法人税減税で国際競争力アップのウソ

(日刊ゲンダイ2010/7/3)
得するのは大手企業の経営者だけ
消費税増税で財政健全化を図るよう提言する一方で、法人税は減税しろと矢の催促――。財界の面々の自己チューぶりには呆れるが、1億円以上の報酬をもらっている経営者がゾロゾロいる現状を知れば、それも納得だ。
税金が安くなって企業が儲かれば、役員報酬を増やせる。減税で潤うのは、自分たちのフトコロなのである。巨額の報酬からすれば、消費税が少しくらい増えたところで、痛くもかゆくもないのだろう。
財界は「法人税減税が国際競争力の強化につながる」と言っている。しかし、その根拠はゼロだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「法人税の税率は、大手企業の場合、20年前の40%から30%に引き下げられました。その間に法人税の税収は合計で180兆円も減っています。競争力がアップするのなら全体が底上げされて、税収は税率が下がっても増えそうなものですが、そうなっていません。しかも、スイスのIMD(国際経営開発研究所)が発表している世界競争力年鑑を見ると、2010年の日本の順位は20年前の1位から27位にまで後退しています。中国や韓国、タイにまで抜かれ、下はチリ、チェコ、アイスランドという具合。法人税を下げれば競争力が増すというのは、幻想でしょう」
法人税減税を口にする連中は、「税率が高いと、みんな海外に移転してしまう」と言っている。これもナンセンスだ。
「世界中で日本ほど治安やインフラに恵まれている国はありません。中国国内の工場での騒動を見れば、本社の移転はリスクが大きい。政治家や要人とコネクションを築くのも一苦労です。ベトナムで財界運動をしようと思っても、一朝一夕でインナーサークルに入れるわけではありません。企業の海外流出が増えるとは思えません」(荻原博子氏=前出)
法人税減税の恩恵を受けるのは、大手企業の経営者だけである。