日米合意と民主党政権の存在意味

(日刊ゲンダイ2010/6/9)
普天間移設問題で、菅首相は「日米合意重視」の立場だ。鳩山首相がアメリカを怒らせて短命に終わったのを見てきたせいか、「沖縄の負担軽減」よりも「日米関係」に配慮する姿勢が言葉の端々に出ている。
だが、それだったら自公政権時代と変わらない。逆戻りだ。
「普天間問題で“最低でも県外”と頑張った鳩山さんは思いを成し遂げずに退陣となった。でも、沖縄県の米軍基地問題を全国民に認知させた意味は大きい。沖縄県民の気持ちもひとつになりました。米国も、日本の民主党政権はこれまでとは違うなと感じたはずです。それを踏まえて、菅さんにも鳩山路線を敬重してほしいのですが、その気概を持っているかどうかが伝わってきません。理念派の鳩山さんに対し、菅さんは現実派ということなのでしょう」(軍事問題評論家・前田哲男氏)
もちろん、こじれにこじれた普天間問題はだれが総理になっても解決はおぼつかなくなった。辺野古に基地建設は不可能だ。問題は、その現状を米国に突きつけ、第3の道を探れるかどうかである。しかし、北沢防衛相、岡田外相の再任に加え、菅首相まで慎重姿勢となると、何も進まない展開が見えてくる。
「戦後65年、日本の外交・安保政策はアメリカに言われるままでした。忠犬ポチになっていれば、政権を守ってもらえた。それを変えよう、少しでも対等関係にもっていこうとしたのが民主党政権ができた意味です。もし、菅政権がその志を捨てたら、政権交代の意味はなくなってしまいますよ」(小林弥六氏=前出)
小泉純一郎のように、ポチになりきって、政権延命をするのか。それとも米国に対して多少の“イラ菅”ぶりを見せられるのか。これも政権変質を測るターニングポイントなのだ。