菅首相と小沢一郎の関係はどうなっていくのか (日刊ゲンダイ2010/6/7)

9月までつづけるオトナの関係

支持率を見る限り、上々のスタートを切った菅政権。理由はもちろん、小沢切りへの評価だろう。しかし、野党は本当の「小沢排除」ではなく「小沢隠し」だという。自民党の大島幹事長は小沢の証人喚問を求め、それを新政権の「踏み絵」にしようとしている。

実際のところ、菅と小沢はどういう関係で、今後はどうなっていくのか。本当のところが知りたいものだ。
まず、小沢は今回、反菅で動いたわけではない。田中真紀子や海江田万里擁立の話が飛び交い、最終的には樽床が立候補し、小沢を中心とする「一新会」が乗った、と報じられているが、小沢が候補者擁立に積極的に関与した形跡はないし、小沢だって、まさか樽床で勝負をかける気はなかっただろう。結局、「一新会」は自主投票になり、1年生議員のほぼ全員や2回生議員の一部は樽床に票を入れたが、参院議員は動かなかった。その結果、150人といわれる小沢グループはバラけてしまった。

小沢は菅潰しに打って出て負けたのではなく、「1回休み」とばかりに動かなかったのである。
小沢は周囲に「9月まで隠居してなにもやらない」と語ったという。9月には民主党の代表選がある。鳩山の任期を受け継いだ菅が自動的に続投になるのか、ひと波乱あるのか。メディアは興味津々で煽っているが、小沢にしてみれば、「それは状況次第」ということになる。菅で政権が安定しているのであれば、動かないだろうし、ギクシャクするようであれば、何かを仕掛ける。そのために150人という人数だけは束ねておく。これが小沢の本心だ。
それでは、菅の方は本気で小沢を切る気があるのかどうか。
人事を見る限り、樽床が国対委員長になり、細野豪志が幹事長代理になった。原口一博総務相は再任。松本剛明議運委員長も留任だろう。海江田万里選対委員長代理も重要ポストへの起用が取りざたされている。
つまり、微妙な距離関係を保っている。

「参院選まではお互い休戦。選挙に負ければ、元も子もないわけですから。オトナの対応になると思います。その後も、菅氏は小沢氏を切り捨てることはできません。小沢氏が本気で原口総務相あたりを担いで、菅降ろしに出たら、政権は壊れてしまう。つまり、表の権力は菅氏ですが、裏の権力はやっぱり小沢氏が握っているのです。小沢氏にしてみれば、お手並み拝見。微妙なパワーバランスの冷戦が続くとみています」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
新聞が書いているような、単純な脱小沢の構図ではないのである。