関係をいかに考えているかは不明であるが、当委員会の有識者懇談会にも参加した堀田力氏は、別の場において、この点について、「寄付とは財産上の利益を提供することで、法律が『交付』を含むとしたのは、使者や機関に対し手渡した場合も含むことを明らかにしたのであり、『交付』という外形があればすべて寄付になるわけではない。たとえば同法は寄付の斡旋(あつせん)に関する制限を設けているが、斡旋(あっせん)者に寄付金を託した場合でも、斡旋は斡旋で、寄付の受領ではない」と述べて、同法が、寄付者について、「形式」ではなく「実質」に基づいて記載を行うことを求めているとの見解を示している。

 同氏の見解は、法務省見解の根拠を推測する一つの手がかりになると思われるが、以下のような疑問がある。

 堀田見解のように、「使者や機関に対して手渡しをした場合も含む」という趣旨であれば、「寄付」の定義に「交付」という文言を含めるまでもなく、「供与」に含めて解することは可能である。例えば、実質判断を行う場合の典型である贈収賄の事例において、贈賄者が、収賄者と意思を合い通じた使者に現金を手渡した場合は、当然「供与」したと認定できるのであり、「交付」などという概念を持ち出す必要はない。公職選挙法は、民主主義の制度的基盤を支える法律という面で政治資金規正法と共通の性格を有するものであるが、同法は、当選を得る等の目的で、「選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益」を「供与」する行為の禁止(同法221条1項1号)のほかに、「選挙運動者に対し金銭もしくは物品の交付、交付の申し込みもしくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求しもしくはその申し込みを承諾」する行為を禁止しており(同条項5号)、「交付」という概念を用いているが、その意味は、「供与」が選挙人、選挙運動者に対して「金銭、利益を得させること」であるのに対して、「交付」は、選挙運動者に対して単に「金銭、利益を移転すること」である(典型的なのは、選挙人を買収する資金を運動者に託す行為)。

 このような公選法における「交付」という文言の意味との比較に照らしても、上記堀田見解のような「交付」の解釈を取る余地はなく、「寄付」の定義に「交付」が含まれているのは、前記のように、金銭、利益を「得させる」という「供与」の形態とは異なる、「単なる移転」の場合も「寄付」に含める趣旨だと考えられる。

 また、収支報告書に「寄付の斡旋者」の記載に関する規定があるが(同法12条1号ハ)、それも会計責任者が「寄付の斡旋」を受けたと認識できる範囲で形式的な判断によって記載すべき事項だと考えられる。斡旋者自身が政治団体等に現金を持参してきたとしても、「寄付者」として現金の交付ではなく、斡旋者が使者として現金を持参しただけである。いずれにしても同法が実質判断に基づく記載を求めていることを示すものではない。

 この点に関して、当委員会の有識者懇談会に出席した政治資金問題の専門家の日本大学教授の岩井奉信氏も、「今までの政治資金規正法の実質上の運用を見ていると、実質が誰であったのかまでは求めていない。実質まで確認することを求めるのは実際には無理だろう。したがって、有罪になるのは難しいだろうし、もしこれで有罪が取れるということになると、政治資金規正法の根幹がひっくり返ってしまうことになる。本件で虚偽記載を認めてしまうと、政治資金制度、収支報告書の根幹が揺るがされることになる。今回の事件を違法と言ってしまえば、違法は山のようにある。その摘発が検察の裁量権に任されているのであれば、ある種怖いことである。今回はそれが問題になったということで、非常に皮肉な言い方をすれば、検察が必ずしも正義ではないということが明らかになった」と述べている。

2.西松建設内部調査報告書に基づく検討

 西松建設内部調査報告書は、同社が、平成7年に施行された政治資金規正法の改正により、企業から政治家個人への献金が禁止されたことから、政治団体からの献金を装って政治家個人の政治団体等に献金することを画策し、そのために、「新政治問題研究会」と称する政治団体を設立したと述べており、同団体が、企業から政治家個人への寄付の禁止を潜脱する「脱法目的」のものであったことを認めている。

 しかし、同報告書は、一方で、「会員とする社員は、当時の幹部社員が全国の支店を回って、一人一人勧誘し、会員となる旨の了解を得ていた」と述べており、政治団体への加入が会社からの強制ではなく、社員の意志によって行われていたことを明らかにしている。

 そして、社員が政治団体に加入して支払う会費については、西松建設が「一部の社員に対して特別賞与の名目で金銭を交付し、その代わりに当該社員から年に2回、政治団体への寄付をさせていた」と述べているが、この特別賞与加算については、「具体的な上乗せ金額は本人には知らされず、政治団体への加入の勧誘を受けた際には『賞与で上乗せするから寄付をしてくれ』といわれていたに過ぎなかった」とされており、特別賞与加算が、社員が政治団体の会員として支払う会費の補填(ほてん)であることが明確に認識されていたわけではないようである。しかも、両者の金額を対比すると、特別賞与加算の金額が約11億円であるのに対して、政治献金、パーティー券の購入等に充てられた金額は、約5億9000万円であり、社員が源泉徴収される所得税等を考慮しても、両者の金額の差はあまりに大きい。賞与特別加算は、社員の会費支払いの単純な補填ではなく、政治団体への加入も含めた会社の意向への忠誠の程度などの総合的評価に基づいて支給されていたのではないかと考えられる。

 同政治団体の献金先と金額が西松建設によって決定されていたことなど、西松建設の統制下にある団体であったことは明らかであるものの、それは、親会社と連結100%子会社の関係と同様のものであって、上記のような同団体の活動や会費支払いの実態からすると、西松建設の役職員およびその家族を会員とする団体としての会員と組織の実体はあり、まったく実体のない、政治家に献金するための「トンネル」的な存在であったとは認め難い。

 このような実態に照らすと、連結100%子会社が親会社の指示にしたがって寄付を行った場合に、親会社が寄付者とならないのと同様に、同政治団体による寄付について西松建設を寄付者と認めることには相当な無理があるのではないかと思われる。

■6)小沢一郎代表代行ヒアリング記録

開催日時:平成21年5月20日夕方(約2時間、実質的なヒアリング時間は1時間程度)

開催場所:都内ホテル会議室

出席者:飯尾潤(政策研究大学院大学教授)、郷原信郎(名城大学教授)、櫻井敬子(学習院大学教授)、服部孝章(立教大学教授)

対象者:小沢一郎代表代行

(あらかじめ定めた方針に基づき、このヒアリングを公開するかどうかについて、小沢代表代行側と協議し、非公開にて実施した)

(飯尾座長)

-本日は、お忙しい中、おいで頂きありがとうございました。先日、突然の辞任表明ということでわれわれも少々驚きましたが、当委員会としては、民主党からご依頼を受けている事項の検討を従来どおり行って報告書を取りまとめようと考えております。それに関して、小沢先生にも文書で質問をさせて頂き、既に文書で回答していただいていますが、それとは別に、今回の問題について、いろいろ小沢先生の説明不足などといわれてきたことについて、一度直接お話を伺いたいと思っておりました。その辺りのことについて、今日は、率直にお伺いしたいと思いますので、どうか忌憚のないところをお答え頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

-公開でのヒアリングということも考えましたが、係属中の刑事裁判に関することでもあり、報道等で大きく取り上げられた場合に裁判への予断を与える可能性があります。また、検察、メディアがヒアリングに応じない中で小沢先生だけ公開の場でヒアリングを実施するとなると、三者間のバランスが著しく崩れます。そのようなことを勘案しまして、本日は、こうして非公開で小沢先生にお話をうかがうことにいたしました。なお、関連して申し上げますと、先般来、われわれの委員会で有識者をゲストに迎えて議論を公開しておりまして、われわれなりに、委員会の設置の目的に沿って、政治、検察、メディアの問題に関して、バランスのとれた大変中身のある議論を行ってきたつもりなのですが、マスコミの方では、これを小沢代表の進退問題ばかり議論しているというような誤った報道を行いまして、小沢先生にも大変ご迷惑をおかけしました。公開ヒアリングは、内容を一部だけ切り取って報道される結果になって、われわれも大変苦慮しております。

-まず、最初に私からお伺いいたします。今回の問題で、民主党代表を辞任されたことについて、どのようにお思いでしょうか。

(小沢代表代行)

-私は、自らの政治資金の処理について一点の曇りもないと考えていますので、政治資金の処理が違法だということで公設秘書の大久保が逮捕され、しかも起訴されたこと自体、まったく何かの間違いではないか、と思うばかりでした。しかし、検察の起訴以来、私が代表続投を表明したことに関してマスコミからいろいろ批判を受けたこともあり、その後の情勢をみますと、私がこのまま代表の座にいるよりも代表を交代することで、私の政治家としての悲願である、直近に迫った総選挙での政権交代がより確実になるのではないか、と考え、辞任を決断いたしました。

-私の辞任後に、代表選挙が公正に行われ、鳩山新代表が選出され、より強固な挙党態勢ができたことは、本当に良かったと思います。私は代表の座は降りましたが、今後も引き続き、総選挙での政権交代に向けて、全力投球していきたいと考えております。

(飯尾座長)

-代表を辞任しても、それまで問題にされてきた政治資金の問題についての説明責任がなくなるわけではない、というような指摘がありますが、どうお思いでしょうか。

(小沢代表代行)

-代表を辞任するということは大変重いことだと思います。何と言っても、代表のままでいれば、もし、民主党が政権をとれば総理大臣になるわけでありますが、代表を辞任した以上、それはないわけであります。私としては、自ら代表を辞任するという重い決断を行ったことで、やるべきことは十分にやったと思っております。そもそも、今回の政治資金の問題についてはまったくやましいことはありませんし、それに関して説明すべきことは十分に説明してきたつもりです。

(郷原委員)

-それでは、その政治資金の問題について、私からお伺いします。今回、3月3日に大久保秘書が逮捕された直後の4日に記者会見が行われましたが、その際、「政治団体が寄付をしてくれるということだったので資金管理団体で受領することにした。もしそれが西松建設そのものからの企業献金だという認識に立っていたとすれば、政党支部で受領すれば何の問題も起きなかった」「献金していただくみなさんに、そのお金の出所などをお聞きするということは、厚意に対して失礼なことなので、そのような詮索(せんさく)をすることはない」と言われています。この言葉が、「西松建設から来た金だという認識を否定した」「実質的な出資者を詮索しないで献金を受け取るのが当たり前」という意味に受け取られ、その後、大久保秘書の逮捕事実についての不自然・不合理な弁解をしているように言われたことが、説明責任を果たしていない、という批判の根拠になったように思うのですが、これらの言葉は、どのような意味で言われたのでしょうか。

(小沢代表代行)

-公設秘書の大久保の逮捕直後の記者会見での私の言葉が誤解されているようですが、私が言いたかったのは、当該寄付については、政治団体から受領した以上、政治資金規正法にのっとって、政治団体からの寄付として収支報告書に記載すべきと考えたからこそ、そのように記載したということです。

-その前提として、今の政治資金規正法では、寄付をしてくださった個人や団体を収支報告書に記載すれば十分であり、寄付を受け取る立場である私たち政治家の政治団体側が寄付をする相手側の政治団体への資金の出資者について調べたり記載したりすることは求められていません。このことは、郷原先生も仰っておりますし、他の多くの政治家もそのように認識して報告していると思います。

(郷原委員)

-「詮索することはない」というのは、どういう意味ですか

(小沢代表代行)

-その政治団体は、西松建設のOBや社員の方々が中心になって活動していた団体だということが、秘書の逮捕以降にいろいろ報道されております。しかし、寄付を頂く政治団体に対して、寄付の資金をどのようにして捻出(ねんしゅつ)されたのかということまでお尋ねするのは、誠に失礼なことですので、そこまで詮索(せんさく)するようなことはやっていないはずだと申し上げたまでです。

-それは、個人から献金を頂いた場合でも、同様ではないかと思います。寄付を頂いた個人の方に、その原資がどこから出ているのかをお聞きすることは大変失礼なことだと思います。

-寄付を頂く際に、どこから資金が出ているかを一つひとつ確かめなくてはならないとは、少なくとも、今の政治資金規正法では求められていないことだと思います。この点に関しては、私だけではなく、政治献金を頂いている政治家は、みんな同じように考えていると思います。

(郷原委員)

-ゼネコン業界からの政治献金について、どのようにお考えですか。

(小沢代表代行)

-私自身は、ゼネコンの政治資金だけではなくすべての政治資金について不透明な状況を何とか改めていかなければならないと考えてまいりましたし、そのために政治資金規正法の改正などのルールづくりにもかかわってまいりました。そうした中で、まず、私自身が行ってきたことは、どこから政治資金をいただいて何に使ったかを収支報告書に記載してすべて公開し、それを国民が見て判断できるような仕組みにする、ということであります。

-今回、その収支報告書の記載のうち、寄付を頂いた相手方の記載が誤っているとの指摘を、検察当局から受けたわけでありますが、先ほども申しましたように、政治団体からの寄付として受領したものを、そのとおりに記載しただけでありますので、現在の政治資金規正法のルールにおいては、記載が誤っているとの指摘は私には納得がいかないところであります。また、会計責任者がいきなり呼び出されて、その日のうちに逮捕されるというやり方がとられたわけですが、果たして、それが収支報告書の記載の誤りを指摘する方法として適切なものだったのか、大変疑問に思います。その点については、既に、政治資金規正法違反事件として起訴されておりますので、今後、刑事公判手続の中で主張し、裁判所の公正なご判断を頂きたいと思っております。

(飯尾座長)

-今回の事件を機に、ゼネコンから多額の政治資金を受け取っていたのだから、その使い道を全体的に説明すべきだという意見がありますが、政治資金収支報告書に記載された献金の使い道について、全体的に説明していただくことはできませんか。

(小沢代表代行)

-私自身は、すべて政治資金規正法による公開のルールにのっとって、頂いた政治資金の使い道を収支報告書に記載し明らかにしてきたところであります。これは、総務省のホームページに掲示されていますから、誰でも見ることができます。それから、今の法律では事務所費の明細や領収証も公開されることになっていますが、法律が改正されるまでは、事務所費については明細や領収証を公開する必要はありませんでした。しかし、以前あるマスコミに陸山会の事務所費が不正に使われているという記事を書かれた際に、平成19年の2月ころだったと思いますが、国会内で記者会見を開いて、平成15年から17年分の3年間の事務所費について、電話代や切手代に至るまですべての領収証を付して公開しております。今回も同じようなことをすればいいではないか、といわれるかもしれませんが、事務所に強制捜査が入ったときに会計関係の書類をほとんど持っていかれてしまったので、説明する術がありません。

(郷原委員)

-寄付を受けた資金で不動産を購入したということを問題にする論調もありますが。いかがですか。

(小沢代表代行)

-それは地元と東京における私の政治活動に使用しているものですが、不動産についても、その時の記者会見で、陸山会が保有するすべての不動産について登記簿謄本や権利証をお見せして、説明しました。私は、政治資金の使い方としては、事務所の家賃などを支払った後に何も残らない使い方よりも、事務所を購入してローンの元利払いをするという形にした方が政治団体の資産として残るわけですから、寄付をいただいた皆さんのお金のより有効な使い方であると考えて、そのようにしてきました。その結果、実際の所有者は資金管理団体なのに登記上は私の名義になっている不動産が複数ありますが、それは、資金管理団体自体の名義では登記できないという登記法上の制約から、やむを得ず団体の代表者である私の名義で登記をしただけで、何らおかしなことではありません。私個人の財産ではないことを明示した契約書も作っておりますし、資金管理団体の収支報告書にも保有財産として明確に記載しております。それも、頂いた政治資金を決して無駄にしてはならない、有効に活用したいと考えたからであります。

(飯尾座長)

-政治献金の制度の問題について、今回の事件を機に、企業団体献金の全面禁止の検討が行われていますが、この点についてはどのようにお考えですか。

(小沢代表代行)

-私は、企業団体献金というのは、ルールに基づいて正しく公開されている限りは、国民の浄財を政治に活用させていただく一つの方法であり今後も存続させていくことは何も問題だとは思っておりませんでした。

-しかし、今回の事件で、私としては、何らやましいことはなく、政治団体から寄付を受けたという事実に基づき開示すべきことを開示していたつもりなのに、私の資金管理団体が企業から献金を受けたとされ、政治資金規正法違反ということで検察の捜査を受けてしまいました。このように当事者も予期できない形で企業団体献金にまつわる問題が生じないような仕組みを考える必要があるのではないかと思うに至りました。

-そこで、もし企業団体献金を禁止するという方向で考えるのであれば、「公共事業を受注している企業団体からの献金を禁止」というのは、ほとんどの企業団体が国や自治体と何らかの関係がある以上、あまり意味がないでしょう。禁止するとすれば「全面禁止」にせざるを得ないのではないかというのが私の考えです。

-ただその一方で、個人献金を促進するための仕組み、例えば献金額の全額について税額控除を認めるといった制度を設ける必要はあると思っています。今の制度は所得控除が原則なので、所得が高くて税率も高い人でないとメリットが少ないという問題があります。税額控除を認めれば比較的所得が低く税率が低い人にもメリットがあり、寄付をする方の裾野が広がって、国民の政治参加が一層進むことになります。確か民主党は年間5万円までの個人献金について全額を税額控除にする案を検討しているはずです。

(櫻井委員)

-私から一点伺いたいのですが、小沢さんは、大久保秘書の逮捕の翌日の記者会見で検察捜査を不公正な国家権力、検察権力の行使と批判されましたが、この発言は、後になって考えて、まずかったとお思いですか、それとも当然の発言だったとお思いですか。

(小沢代表代行)

-予想だにしなかった大久保の逮捕という事態が起きて、私もいささか感情的になっていた面もあるかもしれませんが、あの場で言ったことは決して間違っていたとは思いません。今回の検察捜査は、前例のない異常なやり方だったと思いますし、検察権力の行使として、あってはならないことだと思います。私が、このように言ったことについて、民主党が政権をとったら今度は自分が国策捜査をやってやるという意味だ、というようなことを言う人がおりましたが、とんでもないことです。私は、検察権力が政治と結託するとか政治でねじ曲げられるというようなことは絶対にあってはならないと思いますし、今回の検察捜査もそのようなものではないと信じております。

-しかし、今回の件で明らかになったように、検察権力の行使の仕方によっては、政治に対して実に大きな影響が生じてしまいます。実際、私も、それによって、民主党代表の職を辞任することになったわけです。そういう検察権力の行使に対して、まったくチェックするシステムがないということは問題だと思います。政治によってねじ曲げられることはあってはなりませんが、検察の権力行使に対して何らかの公正なチェック・システムをつくることが重要ではないかと思います。

-今回の第三者委員会では、ぜひご専門の立場から、そのような検察制度のあり方についても議論していただいて、ご提言を頂きたいと思います。

(服部委員)

-今回の政治資金の問題についてのメディア報道についてはどうお思いですか。

(小沢代表代行)

-今回の問題についてのマスコミ報道は、事実や問題の本質を伝えることができていないと思います。委員の皆様はお分かりかと思いますが、今回は、事件自体とは全く次元の異なる問題までが意図的に一緒くたに報道され、そのような報道を前提にして多くの評論家が議論していました。その中で、「とにかく小沢は悪い」という構図が作られ、最終的には世論が「とにかく代表をやめろ」という方向に流されていったと思います。マスコミは、記者クラブ制度がある限り、どうしても現体制寄りになってしまうのではないかと思います。記者クラブなどという閉鎖的な一種のギルドの形では、マスコミの間にも競争原理が働きません。もっとオープンな場で、いろいろなマスコミが取材・報道をめぐって競い合うようにしなければいけませんし、そういうオープンなマスコミに対して政治も検察もきちんと説明責任を果たしていかなければならないと思います。

(飯尾座長)

-本日は、われわれからのご質問に対してお答え頂きましたが、これまでのマスコミの論調からは、この内容でも、まだ、説明不足だというような見方もあると思います。その点について、どうお考えですか。

(小沢代表代行)

-繰り返しになりますが、私は、政治資金規正法が定めるルールにのっとって、頂いた政治献金をすべて収入として収支報告書に記載し、その使い道についてもすべて収支報告書で公開しています。また、陸山会の事務所費については、当時の法律では義務付けられていないのに、事務所費の明細とすべての領収証を公開しました。

-なぜそこまでやったかといえば、私が率先して公開することで当時の安倍首相をはじめとする閣僚や与党幹部も後に続き、国民の政治への信頼回復につながるのではないかと思ったからです。記者会見でも安倍首相や閣僚、与党幹部に事務所費の開示を求めましたが、何の反応もありませんでした。これまで政治資金のディスクロージャーということについては、他の政治家以上に力を注いできたにもかかわらず、私だけが政治献金について説明責任を果たしていないといわれることが、まったく理解できません。

-むしろ、今回の私の秘書の大久保が逮捕された件について説明責任を果たすべきは、政権交代が現実のものとなってきた時期に、民主党の代表であった私に対して、前例のないやり方で突然秘書を逮捕するという捜査を行った検察であり、また、そういう、常識で考えても、総選挙での政権交代を妨害する政治的意図をもってやったとしか思えない検察捜査の問題をほとんど報じないで、連日、検察リークによると思える報道を繰り返し、あげくの果てには、世論が説明責任を果たしていない小沢の辞任を求めているなどと言って、連日、辞任キャンペーンを繰り広げたマスコミの方だと思います。

-そういう意味で、検察やマスコミの説明責任を求めるということを、ぜひこの委員会でしっかりやっていただきたいと思っていました。

-今回の事件が表面化した後、私は、記者会見もすべてフルオープンで行い、記者の質問には、できる限り丁寧に答えてきたつもりです。しかし、その内容は、十分に報じられていません。一方で、検察は、今回の件について、どういう説明責任を果たし、マスコミは、今回の報道姿勢についてどういう説明責任を果たしたのでしょうか。

(飯尾座長)

-検察当局に対しては、検事総長宛に文書で質問をしましたが、お答え頂けませんでした。マスコミに対しては、今回の報道の中で特に問題があると思えたケースに関して新聞、テレビ1社ずつに文書で質問をしましたが、新聞についてはいまだお答えを頂いていませんし、テレビの方も、一応回答の文書は頂いたものの、ほとんど答えにはなっていません。そういう意味で、検察、マスコミの方も説明責任を果たしていないではないか、といわれるのはわれわれとしてもわかります。われわれも、世の中から小沢先生が説明責任を果たしていないという言い方をされているので、その点について、このような場でご質問をしているということですが、それに対して、小沢先生としては、説明はこれまでにも十分に行っているし、本日もさらに説明した、というご主旨とうかがってよろしいでしょうか。

(小沢代表代行)

-そうです。ぜひ、今回の問題を、政治家小沢一郎の政治資金という単純な問題としてではなく、検察、マスコミのあり方にもかかわる重大な問題としてとらえていただきたいと思っています。そういう意味で、検察やマスコミが説明責任を果たすことが極めて重要であると考えています。