やっぱりオカシイゾ 検察審査会

(日刊ゲンダイ2010/6/11)

資料も読まず「不起訴相当」議決

やっぱりこの制度はおかしい。小沢事件で注目を集めた検察審査会(検審)のことだ。小沢事件の検審議決に対しては、法曹界などから「感情的」「結論ありきの審議」との批判が続出し、制度見直しが叫ばれているが、他の事件でも同じような事態が起きている。8日に青森地裁で結審した環境保護団体「グリーンピース・ジャパン(GP)」をめぐる「鯨肉窃盗事件」である。
この事件は、GPのメンバー2人が08年4月、調査捕鯨船での鯨肉横領を告発するため、船員が自宅に送った宅配途中の鯨肉10本を青森で確保したところ、窃盗罪などに当たるとして起訴された。裁判では、一連の行為が「窃盗」と主張する検察に対し、GPのメンバーの弁護側は「横領行為を告発するための調査活動」と反論。9月6日に判決が下される予定だ。
「公判で焦点になったのは、船員の証言の信憑性です。鯨肉を自宅に送った船員は法廷で、『5本の肉を2分割(10本)した』と証言したが、DNA鑑定の結果、肉は7本が同一のクジラ、残り3本は別のクジラだったことが判明。ツジツマが合わなくなったのです」(青森地裁担当記者)

事件でもう一つ注目を集めたのが、検審の議決だった。
「GPは窃盗事件になる前に船員を業務上横領で東京地検に告発。しかし、不起訴処分になったため、今年2月に東京第1検審に審議を申し立てた。ところが、船員の法廷証言やDNA鑑定の結果が青森地裁で出る前に早々と検察の判断を追認する『不起訴相当』の議決を出したのです。重要証拠を見ず、何を根拠に判断したのかがサッパリ分からないのです」(司法ジャーナリスト)
GPの担当者はこう言う。
「裁判では、船員同士の証言が食い違ったり、内容が二転三転したりした。検審には、こうした証言や、肉のDNA鑑定の結果を追証拠で送ると連絡していたにもかかわらず、それを待たずに議決しました。“市民目線”というが、資料も読まずに判断したとすれば、恣意的な結論だったと受け取られても仕方がない。私たちに批判的な報道の影響もあったのではないか」
小沢事件も、一方的な報道をうのみにした審査員の感情が議決判断を大きく左右したとされている。アチコチで“恣意的”な議決が出るようなら、これはもう、法治国家の危機だ。