【首相辞任】4日に代表選と組閣 菅副総理が先行 海江田氏擁立論も浮上

(産経新聞 2010.6.3 01:33) http://bit.ly/dcfvKm

 鳩山由紀夫首相は2日、民主党の緊急両院議員総会で「政治とカネ」の問題や米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設をめぐる混乱の責任をとり、退陣を表明した。同じく「政治とカネ」の問題を抱える小沢一郎幹事長にも辞任を要請し了承されたことも明らかにした。次期首相となる新代表は4日の党両院議員総会で選出される。後継代表レースで、最有力候補と目される菅直人副総理・財務相は2日、鳩山首相に代表選への立候補を伝えるとともに、党内の支持基盤を固め先行している。

 民主党の山岡賢次国対委員長は2日夜、4日に衆参両院での首相指名選挙と組閣、7日に新首相の所信表明演説を行う方針を示した。ただ、宮中日程の関係上、首相指名以降の日程を8日以降とする案もある。16日までの国会会期は延長せず、参院選は「24日公示、7月11日投開票」の日程で実施される見通し。

 鳩山内閣は昨年9月の発足後、わずか8カ月半での退陣となった。鳩山首相は2日夕、記者団に次期衆院選不出馬を明言した。

 出馬を決めた菅氏は首相との会談後、記者団に「国民が民主党政権に期待したことをしっかりと引き継ぐ」と決意を語った。

菅氏は2日夜、小沢氏と距離を置く前原誠司国土交通相や枝野幸男行政刷新相、野田佳彦財務副大臣らと相次いで会談し「応援してほしい」と要請した。

 前原、野田両氏は「菅さんは小沢さんに弱いとみられている」と述べ、小沢氏の影響力排除を求め、態度を保留。前原氏は2日夜、記者団に「あと1日考える」と語ったが、前原、野田両グループとも菅氏支持を固めつつある。枝野氏、渡部恒三元衆院副議長も同夜、菅氏支持を表明。民主党幹部は2日夜、「横路孝弘衆院議長グループや岡田克也外相も菅氏支持だ」と語った。

 ただ、菅氏は2日、小沢氏、輿石東参院議員会長に面会を求めたが実現しなかった。菅グループは都内のホテルに事実上の選対本部を設置、3日に菅氏が出馬会見する。

一方、三井弁雄国対委員長代理、松本剛明衆院議運委員長ら約30人が同夜会合し、「菅氏ではだめだ」として対立候補を立てる意見が出た。海江田万里選対委員長代理や樽床伸二衆院環境委員長の名前が出た。

 党内では、後任幹事長には海江田氏、岡田氏、原口一博総務相、細野豪志副幹事長、玄葉光一郎衆院財務金融委員長らが取りざたされている。

 また、参院民主党幹部が菅グループ幹部に「菅体制」の人事構想を打診していたことが分かった。5月31日夜に輿石氏や高嶋良充参院幹事長、平田健二参院国対委員長らが開いた会合の席上、参院幹部のひとりが菅グループ幹部に「首相が辞めたら後任は菅さんで決まりだ。輿石さんが幹事長で、選挙(の責任者)は小沢さんにやってもらう…」と語った。菅グループ幹部は即答を避けた。




【民主党解剖】(上・前半)小沢軍団 変わらぬ本質 「数は力」


(産経新聞 2010.6.3 01:21) http://bit.ly/cXlgo9

 電撃的な首相辞任劇。その衝撃も冷めやらぬ中、民主党議員は「次の首相」を見据え、動き始めた。

 2日午後7時すぎ、東京・虎ノ門の中華料理店。民主党幹事長、小沢一郎に近いグループ「一新会」のメンバーが続々と集結した。

 「誰が首相になるかわからないが、誰がなっても一致結束してがんばろう!」

 一新会会長の鈴木克昌がこう語り、乾杯の音頭を取ると出席者は顔を高揚させた。その後も続々と議員が駆けつけ、40人にふくれあがった。

 首相、鳩山由紀夫の退陣表明に伴い、小沢もその力の源泉だった幹事長職を退くことになった。一新会には窮地といえる状況だが、その動きは示し合わせたかのようだった。

 退陣表明からわずか4時間後の午後2時、国会近くの事務所に約40人の側近議員が集まり、党代表選への対応を協議。その後、「小沢ガールズ」と呼ばれる若手女性議員ら80人以上が国会内に集まり、「新しい政治、歴史の瞬間を自分たちが作りだしていこう!」と気勢を上げた。

自民党政権下で長く主流派の地位を誇った旧田中派をほうふつさせる光景。小沢が師と仰ぐ元首相、故田中角栄の言葉「政治は数。数は力」を実践するかのように小沢系議員たちは「鉄の結束」を誇示した。

 「党代表選を戦った後はノーサイドになって党が一本化するのが一番きれいな姿じゃないですかね…」

 小沢の懐刀である筆頭国対副委員長の松木謙公(けんこう)は記者団に力説した。「次の首相もおれたちが決める。決めた後は従ってもらう」という意思がうかがえる。

 こうした「無言の圧力」に押されるように、鳩山系グループはいったんセットした会合を中止した。旧民社党系グループは「事態の推移を見守る」と一切の動きを止めた。

 そんな中、「先手必勝」とばかりに代表選に名乗りを上げたのは、副総理・財務相の菅直人だった。

 都内のホテルで側近と会談した菅は、その足で鳩山を訪ね、「政治とカネの問題にけじめをつけ、しっかりと引き継いでいきたい」と伝えた。だが、20年来の朋友である鳩山はそっけなかった。「頑張ってください。私から誰かを指名する意図はありません」

 対抗馬の動きは鈍い。反小沢の急先鋒(せんぽう)である国土交通相、前原誠司は後見役の国家戦略担当相、仙谷由人らと都内で会談したが、記者団には出馬について「現段階では全く白紙」と語っただけ。ダークホースとされる総務相、原口一博は沈黙を守った。

 一新会の会合では出席者が「菅」や「原口」の名をささやきあったが、小沢側近の党総務委員長、奥村展三が厳しく戒めた。

 「名前を出すな! 出したらあかん。今は動いたらあかんのや!」

 「数の力」を知らしめながらも手の内を絶対に明かさない。すると首相候補はおのずと自陣になびいてくる。これが小沢の自民党時代からの常套(じようとう)手段だった。

鳩山は5月31日の小沢と参院議員会長、輿石東との会談で「身を引きたい」と切り出したと説明するが、実際に退陣を決意するまでは激しい攻防があった。

 1日の小沢、輿石との2回目の会談を終えた鳩山は続投に向け意欲満々だった。会談後は笑みを浮かべ、左手の親指を立てグッドサインを作ったほど。「これで退陣圧力を跳ね返した」と思ったのだろう。

 会談で鳩山は「殺し文句」を用意していた。輿石は、1カ月後の参院選におののく参院民主党の窮状を訴え、激しく退陣を迫ったが、鳩山はこう言った。

 「私も身を引きますが、小沢さんも幹事長職を引いていただきたい」

 小沢抜きでは参院選を戦えない。鳩山は「これで参院の反乱は鎮圧できる」と踏んだようだ。それまで押し黙っていた小沢は「分かった」と応じたが、輿石は「大変なことになるぞ!」と捨てぜりふを吐いた。

 官邸に戻ってからも鳩山は意気揚々としていた。公邸への帰り際には報道陣に「おやすみなさーい」と笑顔で声をかけた。

 ところが、鳩山の「グッドサイン」は倒閣勢力の怒りの火に油を注いだ。テレビ放映でこれを知った参院幹部はこう言い放った。

 「続投したいんなら神妙な顔をせなあかん! これ(親指)は首相がやることじゃない。『私はこれで首相を辞めました』か?」(敬称略)