完全に霞ヶ関にナメられた 菅政権「裏下り 総勢1200人」容認の愚

(日刊ゲンダイ2010/7/14)

再就職ではなく、出向ならOKのヘリクツ
参院選大敗で菅政権の尻に火がつき、霞が関のキャリア官僚たちが、ほくそ笑んでいる。すでに天下りの“抜け道”づくりに成功。政界混乱の間隙を縫って、ゴッソリと天下り法人に押し寄せようとしているのだ。
例年、この時期には出世レースから外れた官僚が早期退職勧奨、いわゆる「肩たたき」を受け入れ、天下り法人に再就職していく。この悪習を禁止し、天下り根絶を掲げたのが、民主党政権のはず。昨年の総選挙のマニフェストには〈天下りの背景となっている早期退職勧奨を廃止〉とハッキリと記したものだ。
なぜ、天下りを許してしまったのか。
「民主党は『肩たたき禁止』と同時に『国家公務員人件費2割カット』も公約。肩たたきなしで“窓際官僚”が役所に残るとなると、大幅な給与カットが必要でした。ところが、民主党政権は給与カットに踏み込まない。そんな優柔不断な態度を尻目に、各省庁ともコッソリ肩たたきと天下りを継続してきたのです」(霞が関関係者)
霞が関のマニフェスト無視の実態は、先の国会で明るみとなった。みんなの党の山内康一衆院議員が質問主意書を提出したところ、昨年9月の鳩山政権発足から半年間で実に1221人が、肩たたきを受け入れたことが判明。現時点での実数は、さらに膨らんでいるだろう。霞が関には夏の定例人事を前に、大量の天下り予備軍が控えているのだ。
しかも、狡猾な官僚たちが再就職のアテもなく、なすがままでいるはずもない。参院選直前のドサクサに紛れ、大量の天下りを表面化させないための「裏下り」策を菅政権にのませていた。
「先月22日に閣議決定した『退職管理基本方針』がそれです。中身は『天下り法人の理事ポストへの現役職員の出向』など、天下りの裏ルート容認策。『再就職ではなく、出向なら天下りではない』という理屈です。出向なら、出向者の名前も役職も公表されません。こんな天下り根絶の骨抜き策を閣議決定してしまった菅政権の神経を疑います」(野党議員)
脱官僚路線を失った菅政権に存在意義はない。菅首相が、もう一度お遍路に出かける日は刻一刻と近づいている。