【首相会見詳報】普天間の辺野古移設「誠に申し訳ない」 (産経ニュース2010.5.28 22:32)


 鳩山由紀夫首相は28日夜の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を同県名護市の辺野古崎地区とする政府方針について、「政府部内の議論が沖縄県民、徳之島の住民らの心配、不安をあおる結果になったことをおわびする」と述べた。

 会見の詳報は以下の通り。


冒頭発言

 「本日は国民のみなさまに日本国民全体の安全と生活に直接かかわるご報告をさせていただくため、記者会見を開くことにいたしました。当初予定した記者会見の時間を大幅に繰り下げたことなど、ご迷惑をおかけしました。本日は私の率直な思いを申し上げますとともに、むしろできるだけ多くのご質問をお受けしたいと思っております」

 「先ほど政府はいわゆる普天間の基地問題と沖縄県民の負担軽減について、閣議決定をいたしました。まず冒頭に昨年秋の政権交代以来、私がこの問題に取り組んできた思いを一言、申し述べさせていただきます。現在の日本は歴史的に見て大きな曲がり角に立っております。内政、外交ともに、おそらくは数十年に一度の激動期にさしかかっております。沖縄における基地問題もそうした視点で解決策を見いだす努力が必要だと私は考えました。日本の国土のわずか0.6%の沖縄県に駐留米軍基地の75%が集中するという、偏った負担がございます。米軍駐留にともなう爆音とも言えるほどの騒音などの負担や、基地が密集市街地に近接することの危険などを、沖縄のみなさま方に背負っていただいてきたからこそ、今日の日本の平和と繁栄があると言っても過言ではありません」
「しかし、多くの日本人が日常の日々の生活の中で、沖縄の、あるいは基地の所在する自治体の負担を、つい忘れがちになっているのではないでしょうか。沖縄は、先の大戦においても国内でほぼ唯一の最大規模の地上戦を経験し、多くの犠牲を強いられることとなりました」

 「ここでもまた、沖縄が本土の安全のための防波堤となったのであります。戦後は27年間にわたるアメリカの統治下でのご苦労、さらに返還後も基地の負担を一身に担ってきたご苦労を思えば、現在の基地問題を沖縄に対する不当な差別であると考える沖縄県民のみなさま方のお気持ちは痛いほどよく分かります」

 「しかし、同時に、米軍基地の存在もまた、日本の安全保障上、なくてはならないものでございます。遠く数千キロも郷里を離れて日本に駐留し、日本を含む極東の安全保障のために日々汗を流してくれている米国の若者たちが約5万人もいることを私たちは日々、実感しているでしょうか。彼らの犠牲もまた、私たちは忘れてはならないと思います」

 「沖縄を平和の島とし、わが国とアジア大陸、東南アジア、さらに広く太平洋圏諸国との経済的、文化的交流の新たな舞台とすることこそ、この地に尊い生命をささげられた多くの方々の霊を慰める道であり、われわれ国民の誓いでなければならない。これは、1972年、5月15日、沖縄復帰に当たっての政府の声明であります。この声明が発表されて後、38年を超える年月を重ねました。私たちは祖国復帰を果たした沖縄への誓いを十分に果たすことができているのでしょうか」

 「日米安保条約改定から50年の節目の年に当たって、半世紀にわたる日米の信頼関係をより緊密にしていくためにも、また、さらに申し上げれば戦後初めての選挙による政権交代を成し遂げた国民の多くの期待のもとに誕生した新政権の責務として、大きな転換が図れないか真剣に検討いたしました」

「市街地のど真ん中に位置する普天間基地の危険をどうにかして少しでも除去できないか。加えて沖縄県民の過重な危険や負担や危険を少しでも、一歩ずつでも具体的に軽減する方策がないものか、真剣に検討を重ねてまいりました。そのために普天間の代替施設を県外に移せないか、徳之島をはじめ、全国の他の地域で沖縄のご負担を少しでも引き受けていただけないか。私なりに一生懸命努力をしてまいった所存でございます」

 「他方、私が悩みましたのは、アジア・太平洋地域には依然として不安定な、不確実な要素が残っている現実でございます。さる3月の韓国哨戒艦の沈没事案に象徴的なように、最近における朝鮮半島情勢など、東アジア情勢は極めて緊迫しています。日米同盟が果たしている東アジアの安全保障における大きな役割をいかに考えるか。当然のことながら、米国との間では安全保障上の観点に留意しながら、沖縄の負担軽減と普天間の危険性の除去を最大限実現するためにギリギリの交渉を行ってまいりました」

 「そうした中で日本国民の平和と安全の維持の観点から、さらには日米のみなら、東アジア全域の平和と安全、秩序の維持の観点から、海兵隊を含む在日米軍の抑止力についても慎重な熟慮を加えた結果が本日の閣議決定でございます」

 「確かに、私が当初描いていた沖縄県民の負担や危険性の抜本的な軽減、あるいは除去に比較すれば、この閣議決定は最初の一歩、あるいは小さな半歩に過ぎないかもしれません。しかし、私たちは前進をしなければなりません。少しずつでも日本の安全保障を確保しながら沖縄の負担を軽減する方策を探っていかなければなりません。普天間の問題については地元、連立、米国、この3者の理解を得て、それぞれがこれでいこうという気持ちになっていただくことを、この5月末に目指してまいりました。米国との間では、けさ、オバマ大統領と電話で話をし、今回の合意に関し、21世紀にふさわしい形で日米同盟を深化させることで一致をし、私からは今後とも沖縄の負担軽減に日米で協力したい旨、強くその意思を表明し、日米相互でさらに努力することとなりました。残念ながら現時点においても、もっとも大切な沖縄県民のみなさま方のご理解を得られるのはいたっていないと思っています。また、連立のパートナーであり、社民党党首であります福島大臣にも残念ながらご理解をいただけませんでした。結果として、福島大臣を罷免せざるを得ない事態に立ち至りました。こうした状況の下で、本日、閣議決定にいたったことはまことに申し訳ない思いでいっぱいでございます」

「また、検討を重ねる過程で、関係閣僚も含めた政府部内での議論が、沖縄県民のみなさま方や、徳之島の住民のみなさま方をはじめ、多大のご心配やご不安をあおる結果になってしまったことも含め、ここにおわびを申し上げます。私は現在の内外環境において本日決定した政府案、この一歩がなければこの先、基地周辺の住民のみなさま方の危険性の除去や、県民のみなさま方の負担の軽減のさらなる前進はかなわないと確信をいたしております。この一歩を一つの出発点に、今後もねばり強く、基地問題の解決に取り組み続けることが自分の使命であると考えております」

 「私はこれまで申し上げてまいりました3者のご理解がなんとかいただけるよう、今後も全力を尽くします。また、沖縄の負担軽減のためには全国のみなさま方のご理解とご協力が何よりも大切でございます。国民のみなさま、どうか、ぜひ、沖縄の痛みをわが身のこととお考え願いたい。沖縄の負担軽減にどうか、ご協力いただきたい。改めて強くお願いを申し上げます」

 「本日、私は、この厳しい決断をいたしました。私は今後もこの問題の全面的な解決に向けて、命がけで取り組んでまいらなければならないと思っています。沖縄のみなさま、国民のみなさま、どうか、ご理解とご協力をお願いをいをたします」


普天間移設「今一度心からおわび」

「引き続いて、閣議決定の具体的な内容と経緯を若干、簡潔にご説明申し上げます」

 「民主党自身も野党時代に県外、国外移設を主張してきたという経緯がありますなかで、政府は昨年9月の発足以来、普天間飛行場の代替施設に関する過去の日米合意について、見直し作業を実施いたしました。鳩山政権として県外の可能性を米国に投げかけることもなく、現行案に同意することには、どうしても納得ができなかったのでございます。こうしたことから、昨年12月、新たな代替施設を探すことを決めました。その後の5カ月間、何とか県外に代替施設をみつけられないかという強い思いのもと、沖縄県内と県外を含め、40数カ所の場所について、移設の可能性を探って参りました」

 「しかし、大きな問題は海兵隊の一体運用の必要性でございました。海兵隊は一体となって活動をいたします。この全体をひとくくりにして、本土に移すという選択肢は、現実にはありえませんでした。ヘリ部隊を地上部隊などと切り離し、沖縄から遠く離れた場所に移設するということも、かないませんでした」

 「比較的、沖縄に近い鹿児島県の徳之島への移設についても検討いたしましたが、アメリカ側とのやりとりの結果、距離的に困難との結論に至りました。この間、徳之島の方々には、ご心配とご迷惑をおかけし、厳しいお声もちょうだいいたしました。大変申し訳なく思っております。国外、県外は困難との結論に至ってからは、沖縄県内の辺野古周辺という選択肢を検討せざるをえませんでした。自分の言葉を守れなかったこと、それ以上に、沖縄のみなさま方を結果的に、傷つけてしまうことになったことに対して、心よりおわびを申し上げます」

「しかし、それでも、私が沖縄県内、それも辺野古にお願いせざるを得ないと決めたのは、代替施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはないからでございます。海兵隊8000人などのグアム移転や、嘉手納以南の米軍基地の返還も、代替施設が決まらないと動きません。この現実のもとで危険性の除去と負担軽減を優先する。それが今回の決定であること、どうかご理解を願いたい。新たな代替施設につきましては、詳細な場所や工法などについて、環境面や地元のみなさま方への影響などを考慮して、計画を作ってまいります。地元の方々との対話を心がけてまいります。沖縄の方々、特に名護市の多くの方々が、とても受け入れられないとお怒りになられることは重々分かります。それでも私はあえて、お願いせざるを得ません」

 「今回の決定は、米軍基地をめぐる沖縄の現状を放置するということではありません。まずは、沖縄で行われている米軍の訓練を県外に移し、沖縄の負担軽減と、危険性の除去の実をあげてまいります。そのためには、他の自治体に米軍などの訓練受け入れをお願いしなければなりません」

 


「昨日、全国の知事さん方にもお願いをいたして参りました。今後もご理解を求めてまいります」

 「また、今回の日米合意では、徳之島のみなさまにご協力をお願いすることも検討することといたしました。今後もよく話し合って参ります」

 「最後に今回の日米合意による、新たな負担軽減策についてでございます。今まで沖縄県から要望を受けながら、前政権のもとでは、アメリカと交渉さえしてこなかったものが含まれております。県外への訓練のほか、沖縄本島の東方海域の米軍訓練区域について、漁業関係者の方々などが通過できるよう合意をいたしました。また、基地をめぐる環境の問題についても、新たな合意を目指して検討をすることにいたしました。今後はその具体化に力を尽くしてまいります」
「以上、ご説明を申し上げましたが、ここにいたるまでの間、国民の皆さんや沖縄の県民の皆さん、関係者のみなさま方にご心配とご迷惑をおかけしたことは、私自身が一番よく分かっているつもりでございます。改めて今一度、心からおわびを申し上げます」

 「その上で、国民のみなさまに申し上げます。政府は、私が示しました方針に基づき、普天間飛行場返還のための代替施設の建設と、沖縄の負担軽減策の充実に向けて、これから邁進(まいしん)して参ります。今後とも、沖縄のみなさま方とは真摯(しんし)に話し合わせていただきたい。沖縄県以外の自治体の方々にも、協力をお願いをして参りたい。国民のみなさまが心を一つにして、基地問題の解決に向けて、知恵を出しあっていきたいと思っています」

 「そして、どんなに時間がかかっても、日本の平和を主体的に守ることができる日本を作ってあげ、(言い直して)作っていきたいと私は考えています。日米同盟の深化や東アジア共同体構想を含め、私たち日本人の英知を結集していこうではありませんか。沖縄の基地問題の真の解決も、その先にあると私は思っているのであります」

 「最後に2点。基地以外の重要問題について申し述べます。まず、韓国の哨戒鑑、沈没事案について、明日から韓国を訪問するにあたり、改めて、犠牲になった方々、そのご家族、韓国の国民に皆さんに対し、心からお悔やみを申し上げます。北朝鮮の行動は許し難いものであり、国際社会とともに、強く非難をいたします。日韓首脳会談、日韓中サミットにおいて、このことは、しっかり議論してまいります」

 「また、宮崎県において、発生をいたしました口蹄疫(こうていえき)によって、大変ご苦労されておられる農家のみなさま方に、心からお見舞いを申し上げます。さらに不眠不休で防疫対応に取り組んでおられる関係者の方々にも、心から経緯を表します。政府として、やれることはすべてやります。以上で、私の話を終わります。ご静聴有難うございました」


「情報管理不徹底の原因は…」

--首相は普天間問題について5月末決着といった。今日の合意は沖縄と社民党の合意がない不完全なものだが、これで5月末決着といえるのか。自らの発言を踏まえて、参院選の結果次第では責任をとる考えはあるか

 「今、ご質問頂きましたように5月末までに連立3党、沖縄のみなさん、さらには米国の理解を頂きたいとそのように再三申し上げてきたことは事実であります。米国の理解は得られたわけではございますが、残念ながら沖縄の県民のみなさん、もっとも重要な方々の理解を頂くにはいたっていません。このことに関してはこれからもねばり強く沖縄のみなさま方にご理解を深めていただくために精いっぱい努力してまいらなければならないと思っております」

 「また、連立与党の一員であります社民党の福島(瑞穂消費者・少子化担当相)党首を今回罷免せざるをえないということになりました。まさにざんきに堪えない思いでございます。この連立3党の維持はこれからも努めてまいりたいと思っておりますし、社民党さんに対しても私どもの今回の政府の決定をさらにねばり強くご理解を求めてまいりたい。私どもとしては、このことにこれからも最善を尽くすしかないと考えております」

 「そして、参議院選挙ということでございますが、まずは当然その1つのテーマになることは間違いないかと思っておりますし、私どもとして現在参議院選挙、まだそのことを十分に考える暇もないほどでございますが、しっかりと戦ってまいらなければなりません。責任という話に関しては今ここでは全力を尽くして国民の皆さんに民主党の、特に連立与党の考え方にご理解を深めていただくためにこれからも最善を尽くすしかない、そのことによってその責めを果たしていきたいと考えております」

--日米共同声明では辺野古の代替施設について位置や工法などの検討を8月末までに行い、2プラス2で確認する段取りになっている。2プラス2はいつころまでに開くのか。2014年までの移設完了をどのように進めていくのか。全国自治体が受け入れに消極的な米軍訓練の分散移転の検討など移設にかかわる全体のスケジュールをどう考えているのか

 「2プラス2を次回いつ開くのかということでございますが、これはまだ日程的には決まっているわけではありません。ただ、常識的に考えればオバマ米大統領が来日される予定のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)までの間には当然2プラス2は開かれるものだと理解しております」

 「それから、2014年までの移設完了に関してでございますが、当然のことながら一番大事な沖縄の県民のみなさま方のご理解を深めていくことでございます。そのためには仲井真(弘多沖縄県)知事をはじめ、あるいは名護の市民のみなさま方のご理解を深めていくということ、そのことに誠心誠意心を尽くしてまいりたいと思っておりまして、私ども辺野古周辺に代替の施設を建設するということを2プラス2で、米国との間で申し合わせたわけでございますので、その方向に向けて最善の努力を積み重ねていくと、そのことで環境のアセスの問題があるわけでございますが、できる限り2014年までに完了できるようなスケジュール感をもって進めてまいりたいとそのように考えています」
「それから分散移転、訓練の分散移転でございますが、これはそれぞれのもうすでに自治体に、訓練のお願いを申し上げ、もうすでに行っているところもございますが、さらに新たな地域に対してこれから自治体のみなさま方と協議をしていきながら、できるだけ早く訓練の分散を図ってまいりたいと思っております。また、自治体によらずに訓練の分散を県外に、事実上県外移設するということもさまざま考えてまいりたいと思っておりまして、色々なやり方があろうかと思っておりまして、それを最大限駆使してできる限り普天間の現在の危険性というものを早急に除去する手だてを講じてまいりたい。そのことが私は一番重要なことだと考えています」

 --首相は政治主導を掲げて政権をスタートした。結局、移設先が辺野古に戻ってきた経緯を見ると、これまで交渉に携わってきた外務省や防衛省といった、これまでの交渉の蓄積や経験が十分に生かされたのか。政治主導の政策決定について何か反省することはあるか

 「確かに政治主導ということで官僚のみなさま方にはさまざまな知恵、知識というものを提供して頂きながら最終的な判断というものを政治家が中心となって行ってまいるように今日まで、これは普天間の問題だけではありませんが、さまざまなテーマにおいてそのような方向で努力をしてまいりました。必ずしも、そのことがまだ8カ月の中でヨチヨチ歩きだという思いをみなさま方持っていると思いますが、必ずしも試行錯誤の中で十分に機能してきてこなかった部分もあろうかと思います」

「ある意味で政治家たちが肩ひじを張りすぎて、全部自分たちが考えるんだという発想の中で、必ずしも十分優秀な官僚たちの知識、知恵というものを提供をせずに行動してきたきらいが、あるいはあるかもしれません。ただ、普天間の問題に関しては必ずしもそのことが当たっているとは思いませんで、防衛省、外務省の官僚の皆さん方の知恵を頂いてまいったところでございます」

 「そこの中で私が1点申し上げることができるとすれば、やはりこのような大人数でしかもある意味で必ずしもすぐに公表することができないようなさまざまな情報というものがかなりその途中の段階で漏れてしまうということがございました。その原因は必ずしも定かではございませんが、そのことによって、報道がされ、さまざま国民にご迷惑をおかけしたということも現実にありました。このいわゆる保秘というかですか、秘密を守るということが必ずしも十分に果たされてこなかったということは、ある意味で政治主導の中で難しい官僚の皆さん方の知識を頂きながら歩ませていくという中での難しさかなと、そのように考えています」

 --今回、迷走を繰り返した印象を一般市民が受けたと思う。理由は色々な案が出ては消え、出ては消えを繰り返したからではないか。首相は本来は出るべきではない情報が外に出てしまったといった。これは政府として由々しき事態だと思うが、何らかの対策は打たれることはあるか。政府の情報管理について問題があったということをいったのか

「情報管理に関して、いま先程のご質問にお答えしたようにやはり問題ないとはいえなかったと、そのように思っております。事がやはり米軍施設ということでありますだけに、例えば地域が漏れるということになれば、そのことによって、結果としてある意味で好意的に思っていた方も大きな流れの中で極めて厳しいお考えになってしまうということもあろうかと思います。その意味で情報管理が極めて不徹底な部分があったと申し上げなければなりません。そして、そのことの原因、やはり政権交代の難しさかなと実は私は思っている部分があります。あまりこれ以上、申し上げるべきではありませんし、私自身の不徳の致すところかもしれません」

 「すなわち、新政権に対してすべて本来、政府が一致して協力をしていかなければならないところが必ずしもそのような思いでないようなところから、情報が漏れるというところもあったのではないかと思っておりまして、もっとみんなを信頼させるというような度量の深さが、広さというものが私自身にあるいは閣僚に求めているんだなとそのように感じています」



「社民党新閣僚も視野」

--今回、福島消費者・少子化担当相を罷免したことについては

 「残念ながら福島党首を罷免せざるを得なかった原因ということでございます。福島党首におかれては、まずいわゆる基地問題に対して社民党さんは大変以前から基地というものの縮小、あるいは県外というよりも国外ということを強く主張してこられた政党でございます。今でもその通りだと思います」

 「そして、その根本的な部分において、基地問題に対する考え方の違いというものがございました。そして、今回は沖縄県の辺野古ということが日米で合意されている以上、他のどのような文章が交わされるとしてもそのことは党として、あるいは福島大臣として署名することができないとなってわけでございます。私どもは日米の合意が2プラス2でなされた以上、政権の責任において、当然のことながらしっかりと守らないとなりません」

 「言うまでもない話でありますが、その中でやはり署名がされないと、されえないということであれば、罷免せざるを得ないという状況になったわけでございます」

 「また、連立3党の中で私は連立3党の、特にいわゆる普天間をはじめとする米軍再編に関する食い違いが際だったところがございましたが、連立3党も真剣に政権樹立の時に合意をいたした文書がございます。そこには米軍再編は見直すということが書かれておったわけでございますが、その合意文書の中に必ずしも県外、国外ということを規定したわけではありません。ただ、私自身の発言、あるいは民主党自体がそのことを主としていたことがありました」
「したがって連立3党の合意の中にはそのような県外、国外ということは書かれておりませんでしたけれども、発言の重さということをとらえた中での考え方の近似性の中で、社民党さんとすれば、政権はそれを守るべきだと主張された。そこの最終的な中での食い違いというものが表面化したことと理解している」

 --普天間問題の決着については首相自身が5月末といった。この設定の根拠を聞きたい。沖縄県民からも厳しい声が寄せられているが、地元が受け入れにくい状況の中で福島大臣を罷免してまでこだわった理由は

 「まず5月末の根拠でございますが、これは昨年12月に私がこの12月の末には結論を出すことは極めて危ないと判断をいたして半年近く延期をいたしたわけでございます。そのときなぜ5月かということでございますが、まず普天間の危険性の除去という沖縄のみなさま方のお気持ちからしても、あまりこれを1年、2年延ばすということは極めて不誠実だと映るに違いない。さらに米国側から見ても、これを1年、2年延ばすということは不誠実に映るに違いない」

  「したがって、1年、2年は延ばすことはできないという判断の中で、私は半年程度という思いで5月末といたしたところでございます。その意味するところも例えば最初の3カ月は予算の時期がございますので、必ずしも十分熟慮を加えるには政府として時間的に短いのではないかといういこと、またゴールデンウイークというときがありましただけに5月にさまざまな働きかけができるのではないかという考えがあったこと、さらには参議院選挙の前までにこの問題が決着がつかなければ、この問題が最大のイシュー(問題)になる可能性があるということで、その前にやはり政府としては結論を見いだす必要があろうかということ、さらに申し上げれば(沖縄県)知事選の前にこのことは申し上げておくことが責務ではないかと感じたからでございます」

「そのような意味で5月末ということを申し上げたところでございます。地元の受け入れがたい状況の中で、なぜ日米合意というものを優先をさせたかということについてでございますが、これは1つはやはり日米の信頼関係というものを維持することが最大の抑止力であり、このことが今回、いろいろと韓国と北朝鮮との間の衝突事案もあったわけでありますから、東アジアの安全のために大変大きな役割がある」

 「したがって私どもとすれば半年の間に米国との間での交渉は成立させるべきだと考えたからでございます。地元の受け入れがたい状況は存じ上げていますが、これはねばり強く仲井真知事、あるいは名護の市長さん、市議会の皆さん方と交渉して理解を深めていきたいと願っているところでございます」

 --地元は大変な反対運動がある。どうアプローチするか

 「辺野古の海を汚すなということで多くのおじいちゃん、おばあちゃんも含めて多くの方々が今でも反対運動をされていることはよくわかっております。私もその方々にお会いしたこともございます。大事なことはそういった方々にも理解を求めていくことが必要であって、いわゆる強権的な方策というものは、私は基本的にはとるべきではないとそのように基本的に考えているところでございまして、大事なことはやはり民主主義の国でございますから、対話を通じてそういった方々にもご理解を深めていく努力をすることにつきると思っています」

 --首相は3党の連立維持に努めるといっているが、福島大臣を罷免した。社民党は連立離脱も視野に対応を検討するようだが、社民党から新たな閣僚を入閣させる考えは

「社民党さんは30日に全国の幹事長の方々をお集めになって会議を開かれるということでございました。社民党さんの中にもさまざまなお考えがおありになろうかと思いますので、そこでたぶん結論が出るのではないかと思っています」

 「私としては先程、福島大臣と30分程度お話した中で、できれば連立の中でこれからもご協力を願いたいと。例えば、今日まで大臣としてなさっていただいた障害者の問題とか、消費者の問題、あるいは自殺の問題など、これからも協力をお願したいと。しかも派遣法とか、郵政の法案があります。今まで一緒に行動をしていただいただけにこれからもご協力を願いたいということは申し上げたところでございます」

 「そのことに対してやはり党首という立場で罷免されるということであれば、なかなかそう簡単ではないのではないかという、すなわち『連立を維持するのはそう簡単ではないかもしれない』という話がございましたが、民主党としては、あるいは私としては連立を維持していきたいと、そのようにこれからも努めてまいりたいと思います。そういう意味で社民党さんの方がお望みであるならば、新たな閣僚を中に入っていただくということも当然視野にあることだと思っていますが、そのことに関しては社民党さん自身が30日に議論されてお決めになることではないかと思っております。私の考え方はお伝えを申し上げております」


「今後も県外移設の努力必要」

--今回、県外について40数カ所を検討したが、米国の了解を得られなかったから駄目だったと。今後、県外に移設できる可能性はどれくらいあるか。自治体によらない訓練、分散はどういうことがありうるか。移設先について検討した際に、自治体に何もおうかがいをしなかったのか

 「まず、県外の可能性でありますが、これは私ども、最終的な閣議決定の文言のなかにも、これからも基地負担の沖縄県外または国外の分散、および、在日米軍の縮小整理に引き続いて取り組むということをお約束いたしているところでございます。したがって、可能性ということになれば、これからもさまざまな可能性を検討して参りたいと思っておりまして、どれくらいのパーセントがあるかということを申し上げるつもりはありませんし、すぐにできるという話ではありません」

 「この半年、そのことを求めて参りましたが、結果として不調に終わったということでごさいます。しかし、これからも、やはり、訓練の分散も含めた県外への移設ということを考えて、少しでも沖縄の県民のみなさま方のご負担を減らすような努力が極めて必要ではないかと思っております」

 「訓練の分散のイメージでございますが、海兵隊のヘリ部隊と、それから陸上の地上部隊との合同の訓練を、県外のどこかの地域で行うというようなこととか、あるいは実弾射撃の訓練のようなものを今、行っているわけでありますが、それをさらに、沖縄の県の外で行えるようにするとか、さまざまなことが考えられると思っています。また、そのなかで、たとえば、海上自衛隊のなかで、共同訓練をアメリカ軍と一緒にするというようなことなども将来検討してもらいたいということを、防衛大臣には申し上げているところでございます」

「それから、自治体に関して、40数カ所の工法を考えたということでございますが、基本的には、この40数カ所の可能性は、独自に政府として考えたものでありまして、自治体との間の調整というものは、基本的には必ずしも、行っておらないと理解をしております」

 --県外移設の可能性だが、どれだけ本気で全力で取り組んだのか。さきほど、海兵隊全体をひとくくりにして本土移転する選択肢は現実的にあり得ないと言ったが、なぜありえなかったのか。県外の方がより広い面積があるわけだ。一括して移すことが、なぜ不可能だったのか。県外移設を検討する気持ちがあれば、この間の全国知事会のような場で、もっと早い時期に、基地そのものの移転を求めることはあり得なかったのか。沖縄の差別にも言及したが実態についてはどう考えるか

 「まず、県外に対して、どこまで真剣に考えたのか。そのなかで、例として、本来、海兵隊、沖縄の海兵隊を普天間だけではなくて、すべてを移設されるということができれば、パッケージになるわけですから、それは十分、沖縄以外でも可能だと。そのように私も思います」

 「ただ、現実問題として、そのような地域、すなわち、それはまったくこれから可能性がないとは思ってはおりませんで、実はまだ、そのような可能性というものも、将来的にはあるのではないかと。地域は申し上げられませんが、そういうことも検討する必要はあろうかと思っておりますが、少なくとも、今回の40数カ所の工法のなかでは、海兵隊丸ごとという発想ではなく、この普天間の海兵隊をどこに移設するかと」

「県外にということで、検討をいたしたというのが実情でございまして、これからの課題として、おっしゃるとおり、すべてがパッケージとして、沖縄全体の海兵隊を移設する可能性が、もしどこかの地域で引き受けていただくことがあれば、当然、それは大変大きな魅力を持つものだと思ってます。今まで、申し訳ありません。十分に沖縄の海兵隊全体を移設するということを、十分に現実の自治体も含めて、検討いたしてはおりません」

 

 「それから、差別という声があるということでございます。まさに、私も、その今日の冒頭の言葉のなかにも、そのことを申し上げたところでございまして、そのようなお声を頂戴(ちょうだい)してしまっているということは、私どもとしては、申し訳ない思いでございます」

 「決して、そのような差別ということではなく、結果として、沖縄の地政学的な有利性というか、アメリカ軍にとっての有利性という意味でありますが、その意味での沖縄が使われてしまったと。そこに対して、今日まで、他の自治体が十分に配慮をしてこなかった。特に、政府がそれが当然のことだという風に思ってきたことで、県民の皆さんのなかに、差別ではないかと思われるお気持ちが出てこられることも、私は当然のことだと考えております」

 「これから、そのような思いから、少しでもそうではないということをお示しするためにも、まずは、沖縄の負担をさまざまな形で軽減させていただくようなことを指示を行っていくことが、大事ではないかと思っております」


「もっと時間あれば…」
【米海兵隊の抑止力】

 --首相は米海兵隊の抑止の役割を強調したが、もう少しこの抑止の役割を説明いただけるか。どうして沖縄に海兵隊が必要なのか。基地があれば海兵隊は何ができるか

 「抑止力のご説明ということでございます。私が一番、先ほども若干申し上げましたけれども、日本とアメリカが信頼関係のもとで結ばれているということが、日本にとっても、また東アジア、アジア全体にとっても最大の抑止力の効果があると。すなわち、そのことによって、アジアの国々の平和が保たれるという意味で抑止効果があると思っております。したがって、アメリカ、あるいはアメリカ軍がパッケージとして日本に存在していることの意味合いが大変大きいと思っております」

 「その中で、沖縄における海兵隊が、これはご案内かと思いますが、司令部とそれから陸上、地上部隊、あるいは航空の部隊、さらには後方支援の部隊と、さまざまあるわけでございまして、全体が1つになって機能を果たしているということで、これはアジア全体の、海兵隊の存在が抑止効果を持つと、私はそのように考えておりまして、その一部を外して、機能を、たとえば遠い県外に移すということは、日本にとっても抑止効果が失われるという思いのもとで、極めて難しいという判断がなされたところでございます」

 【5月末の期限】

 --首相は5月末までにという期限を設けたが、十分だったのか。社民党は時期にこだわらず検討すべきだと主張してきたが、いかがか。また、一時首相は腹案があるとおっしゃっていたが、腹案とはどういう案だったのか

 「はい。今、2問いただきました。5月末までの期限というものが十分でなかったんじゃないかということでございます。確かに、たとえば、いわゆる予算を審議をしている中で、3月があっという間に過ぎたと。残るは2カ月だという中で、十分な調査が行き届いていたかどうかということになると、もっと時間があればという思いがなかったわけではありません」

 「ただ、この5月末というものを決める私なりの理由というものがあったわけで、すなわち、先ほど申し上げましたような理由のもとで、5月末にセットすべきだと。そのように考えたわけでありまして、その中での期限付きの中での結論を生み出さざるを得ないということで行動してきたところでございます。十分であったかどうかということであれば、確かにもっと時間があれば、そういう意味ではより幅広い観点からの議論がなされた可能性はあると思っています」

 「また、腹案ということでございますが、もうこれは、かつての話ではありますが、沖縄と、そして徳之島に関して、さまざま議論がもう、なされていたところでありますが、そのところで機能を移転をするような形での腹案を有しているということで、具体的にはそれ以上申し上げるつもりはありませんし、現実にこのような形に収束をしてきたわけでございますが、その、私側としては細かいところまで決めていたわけではありませんが、地域的なことに関して、このような考え方を持っているということで腹案ということを申し上げたところでございます」


福島氏罷免「慚愧に堪えない」

 【憲法を含む安全保障体制】

 --首相の安全保障に関する考えを聞きたい。今回の普天間の基地問題については、基地の移転ということのみに議論が集中していた。負担軽減を今後図っていく。また、閣議決定にあるように在日米軍の整理・縮小を確実に履行していくためには日本の安全保障をどういう体制で行っていくのかという根本的な議論が避けられない。それとあわせて、憲法の問題にも触れざるを得ないと思う。首相は今年1月2日のラジオ番組で憲法を党内で議論してとおっしゃっていたが、政府で安全保障の議論をするのであれば、憲法を党内で議論することは確実性に結びつけていくのは難しいのではないか

 「はい。あの、根本的な安全保障のお話をいただきました。まさに日本の安全保障をどうとらえるかということの先に普天間の問題がとらえられなければならないと思っています。その意味するところ、すなわち、私も先ほどのお話の最後にちらっと申し上げたわけでございますが、私は50年、あるいは100年かかっても日本という国の安全保障、すなわち平和というものは、日本人自身で守らなければならないと思っております。そういう状況をどのように作り上げていくかということの、すなわち、そのために現在何をするかという発想が必要だと考えております」

「私は、その意味で、さまざま技術的な部分も含めてでございますが、この自衛隊の自衛力というものも含めて、全体としての日本の安全をどのようにして日本自身がこう、守れるような環境にしていくかということを、今から考えていく必要があると思っております。そのことを行っていきながら、一方で、米軍の整理の整理・縮小というものがなされてもこの国の平和が守られると。現実、まだご案内の通り、そのトータルの安全保障の議論が必ずしも新政権の中でできあがっていないところではございますけれども、その議論がある意味では根本的に重要だと私は考えておりまして、そのことがなされてはじめて沖縄の負担を軽減をさせうるということを先ほどもちらっとではありますが、申し上げてきたところでございます」

 「そういった日本の安全保障をトータルで考えていく中で、日本の憲法をどのように変える必要があるのか。このままでよいのかという議論は、当然、将来的にはなされていかなければならないことだと思っております」

 「私はあのラジオ番組の中で申し上げたことは、この安全保障も大事だけれども、私がやりたいのは地域主権だと。地域主権のことでも持論を申し上げれば、本来、憲法を変える必要があるんじゃないかというようなことは申し上げました。一方で、この政府の中で、憲法の遵守(じゅんしゅ)規定というものがあると。一方では今の憲法を守りながら、他方で政府として憲法改正というものを大々的に議論するという前にやはり、党として、それぞれの政党が、特に民主党なら民主党が憲法の議論というものをできるだけ早い時期にしっかりとまとめ上げていくことが大事ではないかと。そしてそのことで、党の議論の中で、政府に対して主張していくというプロセスをやはり、経る必要があるのではないかということで、そのようなことを申し上げたと思っておりますが、今でも基本的にその変わっておらないところでございます」

【信頼回復】

 --首相が自らおっしゃった約束が現在、守られなかったことで、国民の中には首相の実行力に対して不安感が持たれている。これから首相が首相で居続ける場合、政権運営が非常に問題になると思うが、どのように失われた信頼を回復するか。今現在、首相が国民に約束できることはあるか

 「ありがとうございます。私自身の実行力というおたずねがありました。まさに今回、私が大変ざんきに堪えない思いのもとで福島大臣を罷免せざるを得なかったということはやはり、日本の安全保障ということを考えたときに、そして、すなわち国民のみなさんの命を大切にするということを考えていく中で、今回の日米の共同声明ということをしっかりと履行する責務が政府にあると考えたからでございまして、総理の実行力というものを必ずしも十分に示されていない」

 「あるいはそのように思われても仕方のないところがあろうかと思いますが、一つ大事なことは、私はやはり、民主主義の新しい政治の中で、いわゆる熟議の民主主義と言いますか、みなさん方が真剣にそれぞれの民間のみなさん方が議論をしていきながら、その議論をしていく中で、最終的にその議論の結果というものを政府がしっかりと把握して、実行に移していくと。何でもかんでも政治、政治主導というのは国民主導でありますが、首相が何でもかんでも首相が乗り出してすべてを決めていくということよりも、むしろより議論に議論を重ねて、その間にさまざまな、いろんな議論があることもむしろ認めていきながら、しかし、結論というものを見いだしたならば、それに対して高い実行力を示すということが大事ではないかと思っています」

「その意味で、私は新しい公共ということを、ぜひ国民のみなさんにもっとご理解いただきたいと思っておりまして、新しい時代にふさわしい、すなわち、民の力というものを最大限引き出していく、そういう社会を今、作らんとしておるところでございまして、この税制改革、すなわち細川政権のときからやろうとして、なかなかできなかった部分を大きく変えていくことが今回、できたと思っておりますが、そういった税額控除の問題も含めて、民の力を最大限、引き出していけるような新しい社会を作り上げていきたい。そのことを国民のみなさまにしっかりとみていただくことによって、新しい政権ができたな、変わってきたな、という実感をみなさん方が持っていただけるのではないかと。そのように確信いたしております」