菅新政権が掲げる重要政策は実現可能か

(日刊ゲンダイ2010/6/5)
菅政権で注目されているのが経済政策だ。「強い経済、強い財政、強い社会保障」を目標に掲げ、増税による財政再建と景気回復が可能としている。魔法みたいな話だが、「(増税しても)使い道を間違えなければ景気は良くなる」と言い、医療や介護分野に積極投資すれば、強い経済と強い社会保障が実現できると考えている。
海外メディアは「日本は財政赤字削減に向けて、より大胆に前進する」と評価し、財界も財政再建派首相の誕生を歓迎しているが、増税による景気回復なんて本当に可能なのか。明大教授の高木勝氏(現代経済)がこう指摘する。
「菅氏は、増税しても社会保障を拡充すれば景気は回復すると考えているようですが、もはや“珍説”のたぐいです。消費税を上げれば個人消費はさらに落ち込み、景気はますます悪化する。もともと菅氏は経済オンチですが、財務大臣になってから、急に消費税増税なんて言い出すようになった。にわか財政再建論者なのです。財務官僚や一部の学者に振り回されているのでしょうが、一国のトップに立つ人間がこれではいけません」
菅は「元気な日本をつくる」とブチ上げたが、このままでは日本は元気になるどころか、ますますヘタると専門家は心配している。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)も言う。
「弱者を切り捨てた小泉自民党時代に逆戻りするのではないかと心配です。強い経済とか財政再建を理由に、消費税増税や子ども手当カットが取りざたされるようでは本末転倒。国民は将来に不安を抱いて、さらに財布のひもを締めてしまう。景気回復なんて夢のまた夢になる。日本経済を上向かせるには、やはり国民の生活が第一。すっかりトーンダウンしている行政のムダ削減を推し進めて政治主導を確立し、社会保障や雇用対策に力を入れるべきです」
首相選出後、初の会見に臨んだ菅は消費税増税について「相談して、しかるべき時に言う」と言葉を濁した。安直な増税はたまらない。