野党の「誘い水」に乗った 管首相の甘さ

(日刊ゲンダイ2010/6/19)

消費税10%は自民党の罠だ!

◇案の定与党内はグシャグシャ
これはちょっとヤバイのではないか。菅首相が打ち出した「消費増税10%」の議論である。有権者だって、「なぜ、いきなり?」だし、案の定、党内からも異論が噴出している。これがまずいパターンなのだ。消費増税を打ち出すのはいい。しかし、党内でモメて、ブレれば、まさにあの二の舞いだ。参院選前に増税を打ち出し、ブレて、負けた橋本龍太郎政権である。
◇橋本政権と同じパターンになる恐れ
いきなり出てきた消費増税路線。あれよあれよという間に、既成事実化が進んでいる。玄葉光一郎政調会長はきのう、「(消費増税は)最速で2013年秋になる」と語った。仙谷官房長官は「国民の理解は大変深いものがある」などと言い、あたかも、国民の信任を得たかのような言い回しをした。
菅首相は消費増税の際には国民に信を問うと言っている。民主党はあと3年は総選挙をしない方針だ。つまり、2013年秋の総選挙で信を問い、国民の賛成を得られれば、それから法案化を進め、増税が始まる。
こういうスケジュールなのに、政調会長が「前倒し」を言い、官房長官が「国民の理解はある」とばかりに胸を張る。一方的な議論がエスカレートしているのである。 どう考えてもおかしいが、党内からも不満が噴出している。原口総務相は「今は10%とか言っている時期ではない」と反発。高嶋良充参院幹事長は「勇み足だ。選挙に悪影響を及ぼす」と批判した。極め付きは国民新党の亀井代表で「政治姿勢として間違い。(連立離脱の)事態も想定される」と言い出した。連立与党内はグシャグシャ。そして、これぞ、自民党の思うツボの展開なのである。
「自民党が消費税10%を公約に掲げ、その誘い水に乗るようにして、菅首相も10%を参考にすると言ってしまった。腰ダメの数字でも首相が語れば、公約になる。選挙前に、明らかな勇み足です。恐らく、党内の反発は激化するし、それでブレれば、最悪の展開になる。選挙前に経済政策で迷走することに有権者は一番敏感なのです。


まさに橋本政権と同じパターンにはまる恐れがあります」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
自民党が10%と言い出したのは罠だ。菅はまんまと罠にはまり、仙谷らが同調、消費税議論を加速化させている。しかも、増税分を何に使うかの議論をすっ飛ばし、最初に増税ありきの前提で話が進む。
これは危険だ。選挙が近づけば、菅は沈静化の発言を余儀なくされるだろうし、そうすれば自民党は待ってましたで「ブレ」と「無責任」を追及する。菅はしたたかに見えて、甘すぎる。