焦点 小沢・鳩山は辞めるべきか このまま参院選突入なら大敗するといわれているが…
(日刊ゲンダイ2010/5/24)

2ヵ月後この国の運命が決まる

---また旧自民政権時代の「衆参ねじれ国会」に逆戻りか、それとも予想に反して民主党勝利の可能性も---
◇70年前の太平洋戦争突入時と同じ重大な局面が参院選
「7月11日投票」がほぼ確定したことで、政界は一斉に参院選に走りだしている。候補者は選挙区に張りつき、国会はガラガラの状態だ。先週末(21日)の参院本会議の採決は、とうとう200人を割り込んでしまった。とくに、無責任な自民党は30人近くが欠席である。
参院選まであと2カ月足らず。民主党がゴールデンウイークの直後に行ったとされる「情勢調査」が、党内に衝撃を与えている。単独過半数に必要な60議席はおろか、改選53議席を大きく下回り、30議席台だったという。たしかに、出回っている調査結果を見ると、民主党候補は大半の選挙区で自民党候補に数ポイント、リードされている。たとえば青森「民26VS.自29」、福井「民29VS.自30」、三重「民27VS.自30」といった具合だ。「現体制で臨めば35議席程度だ」と悲観論が渦巻いている。
そこで、取り沙汰されているのが「鳩山・小沢辞任論」だ。
このまま参院選に突入して自爆するより、選挙前に首相の顔を代えて参院選に臨むべきだという声がくすぶりはじめている。大マスコミも「鳩山6月退陣説」を報じはじめた。
「とくに7月の参院選を戦う候補者が危機感を強めている。内閣支持率が1ケタになったら、一斉に退陣コールが噴き出す可能性があります」(民主党事情通)
「反小沢一派」の7奉行は、なにがなんでも参院選前に小沢一郎を引きずり降ろすつもりらしい。すでに水面下で「6月政局」を仕掛けているという。

◇鳩山・小沢の辞任は選挙にマイナス
しかし、「鳩山・小沢」が辞任すれば参院選に勝てるのか。
ツートップが選挙前に辞任することがプラスに働くのか。
反小沢グループは、鳩山・小沢の2人を辞めさせれば、民主党の支持率が回復すると考えているようだが、いま鳩山首相と小沢幹事長の2人が辞めたからといって、世論が劇的に変わる状況ではない。

逆に、国民の不信感を強めるだけだ。
「民主党は、自民党が選挙の洗礼も受けずに安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と1年ごとにトップをすげ替えてきたことを批判してきたはず。同じことをやったら国民から見放されるだけです。なにより、民主党には鳩山・小沢に代わる人材がいない。いったい誰が、小沢幹事長に代わって選挙の指揮を執れるというのか。鳩山首相と小沢幹事長が辞めたら、後任をめぐって党内が混乱し、ますます国民の支持を失うだけです。自民党は小沢幹事長の手腕を恐れているのに、その小沢一郎を辞めさせるなんてナンセンスです」(政治評論家・本澤二郎氏)
そもそも、民主党の不満分子は、支持率が下がったことを鳩山首相と小沢幹事長の2人の責任にしているが、自分たちに責任はないのか。たとえば、普天間問題で苦しむ鳩山首相が初めて沖縄に行った5月4日、18人の閣僚のうち、11人がノンビリと外遊していた。前原大臣などは、沖縄担当相なのに汗をかいた形跡もない。
民主党は誰が何と言おうが、このまま「鳩山・小沢体制」で参院選に突入するしかない。

◇勝敗のカギは無党派層が握っている
実際、「7・11決戦」は、どんな選挙結果になりそうなのか。民主党は大敗するのか。
連立与党が過半数を維持するのか、それとも過半数を大きく下回るのか、どちらに転ぶかで、国民生活は大きく変わってくる。2カ月後、この国の運命が決まると言ってもいい。
参院選の改選議席は121。そのうち、公明党や社民党、共産党などが30議席前後を獲得し、民主党と自民党は残り90議席前後を奪い合う選挙戦になるとみられている。
「ある大手メディアの調査結果は、『民主46 自民47』だったそうです。民主党が30議席台に落ち込むとは考えにくい。

小沢幹事長も自信を持って選挙準備を進めている。最終的に改選議席の53を上回る可能性もあると思う。ライバルの自民党に議席を伸ばす要素がないからです。
有権者は民主党に失望しているが、かといって積極的に自民党に投票する気もないでしょう。しかも、支持団体が民主党に寝返り、公明票も期待できません」(選挙に詳しい政治評論家・有馬晴海氏)
波乱要因は29ある1人区を中心に民主と自民が接戦になっている選挙区が多いことだ。カギは50%を超える無党派層がどう判断するのか。
最近の無党派層は投票の直前まで投票先を決めない。棄権するのか、民主、自民のどちらかに投じるのか。それによって議席数は大きく変動してくる。

◇「衆院ねじれ国会」で政治は大混乱に
7月11日の参院選は、民主、自民のどちらが大勝しても、惨敗してもおかしくない情勢だ。
鳩山政権が過半数を維持すれば、政局は安定に向かう。民主党政権は3年間、衆院を解散せず、腰を据えてマニフェストに取り組んでいくことになるだろう。シロウトの集まりである鳩山内閣の閣僚たちも、もう一度、予算編成をやれば国家運営のコツが分かってくるはずだ。
その反対に、もし鳩山政権が過半数を失ったらどうなるか。国会は「衆参ねじれ」に逆戻りし、政界は一気に大混乱だ。「参院で過半数を割ったら、法案は一本も通らなくなり、国会は混乱に次ぐ混乱になります。かつて民主党は、ねじれ国会でも『政局にはしない』と小渕内閣に協力し、一緒に金融危機を乗り切ったが、自民党は倒閣しか頭にないから邪魔するだけでしょう。難問山積の日本はニッチもサッチもいかなくなりますよ。民主党の掲げる『国民生活が第一』の理念は間違っていないし、事業仕分けなどは毎年、行うべきだが、そうした政策も立ち消えになるでしょう。結果的に、国民が昨年の衆院選で支持した民主党のマニフェストも、実現は難しくなります。有権者は国会の混乱を望んでいるのか。よく考えて一票を投じるべきです」(本澤二郎氏=前出)

7月の参院選は、これまでの参院選とは意味がまったく違う。
有権者はこの国の針路を決める重大な局面を迎えていると考えた方がいい。