「県外、守れなかった」首相が沖縄知事との会談でおわび
(asahi.com 2010年5月23日13時46分) http://bit.ly/9FQJVR

米軍普天間飛行場移設問題で仲井真弘多・沖縄県知事(右)を訪ね、あいさつする鳩山由紀夫首相=23日午前、沖縄県庁、代表撮影
 鳩山由紀夫首相が23日午前、沖縄県庁で仲井真弘多知事との会談で語った内容は、以下の通り。


 【冒頭のあいさつ】

 「仲井真知事はじめ、県庁の皆様方に、このようにふたたびお目にかからせていただくことができて、たいへんありがたく思っております。5月の上旬に一度おじゃまをさせていただきました。その折にも、沖縄県民の皆様方におわびを申し上げたところでございますが、普天間の返還というものを含んで、沖縄の皆様方のご負担を出来る限り、軽減を申し上げたいと。あるいは普天間の周辺の皆様方のさまざまな危険を出来るだけ早く除去申し上げたいという、そのような思いのもとで、政府の考え方をさまざま模索をして参ったところでございます。いま、仲井真知事からお話がございましたように、日米の間でいまぎりぎりの交渉を行っているところでございます。まだ、最終的・・・」


 (仲井真知事「おかけいただけませんか。どうぞ、どうぞ」)


 「それも失礼かと」


 (知事「いや、どうぞ」)


 「では、座って恐縮でございます。ぎりぎりの交渉中でございまして、最終的なところには至ってはおりませんが、かなり詰まってきているところもございます。きょうは、政府の考え方を率直にお伝えを申し上げ、また、沖縄の皆様方にご負担もお願いをしなければならないというところも正直にお伝えさせていただきながら、この交渉の今、経緯ではございますが、正確にお伝えを申し上げなくてはなりませんので、実は、私の考え方を正確にお伝えさせていただきたいという思いで、読み上げさせていただければと思っております」


 【辺野古を明言】

 「このいま冒頭に申し上げましたように、政府の取り組みの目的は、沖縄の皆様方の負担の軽減と危険性の除去でございまして、それをどう実現をするかということでございます。そのためのもっとも確実な方法は、普天間の飛行場の県外の移設であると、そのように考えて、政府はその可能性を真剣に探って参ったところでございます。与党三党で沖縄の基地問題検討委員会を作って、政府与党挙げて努力を申し上げて参ってきたのもその一環でございます。ただ、国内および日米の間で協議を重ねた結果、普天間の飛行場の代替地そのものはやはり沖縄県内に、より具体的に申し上げれば、この辺野古の付近にお願いをせざるをえないという結論に至ったところでございます。代替施設の詳細を決める際には、言うまでもありませんが住民の皆様方のお暮らしや、あるいは環境への影響というものに最大限配慮をいたすことは当然でありますので、地元の皆様方ともしっかり協議をしながら、進めて参らなければならないと考えております。このことは言うまでもないことだと思っております。この方針というものは、人口密集地にございます普天間の飛行場の返還を実施するために、どうしても代替施設を探していかなければならないという現実をふまえて、断腸の思いで下した結論でございます」


【抑止力維持の必要性】

 「これに伴いまして、普天間の飛行場の返還や、あるいは海兵隊員の8千人あまりのグアムへの移転など、従来の日米合意を確実に実施するよう、日米で再確認することは、これはもう言うまでもないことでございます。私はこれまで、ぜひ普天間の代替施設は県外にと考えて、実際にそれも追求して参ったわけでございます。それがなぜ県内なのだ、という皆様方のご懸念、お怒りはもっともなことだとも思っております。これは、ま、昨今の朝鮮半島の情勢からもおわかりだと思いますが、今日の東アジアの安全保障環境にまだ不確実性がかなり残っているという中で、海兵隊を含む、これは在日米軍全体の抑止力を、現時点で低下をさせてはならないということは、これは一国の首相として安全保障上の観点から、やはり、低下をさせてはならないということは申し上げなければならないことでございまして、そのうえで、普天間の飛行場に所属をしております海兵隊のへリの部隊を、沖縄に存在する他の海兵隊部隊から切り離して、国外はもちろん県外に移設すると、海兵隊の持つ機能というものを大幅に損なってしまうという懸念がございまして、従いまして、現在の、現在のでありますが、安全保障の環境のもとで、代替地は県内にどうしてもお願いせざるを得ないという結論を私どもとすれば、結論になったのでございます」


 【改めておわび】

 「私自身の言葉、出来る限り県外だということ、この言葉を守れなかったということ、そしてその結論に至るまで、その過程の中で、県民の皆さん方にご混乱を招いてしまいましたことに関して、心からおわびを申し上げたいと思っております」


【訓練の県外移転】

 「ただ、政府の今回の決定というものは、沖縄に在日米軍基地の約75%が集中しているという現状を放置するということでは決してありません。今は、基地そのものが無理でも、基地の機能、わけても沖縄で行われております米軍の訓練をできる限り県外に移していくことによって、沖縄の皆様方の負担と危険性の除去の実を挙げていくことは、大変大事なことだ思っております。訓練の移転には日米で共同で行うものと、それから米軍単独のものが考えられるわけでありますが、もとより訓練移転をすべて万能視するつもりはありませんけれども、沖縄の危険性の除去とか、あるいは騒音の軽減に、それなりの一定の効果はあろうかと思っております。県外への訓練移転を促進するためには、一時的であっても他の自治体が米軍などの訓練を受けてくれることが当然、必要でございます。27日に全国の知事会を開くことにしておりまして、全国の知事の皆さん方に対して、沖縄の皆様方のご負担を全国で受け止めていただけるように、協力をお願い申し上げたいとも思っております。ただ同時に、沖縄県外に住む日本の国民の皆様方に対しても、基地問題と安全保障の問題について、自分自身のこととして考える機会を、ぜひ少しでも作っていただきたいとお願いをいたすところでもございます」


【負担軽減のパッケージ】

 「この新たな日米合意によって、政府が目指しておりますのは、代替施設の建設による普天間の飛行場の返還や県外への訓練移転の促進だけではありません。従来の日米合意をもっと広げた負担軽減のパッケージに合意をするために、いま懸命に協議をしているところでございます。新たな合意で目指したい負担の軽減策は、地元の沖縄の皆様方の声を出来る限り反映したものにして参らなければならないと思っておりまして、沖縄の県の皆さん方から政府に対しまして提起をして頂いた項目を実現をしたいと思っておりまして、真摯(しんし)に努力をしておるところでございまして、それが政府の基本的な考え方でございます。前回、5月の上旬に知事をご訪問申し上げたときに、知事から特に五つのご要望をちょうだい致しました。その四つの部分は、米国の協力が必要な項目でございますので、いま、政府は現在、それらを米国との協議のテーブルに載せているところでございます。具体的には、航空機の騒音の軽減策、グアム移転と嘉手納以南の米軍の施設区域の返還促進、さらには米軍基地関連の環境面での協力、ホテル・ホテル訓練区域の一部解除などでございまして、現時点ですべて結果を予見するわけには参らないところではございますが、同盟国である米国の協力を求めながら、日本として最善を尽くすつもりでございますし、いま、それなりの感触をそれぞれちょうだいしているところでございます。もうひとつ知事からご要望頂いております与那国島にかかる防空識別圏の問題につきましては、沖縄県民のみなさん、および、与那国の町民の方々が安心して生活をしていただけるように、早急に見直すことにいたしたところでございます。なお、前回知事の方から、これまで政府が前向きに取り組んでこなかったと、のれんに腕押しだというふうにおっしゃられましたけれども、確認と対応を求められました沖縄県に所在する米軍基地に関する二十数項目の諸課題についても、関係省庁に対してしっかりと対応するように指示をいたしたところでございまして、精査をいたしまして今月末までに回答をさせることに致しております。普天間の飛行場の危険性の除去につきまして、飛行場返還までの間、できるかぎりの措置を講じていきたいと思っておりまして、その一環として、本年1月からは継続的な回転翼機の飛行状況を調査しているところでございますが、この問題に対しては今後ともしっかり取り組んで参りたいと思っております」


【むすび】

 「以上、ご説明申し上げましたけれども、日本政府の対応、方針にたいして、まだまだ足りないところもあろうかと思っております。また政府のこれまでの対応によって、県民の皆様方に大変なご迷惑をおかけしてしまっていますことも、私自身、痛いほどよく分かっておるつもりでございます。批判、ご批判をちょうだいしておりますことから、逃げるつもりもございません。同時に、ただ、今回の政府の方針の中には、これまで実現はおろか、米国と本当に交渉をしてきたんだろうかと、まったく交渉さえしてこなかったのではないかという点も含めまして、沖縄の負担軽減と危険性の除去を前進させる要素が含まれていることもお認めいただければたいへんにありがたいとは思っております。ただ、いずれに致しましても、これからも知事とは、特に沖縄の県民の皆様を代表しておられる知事とは緊密に協議を続けさせて頂きたいと思っておりますし、また、県民の皆様方とも真摯に向かい合いながら、ご理解をいただけるように努力をすることを約束を申し上げるところでございます」

 「たいへん、長くなりましたが、私の方から読み上げさせてもいただきましたけれども、正確に現在の状況をお伝え申し上げたところでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」