分かってきた裏側 民主参院選大勝 自民消滅のシナリオ  (日刊ゲンダイ 2010/6/16)

民主党の支持率が劇的に回復するギリギリのタイミングでの小沢辞任

「小沢切り」とか「脱小沢」という通説は疑問、すべては「自民党焼け野原」を狙う小沢主導の鳩山、菅ぐるみの共謀だった
「もう少し早ければと思ったが、ぎりぎりセーフかなと思う」――参院選に向けて地方行脚を再開した小沢前幹事長が12日、連合和歌山の会長との会談で、こんなセリフを口にした。
「ぎりぎりセーフ」とは、幹事長辞任のタイミングが、どうにか参院選に間に合ってよかったという意味だ。
なるほど、このセリフで納得がいった。そういうことだったのだ。多くのナゾが解けてきた。やっぱり小沢は、追い詰められて幹事長を辞任したのではなく、自分から、参院選を勝てるタイミングを見計らって、鳩山首相と共に身を引いたのだ。すべて小沢主導のシナリオだったのである。

「それは、ダブル辞任と菅新代表誕生の流れを見ても、分かることです」と、民主党関係者が舞台裏を明かす。
「小沢幹事長にとっても、鳩山首相にとっても、最大の懸案は支持率急落による参院選の惨敗でした。選挙で大敗したら、幹事長はもちろん、普天間問題を迷走させた鳩山総理も助からない。ダブル引責辞任は必至です。それが原点。ならば、どうするか。どうせ辞めるのなら、選挙前に実行して、新しいトップで選挙をして、ダメージを最小限に食い止める方が賢明。辞め時はいつがプラスか。麻生自民党首相の失敗を教訓に、小沢幹事長はいろいろと時機をうかがってきたと思います。そして5月中旬に党独自の調査で参院選惨敗データを知った小沢幹事長は、その時点で腹を決め、動き始めた。混乱を最小限にするために後継首相は菅副総理の昇格と決め、あとは鳩山総理とスリ合わせをしてきたのです」


やっぱり小沢は凄い策略家だ
普天間問題で日米間の詰めの作業が残っていたので、それまでは首相交代はまずい。その日米合意発表が5月28日と決まった。小沢は、そこからがダブル辞任劇のタイミングとみたのだ。
「後講釈だろう」と言うなかれ。小沢の仕掛け説は、その後の「鳩山降ろし」でも裏付けられる。小沢に近いジャーナリストがこう語る。
「不思議だったのは、小沢幹事長に近い参院幹部らが“鳩山退陣論”の情報源だったことです。これで各社、“間違いない”と退陣論を書き立て、流れができてしまった。さらにダブル辞任の直後に2日後の代表選が決められ、すぐに菅氏が出馬表明したのも、準備がよすぎた。小沢幹事長がシナリオを描いていたと思えばすべて合点です」

政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「あのまま続投で中央突破していたら参院選で惨敗し、小沢幹事長も鳩山首相も、ポストだけでなく、政治生命も終わっていた。政治経験の長い小沢氏がそんな自爆を選択するわけがありません。一歩先を考え、鳩山、菅両氏と打ち合わせて、作戦を進めてきたのです。参院選の1カ月前に首相交代劇を仕掛けたのは、新政権の新鮮さ、ボロが出ない時間などを計ってのことでしょう。その狙い通り、マスコミは小沢・鳩山の2人の“失脚”を額面通りに報じてくれたから、支持率はV字回復。参院選も大敗はなくなった感じです。3人はニンマリで、してやったりの思いでしょう」
小沢はやっぱり凄い策略家だ。