分かっていた今日の事態 鳩山内閣は間もなく潰れる (日刊ゲンダイ2010/5/26)

来週か、再来週、その後は内閣改造か小沢内閣か衆院解散で総選挙か、何でもありのカオスになってきた

あの時、小沢一郎は「民主党にはまだ政権担当能力はない」といっていた。鳩山由紀夫の無能も見抜いていた。
政権交代を実現したあの熱気に酔い痴れて実力者の小沢を政権から外し子供みたいな大臣ばかり作ったばかりに、内閣はニッチもサッチも行かなくなってしまった。
いったいどこで間違えたのか。ほんの8カ月前、鳩山内閣は国民の圧倒的な支持をバックに順調にスタートしたはずだった。ところが、直後から迷走に迷走を重ね、いまや支持率は20%。とうとう、首相としての「資質」まで疑われる始末だ。

鳩山内閣のなにが問題なのか。


一言でいえば「解決能力」だろう。「あれもやる」「これもやりたい」と次々にぶち上げるだけで、まったく問題が解決しない。これでは、期待した国民が落胆するのも当然である。
しかし、この事態は、初めから予想されたことかもしれない。
ふり返ってみれば、すべての原因は、昨年9月の組閣にある。当初、鳩山首相は、小沢一郎を幹事長兼副総理で入閣させる方針だった。小沢幹事長も鳩山首相を閣内で支えるつもりでいた。

かつて「民主党にはまだ政権担当能力がない」と語った小沢一郎は、「鳩山首相だけでは政権運営は難しいだろう」と不安だったらしい。
ところが「反小沢一派」が「小沢傀(かい)儡(らい)政権になる」と入閣に猛反対。入閣どころか、幹事長にすることにも異論を唱え、鳩山内閣は青写真とまったく違うものになっていく。

当時の状況を知る元参院議員の平野貞夫氏が言う。
「小沢一郎の幹事長就任をめぐって、党内が混乱し、党人事と組閣人事が大幅に遅れた。
結局、鳩山首相は『内閣に口出ししない』という条件をつけて小沢を幹事長にしています。議院内閣制で党の責任者が内閣に意見を言わないということはあり得ない。しかし、これ以上、人事を遅滞させられないと考えた小沢一郎は条件をのまざるを得なかった。
小沢幹事長が記者会見などで『それは内閣のことですから』と意識的に内閣と距離を置いているのは、そのためです」

機能しない「チーム鳩山」

その結果、誕生したのが、いまの鳩山内閣だ。小沢一郎が「民主党にはまだ政権担当能力がない」と心配した通りになってしまった。もし、あの時、剛腕の小沢一郎を閣内に入れていたら、ここまで迷走しなかったはずだ。
「鳩山首相の失敗は、党内のバランスを重視し、能力度外視で組閣したことです。鳩山首相のような『理念先行型』の総理は、脇を『実務型』で固める必要があった。政治日程、国会対策、官僚の操縦、根回しなど、政治の裏も表も知り尽くした手だれが不可欠だった。ところが、鳩山内閣には、政権運営が分かっているプロがひとりもいない。口だけ達者な前原誠司のような子供っぽい大臣ばかりになってしまった。これでは、首相が掲げた理念が実現するはずがありません」(政治評論家・本澤二郎氏)
しかも、鳩山内閣の閣僚は、大臣の役割さえ理解してない。
「鳩山内閣の問題は、『チーム鳩山』として機能していないことです。皆が一国一城の主のように振る舞っている。たとえば普天間問題です。内閣の重要課題なのに、いつの間にか、鳩山首相の個人の問題になってしまった。鳩山首相は、海外か県外に移すという難事業に取り組もうとしたのです。
鳩山内閣の閣僚なら、少なくとも岡田外相、北沢防衛相、前原沖縄担当相の3人は、実現のために全力で汗をかくべきでしょう。なのに、3人とも最後まで他人事だった。ドロをかぶるのを嫌がったのでしょう。首相は孤立してしまった。3人が死に物狂いで動いていたら結果は違ったはずです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
小沢一郎が副総理として入閣し、 小沢一郎が副総理として入閣し、閣内ににらみを利かせていたら、3閣僚を怒鳴りつけてでも問題解決に当たらせていたに違いない。鳩山首相の自業自得とはいえ、昨年9月、政権交代を実現した熱気に酔いしれ、子供みたいな大臣ばかり揃えたツケは大きい。

社民党の離脱で政権崩壊…


このままでは鳩山内閣は、破滅に向かいかねない。来週以降、どんなハプニングが起きても不思議じゃない。
最大のヤマは、社民党の連立離脱だ。普天間問題について、社民党は鳩山首相の最終案に対して絶対反対の立場を崩していない。きのう(25日)は、わざわざ社民党党首の福島瑞穂大臣が沖縄入りし、反対を訴える始末だ。「社民党内では『参院選の前に連立離脱して独自性を発揮した方が支持を集められる』という空気が強まっています。 福島大臣は自分自身が7月に改選を迎えるだけに、選挙にプラスと判断したら、いつ連立離脱してもおかしくありません」(社民党事情通)
社民党が離脱したら、鳩山内閣は一気に瓦解である。総辞職は避けられない。
しかも、6月16日の会期末まで国会は波乱の連続だ。
「自民党は不信任を連発し、徹底的に鳩山内閣を攻撃するつもりです。まずは、普天間問題の政府方針が発表される28日以降、平野官房長官、北沢防衛相など、関係閣僚の不信任を矢継ぎ早に提出する。政府の方針に反対している福島瑞穂大臣にも不信任を突きつけるつもりです。さらに、口蹄疫問題で赤松農相の不信任も提出する構え。不信任は数の力で否決するでしょうが、鳩山内閣は政権末期の色が濃くなっていく。支持率もさらに下落していくでしょう」(官邸関係者)

反小沢が仕掛ける「6月政局」

気になるのは、小沢幹事長がますます鳩山首相に距離を置きはじめていることだ。
「政策の決定は首相。私は結論を出す過程も、結論も一切聞いていないので論評する立場にない」と、突き放す発言が増えている。
その一方で、「反小沢一派」は、小沢降ろしの「6月政局」を水面下で仕掛けはじめている。
「民主党の不満分子は、6月に両院議員総会の開催を要求し、鳩山―小沢体制のまま参院選に突入すべきかどうか、議題にかけるハラです。小沢幹事長は党内に150人のグループを抱えるだけに、両院議員総会など開かせるつもりはないでしょう。しかし、鳩山首相が国会で追い詰められ、これ以上、支持率が下がったら、どうなるか分からない。小沢幹事長は両院議員総会を開いて、一気に勝負に出てくるかもしれない。もし、鳩山首相が辞任に追い込まれたら、小沢内閣か、衆参ダブル選挙か、予想もつかない展開になる恐れがあります」(政界関係者)
頼りにならない閣僚に囲まれた鳩山首相は、どう危機を乗り切るつもりなのか。