[石川議員初公判]幻の「5000万円裏献金」を立証すると言い出した真相

(日刊ゲンダイ2010/6/18)

検察は何をトチ狂ったのか
今ごろになって新しい証拠でも出てきたのか。でなければ往生際が悪いというしかない。
東京地検特捜部が、まだ小沢事件の5000万円裏献金疑惑にこだわっている。起訴した元秘書の衆院議員石川知裕被告(37)の裁判の公判前整理手続きで、「裏献金」を立証する方針でいることが分かったのだ。
水谷建設の元会長の証言から始まった5000万円の裏献金疑惑は、TBSテレビや読売新聞をはじめとする大マスコミがとことん調査報道した。検察も証拠や預金通帳を押収し、小沢前幹事長の秘書3人を逮捕して締め上げた。しかし、結局は何も出ず、断念に追い込まれた。
それを再び持ち出す検察の神経は大丈夫なのか。専門家はどう見るか。
ジャーナリストの魚住昭氏はこう語った。
「裏金5000万円の授受が実在する話なら、2月の時点で検察は小沢氏を起訴していますよ。特捜部はそれこそ命がけで小沢氏を立件しようと捜査してきた。しかし、できなかった。それは水谷からの裏献金がなかったと分かったからです。言ってみれば“作り話”だったのです」
名城大教授で弁護士の郷原信郎氏もこう言う。
「普通に考えれば、裏献金が立証できるのであれば、小沢氏を起訴できなかった理由が分からない。『立証する』というのは、検察が冒頭陳述(冒陳)に書きたいということでしょう。西松事件の裁判で持ち出した『天の声』と同じで、立証できるレベルの証拠ではないが、冒陳で世論に悪印象を与えたいという意思の表れです。仮にそうであれば、検察はこれまで出た批判に対し、何も反省していないことになる」
検事総長も次席検事も特捜部長も代わったが、「唯我独尊」の体質だけは変わらない。